第13話 遭遇

 オーシャの協力もあって魔導書を手に入れ、スターリットからの脱走に成功したナキはディオール王国を目指しながらグロウズ・ガーデンの執務室で手に入れた魔導書に記された魔法を取得しようと練習していた。


 ナキが手に入れた魔導書に記された魔法はどれも山一つ消せる程の威力を持つものばかりで、特にエンシェントと名の付く魔法の類は、国一つ滅ぼせる程の威力を持っている可能性があった。


 そこでナキはその中から、エンシェント・レビン古代の稲妻と呼ばれる雷属性の魔法を習得しようと決めた。

 その理由はナキが魔導書を手に入れる理由になったエンシェント・ブレイズ古代の火焔は大規模な炎を生み出す事ができるだろうが、水の適性がないナキが森の中で使用すれば周りはあっという間に火の海とかしてしまう危険があった。


 他にも氷属性のエンシェントと名の付く魔法だと狩りに発動できたとしても閉じ込められて逃げられなくなり、風属性のエンシェントと名の付く魔法だと周りの物全てを巻き込み、巻き込んだがれきなどが自信に降りかかる危険性があった。


 そのため習得のために発動しても問題がないのはエンシェント・レビンのみだと判断し、何度もエンシェント・レビンが記されたページを読み返し、繰り返し練習していた。


「エンシェント・レビン! エンシェント・レビン!」


 ナキがエンシェント・レビンを習得しようと発動するたび、ナキの目の前には大きな落雷が落ちるのだが実際に発動させているなきの感覚からするとそれは自分が望む形ではないと感じ、ディオール王国に着くまでに何としてでも完全な状態で習得しようとしていた。


 だが、威力は間違いなく本物で、その証拠にナキが不完全な状態で発動させた場所はかなりの広範囲で黒焦げになっていた。

 他にも、スターリットにいる間に覚えた上級魔法を完全に習得するためにそちらの練習も怠る事はなかった。


「ケホッケホッだめだ、やっぱり詠唱を唱えながらじゃないと無理か…。

ケホッケホッそろそろ先に進もう。ついでに食料も探した方が良いかな……」


 この時点でスターリットから脱走してから既に四こくが経過していたが、周囲の警戒は怠らずにスターリットから持ち出した食料が尽きないように大海の森で食べる事ができる食料や飲み水を手に入れていた。


 保護される前に大海の森を南下していた時と同様にナイフと弓矢を作り、タンパク質となる動物を狩って食べていた。

 以前と違うのは魔法を使う事ができるようになった事で防御魔法を利用し、猛獣や魔物に襲われる事無く十分食べる事ができるようになった事だ。


(まほうが使えるようになったおかげで、かなり楽になったな。

 あの時はまほうが使えないって思い込みのせいで血抜きの最中に逃げなきゃいけなかったし、ボウギョまほうを使えるようになったから十分食える)


 弓を構えて獲物を探しながら進んでいると、近くの茂みから物音が聞こえてきたためナキは近くの木に登り姿を隠し、周りの様子を確認するとナキが立っていた場所に体長二メートル近くのイノシシが現れた。


 今のナキであれば確実に仕留められるが、かなりの巨体であるため仕留められたとしてもすべて持って行く事はできず、逆に邪魔な荷物になるため狩りの対象にすることはない。


 とはいえこのまま魔物が通り過ぎるまで待っているつもりはないため、ナキは魔法を使って追い払う事にした。


サウンド・ボム音の爆弾。それっ!」


 ナキはサウンド・ボムという魔法を発動させると一見ウィンド・ショット風の小球に似た魔弾がナキの掌に現れ、その魔弾を魔物に向かって投げると、魔弾が地面に着弾した途端激しい爆発音が鳴り響いた。


 魔弾から発せられた爆発音に驚いた魔物は悲鳴のような鳴き声を上げると、そのまま森の奥へと逃げて行った。

 魔物が逃げて行ったのを確認し、周囲に他の魔物がいないのを確認すると、ナキは隠れていた木から飛び降りると急ぎ足で再び北上し始めた。


(サウンド・ボムは仕留める必要のない動物や魔物を追い払うのに便利だけど、使うタイミングをまちがえると他の動物や魔物を呼び寄せちまう。

 使うときは気を付けないとな)


 獲物を探しながら移動していると、近くに一匹の兎を見つけたナキはその場で立ち止まり弓を構える。

 下手に動いて兎に逃げられないようナキは息を殺し、狙いを定めると、矢を放った。


 放たれた矢は兎の首に命中し、矢を射られた兎はその場で倒れ痙攣を起こし動けなくなっていた。

 兎を仕留める事ができたナキはそのまま近づき、石で作ったナイフを手にすると兎の頭を押さえ、息の根を止めた。


 兎の息の根を止めると兎を抱えてその場から離れ、丈夫そうな木の蔓を見つけると兎の足首を縛り首に刺さっていた矢を引き抜くと、傷口から血が溢れ出した。

 そして近くの木にぶら下げるとナイフで首を斬り、血抜きを始め、兎をぶら下げた木の周囲に風の防御魔法を展開した。


「これで良しっと。あとは血が全部抜け切るのを待つだけだな。

 祖父ちゃんに叩き込まれたおかげで狩りが楽だな。ケホッケホッ」


 生き物の解体については幼い頃に亡くなった祖父が猟師の免許を持っており、祖父が病で倒れるまで狩猟に連れて行かれていた。


 最初は祖父が生きた動物を仕留める、解体するという作業を目の前で見せられたため当時のナキは怯えてその場から何度も逃げ出そうとしたが、逃げ出そうとする度何故かに祖父に叱られて解体の手伝いをさせられ、長期休暇の時期になると海外に連れて行かれ何故か弓矢を使った狩りの仕方を叩き込まれた。


 何故子供の自分が狩猟と解体の技術を叩き込まれなければならないのかわからなかったが、異世界に召喚されて大海の森に追放された時や現在のような状況下ではかなり助かっているのは事実だった。


「血抜きが終わるまで魔導書の確認でもしておくか」


 血抜きをしている間にエンシェント・ライトニングの習得のために魔導書を読む事にした。

 エンシェント・レビンが記されたページには古代の力を宿した雷を生み出し、数多の稲妻を落とす事で周囲を焼け野原に変えてしまう魔法であり、エンシェント・ブレイズ同様国一つ滅ぼせる程の威力を持っている事がわかった。


 そのせいか詠唱もかなり長く、詠唱以外で発動させる方法についても難しい事がわかり、習得するにはかなりの時間が必要である事を否でも実感させられた。

 エンシェント・レビンが記されたページを睨みつけるように読んでいる内に兎の血抜きが終わり、解体できる状態になっていた。


 その頃には日が暮れていたため、ナキは枯葉や木の枝を集めると魔法を使わずに火を起こして焚火を焚いて兎の解体作業に移った。

 魔法を使わず火を起こしたのは、不安定な上級魔法やエンシェント・レビンを確実に習得するために魔力を温存しておきたいため、魔法に頼らず自分の力で行っていた。


 それから兎肉を焼きながらスターリットから持ち出したドライフルーツを食しながら考え事をしていた。


(スターリットを出て四刻。今日は稲苗月いななえづきの二六刻、黄色の祈り日、黄色の祈り日は金曜日で、明日は紫の祈り日、土曜日になるのか。

 ディオール王国が他の国に手を出したせいでいつ戦争になっても可笑しくないし、一年前は一か月たっても人がいる場所にたどり着けなかった事を考えると、少しでも早く着くにはブースト身体強化で移動した方が良いかもしれないな)


 ナキはエンシェント・レビンの習得同様、ディオール王国に辿り着くまでに時間が掛かる事を考え少しでも早く辿り着くために身体強化を使い移動する必要があると考えた。

 魔力はなるべく魔法の習得に回したいがディオール王国までの道のりを考えると身体強化での移動がベストだと考えた。


「ケホッケホッ! …風邪かなぁ?」


 ディオール王国を目指している間、ナキは体調を崩してしまったようで一刻ひとこく前から時々咳き込んでいた。

 ナキはただの風邪だろうと考えそのままにしていた。


 ドライフルーツを食べ終える頃には兎肉が良い具合に焼けていたのでそのままかぶりつき、食べ終えると鞄からキャンドルランタンを取り出し焚火の火を使って蝋燭の火をつけると、焚火の火を消して寝床を作り眠りについた。


 翌刻よくこく、ブーストを使い走りながら移動したおかげでかなりの距離を移動する事ができたが、ディオール王国に着くにはまだ付く気配はなかった。


(あれから休まず移動してるけど、ディオール王国に着ける気がしない。

 それ以前に、今大海の森のどの辺りにいるかもわからないせいで、どれだけ進んだのか全然わかんねぇ!)


 ポータルが大海の森に繋がっていた事まではわかっていたが、大海の森のどの辺かまでは把握していなかったため、自分が今どれだけディオール王国に近付いているのかわからなかった。


 その時、突然警告音が鳴り響き始めたためナキは慌てて立ち止まり、丁度姿を隠せそうな茂みがあったため急いで茂みの中に飛び込み、身を潜めた。

 茂みの中でじっとしていると、近くから人の喋り声が聞こえてきたため、ナキは驚いた。


(どういう事だ? もしかして、俺が気付いていないだけでディオール王国の近くまで来てたのか?)


 突然聞こえて来た人の喋り声に困惑しながら、ナキは茂みの中から様子を伺った。

 しばらくしてナキが隠れている茂みの近くに、狩りの最中だと思われる数人の人間の男達が現れた。


 人間の男達の手には狩りに使うものだと思われる弓矢があり、中には腰に剣をつけている者もちらほらといた。

 それを見たナキは警戒心を強め、見つからないように息を殺して男達が通り過ぎるのを待っていたのだが、ナキが隠れていた茂みの目の前に一兎の兎が現れ、それに気付いた男の一人が弓を向けて矢を放った。


 だがその矢は兎には当たらず、ナキが隠れている茂みに突っ込んできた。

 矢が自分の方に飛んできている事に気付いたナキは慌てて茂みから飛び出し、辛うじて矢に当たる事はなかったが茂みから飛び出してしまったため男達の前に姿を現す事になってしまった。


「えっ、子供⁉」


「あんな子、村にいたか?」


「それよりもなんでこんな所に子供がいるんだよ⁉」


 茂みから飛び出してきたナキを見た男達は何故森の中に子供がいるのかと困惑していたが、茂みから飛び出したナキは男達に姿を見られた事によって動揺していた。


(まずい、見られた! この男達が常識のある人間とは限らないし、ディオール王国にまだついてないのに、今ここで捕まる訳にはいかない!)


 目の前にいる男達が常識のある人間ではない可能性があると考えたナキは、ディオール王国にいる優達への復讐心と見ず知らずの相手に捕まるかもしれないという警戒心から男達に声を掛ける事はせず、迷う事なく魔法を唱えた。


サンダー・ショット雷の小球!」


 ナキは間髪入れずサンダー・ショットを唱え男達に向かって雷の魔弾を放った。

 突然ナキが魔法を使って攻撃してきたため、攻撃された男達は突然の事にすぐには動けず、一人の若い青年に直撃した。


 突然ナキにサンダー・ショットで攻撃された男達は何が起きたのかわからず混乱する者もいたが、攻撃してきたナキに対して怒りをあらわにする者もいた。

 男達が自分に対して敵意を見せた事に気付いたナキは、動揺する事なく男達に向かって氷の魔法を唱えた。


アイス・ウォール氷の壁!」


 ナキがそう唱えると、男達の周りに氷の壁が現れた。

 今ここで無暗に暴れれば男達の中の誰かが助けを呼びに行き、援軍が来る事で不利な状況になる。


 その援軍の中に魔法を使えるもの、それも数人いれば捕まる危険があると考えたナキはあえて攻撃せず、アイス・ウォールに閉じ込めて援軍を呼びに行けなくすることで自分の事がバレるまでの時間を稼ごうと考えたのだ。


 アイス・ウォールに閉じ込められた男達は、自分達が閉じ込められた事に気付きアイス・ウォールを破壊しようと躍起になっていた。


「なんだこれ⁉ 氷の壁⁉」


「まずいぞ、閉じ込められた!」


「兎に角壊すんだ!」


(脱出しようと夢中になってる、今の内に距離を取らないと…!)


 男達がアイス・ウォールから脱出しようと夢中になっている内に、ナキは急いでその場から離れた。

 本来向かっていたディオール王国とは違う方向だったが、一度距離を置いてからもう一度方向を確認して進めば問題はないと考えたが、ここで問題が発生した。

 ナキが逃げた先に数人の子供の姿があったのだ。


「えっ⁉ 誰⁉」


「誰か飛び出して来たってうわぁ!」


(ウソだろう⁉ 今度は子供かよ!)


 逃げた先に自分と同年代ぐらいの子供達がいた事に驚いたナキは、すぐには立ち止まる事ができずそのままそのうちの一人とぶつかってしまった。

 顔を上げた時に一番驚いたのは、目の前にいる子供達の殆どが獣人ビーストで、その中に人間の子供が一人紛れ込んでいた事だ。


(獣人の子供の中に、人間の子供? ここはディオール王国の近くじゃないのか⁉)


 自分とぶつかった獣人の子供の周りに集まる獣人の子供達と人間の子供を見たナキは、何がどうなっているのかわからず呆然と見つめていたが、今はそれどころではないという事を思い出しその場を離れようとした。

 だが、立ち上がろうとした瞬間に激しく咳き込みすぐには動く事ができず、ぶつかった獣人の子供の周りに集まっていた子供達がナキの存在に気付いた。


「えっと、あの子誰?」


「そうだった忘れてた! おいお前! いきなり飛び出してくるとか危ないだろう⁉」


「っていうかちょっと待って、あんな子村にいた?」


「何言ってんだよ、そんなのいたに……どうだったっけ?」


(やばい、気付かれた。 っていうか最後の奴、俺がお前らの村にいる訳ないだろう⁉)


 自分の存在を子供達に気付かれたナキは、咳き込んで乱れた息を整え、すぐにでも逃げられるように準備する。

 赤茶色の髪をした獣人の子供が目の前まで近付いて来た時、ナキは素早く立ち上がり、赤茶色の髪をした獣人の子供の胸倉と腕を掴むと同時に勢いよく背負い投げを繰り出した。


 赤茶色の髪の獣人の子供はそのまま地面に叩き付けられ、その痛みから咳き込み動けなくなった。

 突然赤茶色の髪の獣人の少年が叩き付けられたのを見た獣人の子供達は叩き付けられた獣人の少年の名前を呼ぶ者、ナキに非難の声をあげる者、更には周囲に助けを求める者もいた。


 周囲に助けを求めている様子を見たナキは、近くに大人がいるという事に気付き急いで走り出そうとしたが、人間の子供がナキの前に立ち塞がった。


「ダメ! どこへ行くの⁉」


「邪魔するな! ウィンドウ!」


 ナキは自分の目の前に立ち塞がった人間の子供に向かって風の単体魔法であるウィンドウを発動させ、人間の子供を上空へ吹っ飛ばす。

 人間の子供が吹っ飛ばされたのを見た獣人の子供達はナキに構う余裕がなくなり、人間の子供を助けようと慌てだした。

 その隙にナキは茂みの奥に逃げ込み、ブーストを使って走り出した。


(こんな所で捕まる訳にはいかない、絶対にアイツら優達にフクシュウするんだ!)


 必死に逃げるナキの心を支配しているのは、元いた世界に帰れなくなった元凶であるディオール王国にいる優達への復讐だけだった。

 逃げ出してから数分が経ち、ナキは少し開けた場所に辿り着いた。

 無我夢中で走っていたため、方向を確認していなかったが今は逃げ切る事ができた、それだけで十分だった。


「ゲホッゴホッゴホッ! はぁ、はぁ、ここまでくればアイツらも追ってこないだろうっゲホッゲホッ!」


 ナキは激しく咳き込みながらも、子供や大人達が追いかけてきていない事を確認した。

 だが、大海の森で人に会うという想定外のアクシデントに見舞われ、今後どう動くべきかを考え始めた。


 大海の森に人が住めるところがあった事自体驚きではあるが、どれだけの人数なのか、その中に魔法を扱える者はいるのか、その者は自分よりも魔法の扱いにたけているのか、いずれにせよ、相手の勢力がわからない以上下手に動く事はできない。


(もしかして人間と獣人が共存する村があるのか?

 否、ふつうに人間の村と獣人の村があるって可能性がある。

 あの俺と同世代ぐらいの子供達の様子からして、敵対している可能性はない…。

 獣人の子供達の耳と尻尾を見た感じ、猫と狐、それから狼の組み合わせだったから、獣人の方は別々の獣人が混合した村の可能性があるな。

 となると、協力して俺を捕まえようとしてくる可能性が一番高い。

 なら、現時点で俺がとるべき行動は…)


 ナキは冷静に状況を考えながら、自分が今取るべき行動を考えた。

 現時点で遭遇した人間の大人達と、獣人の子供達が住んでいると思われる村の勢力がわからないまま。

 魔法を扱う者がいるかどうかわからないが、大海の森に暮らしている以上ナキよりも実力があるのはまず間違いない。


(人間の大人達はこんな森に見ず知らずの子供がいるとは思ってもみなかったような様子だった。

 子供達の目の前でまほうを使っちまったから、さっきの子供達経由で俺がまほうを使える事はバレている筈…。

 なら、逆にそれを利用してやる!)


 自分よりも実力があるであろう相手に捕まらないようにするために、ナキが出した答えは〝勘違いさせる事〟だった。

 そうと決まればナキの行動は早かった。

 ナキは集中し、魔力を乱さないように上位の雷魔法の詠唱を唱え始めた。


「〝我が求むるは裁きのいかづち、神の意をくみし穢れなき雷光の輝き、聖なる雷よ、不浄なるものへ天の裁きを下せ。〟ジャッジメント・サンダーボルト裁きの落雷!」


 ナキが詠唱を唱えて始めると、先程までの晴天が嘘のように大海の森上空に雷雲が立ち込み始めた。

 雷雲は次第に広がって行き、雷雲から雷鳴が響き渡り稲光(いなびかり)が見え隠れする。


 ナキが詠唱を唱え終えると同時に、周囲に無数の落雷が落ち始めた。

 魔法によって生み出された落雷はやむ事を知らぬかのように大海の森に降り注ぎ、落雷が落ちた場所から煙が上がる。


 落雷が落ちると同時に、地響きが起こり大海の森の木々を激しく揺らす。

 落雷が落ち終わる頃には、あちこちで煙が経ち、落雷が落ちた個所は見事なまでに黒焦げになっていた。


 ナキは自分が上級魔法を使う事ができるという事を見せつけ、手練れの魔法使いだと勘違いさせる事で牽制し大人達に不用意に近づけないようにしたのだ。


「雷属性の上級魔法をぶっ放したんだ。これで奴らも不用意に近づけない! ケホッケホッ!

 しばらく様子を見て、ディオール王国を目指すしかないか」


 ナキは遭遇した人間の大人達と獣人の子供の親達を警戒し、しばらく様子を見て再びディオ―王国を目指す事にした。

 いくらジャッジメント・サンダーボルトで牽制したとしても、しつこく自分を捕まえようと考えているかもしれないという考えがあったからだ。


 相手の様子を見て自分を追いかけて来ないと分かれば、問題なくディオール王国に向かう事ができる筈だと考えたナキは、自分が今いる場所で十分な食料の調達と魔法の訓練に打ち込む事にした。


 暫くの間動けない以上、移動中の水と食料の確保をしておく必要があり、魔法の訓練をすることで更なる牽制にもなる。

 足止めされている以上、その時間を有意義に活用する方が良いともナキは考えた。


「そうと決まれば、早速行動開始だ! ケホッケホッ! …やっぱり、風邪ひいたかな?」


 自分の取るべき行動を決めたナキは、先程から出て来る咳を気にしながらも寝床作りに取り掛かり始めた。

 この時、ナキは既に命の危機に晒されていた。

 既に命の危機を伝えるサインが出ていたが、自分の命が既に危機に晒されている事に気付く事なく、ナキは黙々と寝床作りを行うのだった。



――――――――――――――


 ご覧いただきありがとうございます。

 もしよろしければコメントなどお気軽にいただけたら幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る