第5話 可笑しな共同生活
元いた世界に帰れないという事実を知り、復讐を誓ったナキはそのまま我を忘れて魔法を発動し続けていたが、ナキが第十六区で暴れているという報告を受けたアリョーシャに取り押さえられ、そのまま病院に連れ戻された。
それでもナキが暴れ続けるため無理やり気絶させ、最初にいた病室から魔法の暴発を起こす患者が入院する病室に移動させられた。
ナキが憎しみで我を忘れて魔法を発動したと聞いた業魔はナキの体に問題はないかと確認のため診察しようとしたが、そこでナキが意識を取り戻し、診察中にも暴れに暴れ、傍にいたベリーベルが怪我をしてしまい他の医師や看護婦を呼んで大掛かりな診察なってしまった。
ナキが第十六区で暴れた事件から数刻が経過し、既に退院できる状態なのだが帰れない事実を知ってからのナキは荒れていたため、自体を重く見たアリョーシャの判断により現在は病室のベットの上で拘束され監禁された状態だった。
「クッソー、外しやがれーっ!」
ナキの両手首を拘束している手枷には魔法を使役できる者に魔法を使わせないための魔封じという術が施されており、そのせいでナキは魔法はおろか魔力を自由に放出させる事ができないでいた。
自分も魔法が使えると自覚したナキは自分なりの方法で魔力を放出させて何度か手枷を破壊してと脱走を試みたが、ことあるごとにアリョーシャに発見されて病室に連れ戻されていた。
そして何度も繰り返される脱走対策としてこれまで着用されていた手枷ではなく、魔封じを施された手枷に変更となったのだ。
(このコウソクグ、今までのよりがんじょうだ。
前まではマナを放出するだけでかんたんにこわれたのに!)
魔封じを施された手枷で拘束されたナキは何とか拘束具を外して脱走しようと試みるが、手枷はびくともしない。
異世界の知識が皆無に等しいナキからすれば
何より魔力の放出方法を自力で見つけ出した事だけでも奇跡的なのだ。
しかし、ナキからすればそれだけでは意味がない。
ナキの目的は自分を騙した挙句、無実の罪で危険な大海の森に追放したディオール王国の国王と王太子、自分達を召喚した神官長と勇者召喚の神託を下した月の至高神に、自分に無実の罪を着せた同級生達に全ての元凶となった優に復讐する事である。
そのためには異世界に来た当初に考えていた時と同じで異世界の知識が必要不可欠になるのだ。
そのためには現在拘束されてしまっている状況から抜け出さなければならないのだが、ナキは
(ってか、子供相手にテカセでこうそくって何考えてるんだここの大人れんちゅうは⁉)
自分がやった事は棚に上げ、アリョーシャ達が自分を拘束して監禁状態にした事に対してナキは不満を募らせる。
元いた世界であれば犯罪なのだろうが、アリョーシャたちからすれば脱走した挙句魔法で暴れる危険があるナキの方が危険すぎる存在という認識になっているのだ。
そうやって考えながら暴れていると、何処からともなくアリョーシャがナキのいる病室に姿を現した。
「相変わらず諦めずに暴れまくってるわね」
「うるさいロリババア!」
「婆なのは認めるけどロリは余計だって言ってるでしょうが!」
アリョーシャが現れるや否や、ナキはすぐさまアリョーシャに対して罵声を浴びせた。
それに対してアリョーシャはナキが言ったように自分が見た目に反して年寄りである事は見てめているが、少し余計な一言が入っていたため、そこに関してはすぐに反論した。
事情を知らない者達から見れば内容はどうあれ言葉遣いが汚い弟に対して説教する姉、と見れる光景なのだが、現実は全く違う内容だ。
不意に、アリョーシャが右手を挙げて指を鳴らすとナキを拘束していた手枷が何の前触れもなく外れた。
自分が魔力を放出しても壊れる気配がなかった手枷が自然と外れた事に対してナキは驚いていたが、その疑問もアリョーシャの言葉ですぐに忘れ去った。
「今日で君は退院。もう体を自由に動かしても問題ない状況だし、何より君が病院で暴れてたらこの病院に入院してる患者全員が不安がるわ」
「退院って事は、病室から出られるのか⁉」
退院できると聞いたナキは、ようやく病室での暮らしが終わり異世界の知識を得られるようになると思ったのも束の間、アリョーシャの言葉は退院できるという言葉よりもナキに衝撃を与えた。
「ちなみに、君の身元引受人は私だから」
「……はぁッ⁉」
退院するにあたって問題となるのがナキが暮らす場所。
退院できたとしても異世界に身内がいる訳ではないし、何よりまだ子供という事もあって一人暮らしは不可能。
よって必然的に孤児院か来訪者に詳しい物が多いスターリットの大人達の誰かのもとに引取られる可能性が高い。
これに関してはナキも拘束された状態で考えてはいたため問題はなかったが、まさかスターリットの最高管理者であるアリョーシャに引取られる事になるとは思ってもみなかった。
「なんでロリババアの所に引取られる事になってるんだよ!」
「第十六区で暴れまくったのもあるけど、そのあと病院で暴れるは担当の看護婦に怪我負わせるわ挙句の果てに脱走しようとするわで問題ありまくりな行動ばっかりしたからでしょ?
それとロリは余計だって言ってるでしょ⁉」
「よけいなお世話だ!」
自分が起こした数々の問題行動をアリョーシャに指摘されたナキだったが、普段のナキならば指摘された時点でいかに自分がした事が重大な事なのかを理解して反省するのだろうが優達への復讐を目標としているせいで自分が起こした事がいかに大変な事なのかを全く理解していなかった。
「兎に角、退院手続きはしたからさっさと移動するよ」
そういうとアリョーシャは再び指を鳴らすと、次の瞬間、ナキとアリョーシャは身知らぬ部屋にいた。
あまりにも突然すぎる出来事だったためナキはいつの間にか移動した事に対して反応が遅れ、見知らぬ部屋を見回し何が起きたのかを把握しようとしたが、その謎はわからなかった。
「ここは、病室じゃなくなってる⁉」
「ここはスターリットの第一居住区になってる第一区の一軒家よ。
私の本来の自宅は第四居住区に当たる第十二区にあるけど、君のこれまでの行動を考えて、急遽この空き家を借りたのよ」
「第一区って、他の区にいどうした⁉」
「普段は歩きながらか空を飛びながら移動するんだけど、君の事だから簡単には納得しないだろうし隙を見て脱走するだろうから手っ取り早く移動したの」
「他の区にいっしゅんでいどうしたって事は、テンイマホウでも使ったのか?」
「正解。でも教えてはあげないからね?」
ナキが入院していた病院がある第十六区からスターリットでは一番上に位置する第一区の空き家に移動したという事をアリョーシャから教えられたナキは、その短い会話の中でアリョーシャが転移魔法を使ったという答えに行きついた。
一方で、アリョーシャは転移魔法を使った事を認めたがナキに教える気はないようだ。
ナキが転移魔法を覚えた途端、すぐにでもディオール王国に乗り込んで大暴れする光景が目に見えたのだろう。
それだけは是が非でも不正がなければならないと考えていた。
転移魔法を教えるつもりはないと断言されたナキは、生まれつきの鋭い目を利用して物凄い形相でアリョーシャを睨みつけたが、そこは五千年以上生きてきたおかげかナキに睨まれてもアリョーシャは全く怯む事はなかった。
「兎に角、今日から私がナキの保護者だから諦めなさい。それと入院着は返すから」
そこまで言うとアリョーシャは再び指を鳴らしたと思いきや、アリョーシャの腕にはなきが先程まで来ていた入院着があり、それを見たナキは今の自分の状態を確認してみると最初に病院に出た時に着た服とは違うものの、全く違う服を身に纏っていた。
「はぁ⁉ なんで俺ちがう服着てるんだよ⁉」
「そりゃあ私が着替えさせたに決まってるじゃない。っていうか服着せないなんて鬼畜な事しないわよ」
「何かってな事してるんだよロリババア!」
「だから婆は兎も角ロリは余計だって言ってるでしょうが!」
魔法で勝手に着替えさせられた事に対して激しい怒りを覚えたナキはアリョーシャに罵声を浴びせた。
訳も分からず魔法で着替えさせられたナキからすれば、アリョーシャがした事はある意味犯罪なのではないかと思ったが、アリョーシャは気にするような素振りは見せず、むしろナキに呆れたような様子で見ていた。
「今のナキに何言ったって言う事聞かないでしょう?
それならさっさと着替えさせた方が早いわよ」
「だからって人のきょかなく着替えさせんなよ! あと今のはなんのまほうだよ⁉」
「それも教えてあげないわ。私は今から入院着返しに行くから、ナキは大人しく家の中で待ってなさい」
そこまで言うとアリョーシャは再び転移魔法を使ってそのまま病院に行ってしまった。
ナキはアリョーシャを止めようと声を掛けたが、それ以前に聞く耳を持つ様子はなかったため、そのまま近くの椅子に八つ当たりした。
ナキは慌ててアリョーシャの後を追おうと今いる部屋から飛び出し、玄関を見つけると扉に近付きドアノブに手をかけ外に出ようとしたのだが、扉はびくともせず扉を開ける事ができない。
それならばと、ナキは家中の外に繋がる窓などから出ようとしたが、窓の方も開ける事ができなかった。
ナキはすぐにアリョーシャがいない間に自分が外に出ないよう外に繋がる窓や扉に魔法で細工をしたのだと気づいた。
「(何がなんでも俺を外に出す気はないってことか!) それならジツリョクコウシだ!」
何がなんでも外に出ようとしたナキは、意識を取り戻した当初の夜に炎の魔法を使える事は確認済みであったため、炎の魔法の爆発を利用して家の壁を破壊しようと考えたのだ。
既に魔封じが施された手枷は外されていたため魔法の使用が可能な状態になっており、ナキはすぐさま右掌を壁に向けると頭の中でイメージし、掌に現れた火の玉を家の壁に向けてはなった。
火の玉はそのまま壁に直撃し、物凄い爆風が起こり爆発音が家中に響いた。
これならば壁も壊れて外に出られるであろうと思ったナキの考えとは裏腹に、家の壁は壊れているどころか焦げ跡一つついていなかった。
それを見たナキは困惑しながらももう一度火の玉を出して再度壁に放つが、爆風が起きて大きな爆発音を上げるだけで壁は全く無傷のままだった。
それでもナキは諦める事無く次々と火の玉を出しては壁にぶつけて外に出ようと試みた。
アリョーシャが戻ってくる頃には壁を破壊しようとナキが放った火の玉の爆発で起こった爆風の影響で周りの家具が吹っ飛び、部屋の中は散らかり放題になっていた。
部屋の様子を見てナキが魔法を行使したのだと悟ったアリョーシャは、思わず顔を引きつらせた。
その後アリョーシャはナキの魔法によって散らかった部屋の片づけをした後夕食の準備をしてナキに食べさせようとしたのだが、ナキはアリョーシャが作った料理を口にしようとしなかったため、そんなナキの様子を見たアリョーシャはこれからの生活は苦労が絶えないという事を悟った。
こうして、復讐を目的としたナキと危険な事はさせまいとナキを見張るアリョーシャ、目的が全く違う者同士の少し奇妙な生活が始まった。
*****
まず、朝起きればアリョーシャが作った朝食が用意されていたがナキは口にすることなくそのまま魔法の鍛錬を始めたため、アリョーシャは強引に席に座らせて朝食を食べさせた。
朝食を食べ終えた後はアリョーシャによる異世界の勉強を受ける事となったが、魔法に関しては教えようとはしなかった。
その事を悟ったナキは、ならば自力で覚えてしまえばいいという考えに至り、家中の本を読み漁ったが、そちらに関してもアリョーシャが手を回していたのか一冊も魔法に関する本が見当たらなかった。
外出に関しては出掛ける事もできるのだが、必ずアリョーシャの付添のもと出掛ける事が条件となっていた。
ナキはアリョーシャの隙をついては一人で行動しそのまま脱走を試みるも、第十六区でのナキの暴れっぷりを聞いていた第一区に駐在中の警備隊がナキを発見してアリョーシャが来るまで第一区から出ないよう足止めされた。
アリョーシャがいない場合は家の中に閉じ込められて軟禁状態になる。
アリョーシャがいないうちに家の外に出ようと考えたナキは家中に魔法を放ち、脱走を試みたがアリョーシャが何かしらの魔法を施した家はびくともせず、最初の様に炎の魔法だけではなく他の属性の魔法も試していた。
ナキが家の中で暴れる度に、爆風や衝撃で家の中が散らかり放題になり、帰宅したアリョーシャが家の中を片付けていた。
「ぜんぜん上手く行かねぇーっ!」
自分の思惑が
ナキの中では魔法の訓練ができていても可笑しくはない予定だったのだが、アリョーシャと第一区の警備隊の妨害によって魔法の知識はいまだに皆無な状態だった。
ディオールにいる優達は今頃基礎魔法を完全に使いこなし、上位の魔法が使えるように訓練していても可笑しくはないためナキは焦っていた。
(ちくしょう、本当ならキソマホウを完全に覚えていりょくの高いまほうを覚えたかったのに!)
「ナキ~、私食材買ってくるからお留守番よろしく~」
「留守番っていうよりなんきんだろうが!
いいかげんにまほうを教え……ってもういなくなってる!
ふざけんなよロリばばあ!」
アリョーシャに魔法を教えるよう文句を言おうとしたナキだったが、その前に言ったようにアリョーシャは食材を買いにそのままいなくなってしまったため、ナキは憤慨して近くにあったソファーに八つ当たりした。
するとソファーが吹っ飛んだ衝撃を受け、近くにあった棚の引き出しの中身が飛び出しているのが目に入った。
散らばった引き出しの中身にパンフレットのような物が含まれており、それを手に取り確認してみるとそれはナキが今いる第一区とは別の区の案内用パンフレットだった。
「これは、この
今後の生活に役立つかもしれないと考えたナキは、パンフレットを開き中身を確認した。
書かれている数字からして第二区のパンフレットらしく、異世界の文字もアリョーシャから強制的に教わっていたため既に読めるようになっていた。
書かれていた第二区のパンフレットは天人族と呼ばれる種族や魔女と呼ばれる者達が多く暮らしているらしく、様々な手段で異世界中の情報を集めている事から情報区と呼ばれている場所のようだ。
そのパンフレットに掛かれている内容で一番気になったのは、異世界中の情報だけではなく、様々な本が集まっているという事だった。
情報管理区と呼ばれているだけあって異世界中の本をかき集め、何度も書かれている内容を確認して正しい物であればその本を求めている者達のために輸入したり、間違っていれば本の内容を訂正するよう出版社に問い合わせたり、酷ければそのまま絶対に輸入しないように禁止しているのだという事だ。
(イセカイ中から色んなじょうほうだけじゃなく、本とかも集まってる。
もし俺のすいそくがまちがってなければ、まほうにせいつうした本もあるはず!)
第二区のパンフレットを見たナキは、書かれていた内容から魔法関連の本も集まっているという事に気が付いた。
幸か不幸か、第一居住区である第一区はスターリットの土台とも呼ばれる巨木の頂上付近にあるが、情報区である第二区はすぐ真下。
これまでのアリョーシャの様子からして第二区に連れて行ってくれと頼んだとしてもだめだと言われるのは目に見えるため、アリョーシャの隙をついて警備隊を突破する事ができれば第二区に行く事ができるのではないかと考えた。
「そうとなればさっさとだっしゅつして本を手に入れてやる!」
「さっさと出て何しようって?」
第二区に向かい、魔法関連の本を手に入れようと活き込んだ矢先に食材の買い出しに行っていたアリョーシャが戻ってきていたため驚いたナキは悲鳴を上げると思わずアリョーシャの顔面に向かって火の玉を放ってしまった。
しかし、攻撃された本人は全くの無傷のままで両腕に食材を抱えてしっかりと立っていたためその事に対してもナキは驚いていた。
「ギャーッ! なんでむきずのままなんだよ⁉」
「否そこはごめんなさいっていうのが先でしょうが。
いきなり声かけて驚かせたのは悪かったけどさぁ、いきなり人の顔面に向かって攻撃するのはよく名からね?
おまけに顔面にと直撃したからね?」
「ぜったいウソだろ⁉ ふつうにむきずじゃねぇか!」
「そりゃあ私は
自然治癒力もめっちゃ高いからぁ、さっきの火の玉の威力なら即効治るに決まってるじゃん」
「さらっとチート発言しやがった!」
ナキの攻撃を受けて無傷なままだったアリョーシャは自分が不老不死という事をさもあたりまえの様に言ってのけたが、ナキからすれば衝撃的過ぎて謝って攻撃してしまった事への謝罪よりも先にそちらに関して指摘してしまった。
その事に対してはあえて触れないアリョーシャではあるが、攻撃されたことに対してはまだ怒っている様子のまま出て腕の中にある食材を台無しにしてしまいそうになっていた。
ふとナキが火の玉を放ったのとは逆の手に目をやると、ナキが第二区のパンフレットを手にしている事に気付いたアリョーシャはナキに訊ねた。
「ねぇ、ナキ。第二区に興味があるの?」
「は? ロリババアには関係ないだろ」
「いい加減にロリを付けるのやめなさい。
あと君まだ十歳な筈なのにどこでチートなんて言葉を覚えたの?」
「知るかボケ!」
「本当に口悪いなぁ。それよりさっきの質問に答えてくれる?」
ナキの口の悪さに呆れるアリョーシャではあったが、先程の第二区に興味があるのかという質問に対しての答えをもう一度訪ねた。
それに対しナキはアリョーシャの態度に警戒しながらも、脱走する度に未然に防がれている経験から嘘をついてもばれるだろうと考え第二区に関する意見をアリョーシャに伝えた。
「このパンフレットに世界中から色んな本が集まってるって書いてあるから、新しい本がほしいんだよ。
この家にある本全部よんじゃったし、それにくり返し読んだからあきて来たし」
「え、もう全部読み終わってたの?」
確かにナキは異世界の文字を読み書きする事ができるようになってから現在住んでいる家に用意されていた本を全て読み終えており、何度も読み返している内にその内容に飽きてきたという理由も本当ではあったが上手く行けばアリョーシャを通して第二区に行く事ができるか、仮にいけなかったとしても第二区に集められているという本を手に入れる事ができるかもしれないという期待があった。
ナキの口から家の中にある本全てを読み終えたという事を聞いたアリョーシャは、その事に関して予想外だったらしく、新しい本が欲しいと聞いたアリョーシャはしばらく考え込むと、抱えていた食材をテーブルに置くと、そのままリビングから出て行ってしまった。
そんなアリョーシャの態度に怒りを覚えたナキだったが、すぐにアリョーシャは戻ってきたためすぐに怒りは収まったがその手の中に何冊かの本があるのを見て驚いた。
「これ、私のお気に入りの本。っといってもこの世界の生き物や植物に関する図鑑なんだけどね」
「え、ずかん?」
「今のナキに魔法を教える事ができないように、第二区に連れて行く事もできないわ。
今の貴方は危険すぎる。体も、心も」
「俺が危険って、どういう事だよそれ⁉」
「今はそれを知る必要はないわ。
魔法以外の本であれば私が用意してあげるから、スターリットの住人達を不安がらせるような行動を慎みなさい」
そう言い残すとアリョーシャは持ってきた図鑑をナキに手渡すとテーブルに置いた食材を手に取り、キッチンにしまいに行った。
ナキは行動を制限しながらも本が欲しいという要望に答えたアリョーシャの言葉に困惑しながらも受け取った図鑑を手に自室に戻っていった。
そしてアリョーシャが言った今の自分が危険すぎるという言葉の意味をナキが理解するのは、これから先の事となる。
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