「あの空へ、あの空へ、君の翼で」第24話NGシーン
※今回のエピソードは「あの空へ、君の翼で」
第24話のネタバレを含みます。ご注意ください。
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【これまでのあらすじ】
下河雪姫が書く「あの空へ、君の翼で」
カケヨメで好評連載中のこの物語。
さて、いよいよ文化祭に突入。
ところが――。
クラスメート達の無計画さ・無頓着さで、クラスの模擬店は中止寸前の事態に追い込まれかけていた。
一人、直談判するつもりだった、空を放っておかない面々。そのなかで、天音翼は誰よりも、空の近くで支えようと勇気を振り絞って踏み出して。
そんな翼に、無性に愛しさがこみあげてきて。
空は、無意識に彼女を抱きしめた――。
「おいっ?! 変なモノローグ入れるなって! この作者、横暴すぎでしょ?!」
「えへへ。なんか照れくさいね、空君?」
「翼はそれで良いの?!」
「空君はイヤなの?」
「いや、別にイヤとか。そういうのじゃなくて――」
「二人を見ていると、本当に青春だねって思うよ。尊い」
「冬希兄ちゃん、その一言で全部片付けないで?」
――何を言っているのかな?
いつもゼロ距離で、一緒にいるクセにね?
この鈍感マンへのご意見も、お待ちしています!
それでは、改めまして。本編を、どうぞ!
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「武セン。俺、反省文を書くからさ。何とか自分達でやりくりをするから! 文化祭の模擬店、出しても良い?」
「……ふむ」
武センは悩まし気に、額を摘まむ。
「そうだ、な――」
言いかけた瞬間だった。
ふーっと、また耳元に息を吹きかけられる。
「……天音さん?」
「ダメでしょ? ちゃんと武林先生って呼ばないと」
「い、今……それ?」
「親しき仲にも、礼儀ありだよ? だって、私達、お願いする立場でしょ?」
「そうだよ、下河君」
今度は逆サイドから、本馬さんが囁いてくる。いや、わざわざ耳元に口を寄せて言う必要あった? それに、耳たぶまで真っ赤になるのなら言わなきゃ良いのに。
「ねぇ、
矢淵さんが笑む。その唇が、妙に艶かしいと思ってしまう。
息を吸って。
それから、矢淵さんは、吐いた。
「いっ?」
そう、まるで耳に息を吹きかけるように。ドコに? そんなこと言えるか!
「こっちの
「ドッチの?!」
「そりゃ、こっちの――」
「良い! 言わなくていいから! 今は黙って!」
「そう? こっちの
ツツー。
ゆっくりと
「矢淵さん!」
「里野ちゃん!」
「里野っ?!」
■■■
プツン。
電源は、そこで落ちた。
■■■
「あぁぁぁぁっ! 空、ひどいよ!]
「むしろ寛容だわ! 全年齢サイトでなんてモノ書いてるのさ?! 垢バンされる前に姉バンする弟の優しさ、むしろ感謝して欲しいよ!」
なんだ、姉バンって? つい、内心で突っ込んでしまう俺だった。姉ちゃんが愛用している、ポケットメモライター【メモ太】
冬希兄ちゃんがプレゼントしてくれた、姉ちゃんの宝物。
収納時は小箱状。ボタン一つで開いて、キーボードとディスプレイが立ち上がる。
ただ、コイツがクセもので。目に優しい電子ペーパーディスプレイ。電源を落としても、文字が残る仕様。つまり、今もディスプレイには、姉ちゃんが書いた生々しい文章が、はっきりと表示されているわけで――。
「誇張が酷すぎるって!」
「あれ? 翼ちゃんから、そういうことがあったって聞いていたけど――」
「ちょ、ちょっと! お姉さん! それは内緒って!」
「ちょっと、翼! 何を言ってるの!?」
「あぁ、そういうことね」
納得と言わんばかりに、手を打ったのは冬希兄ちゃん。いや、このタイミングで得心いかなくて良いから!
「この小説の中では、矢淵さんってギャルっ子が書かれているけれど。実際にワルいことをした犯人は別にいると……。空君、顔が真っ赤だよ? どうやら、君が当事者であることは間違いないようだね」
そういう探偵並の推理はいらないよ、冬希兄ちゃん!
何も悪いことはしていないのに、妙に追い詰められた気分になるのはどうしてか。
「そっか! 実際には矢淵さんじゃなくて、別の子が空に迫ったんだ!」
姉ちゃん、ひらめくな!
「この時はまだ迫られていない!」
「迫ったのは、里野ちゃんじゃなくて私!」
「「――え?」」
Oh《オー》! 翼さん、君は何を正直に暴露しているのですか?
「それって……」
姉ちゃん! 爛々とした目でメモ帳とボールペンを持つんじゃありません!
「あれは文化祭でちょっとテンションがおかしかっただけで……」
「鈍感な空君には、あれぐらいしないと――結局、ジャマが入って、ダメだったんだけれど……」
「うわぁ、空。最低ー」
いや、姉ちゃん? ココで俺をディスるのはちょっと違うんじゃない? それに、あれは――正直、本当に理性が吹っ飛ぶかと思った。
「冬希兄ちゃん、なんとか言ってよ!」
こうなれば、誰より頼れる伝家の宝刀を拝み倒すしかない。
「そうだね……」
おもむろに、兄ちゃんは姿勢を正す。やっぱり頼れるのは――。
「R-15っていう表現で、考えた時にちょっと中途半端かもね?」
はい? 何の話?
「空君の立場で考えたら、天音さんが傍にいるだけで、ドキドキするわけじゃない? あえて、このシチュエーションは必要なのかな?」
誰が、編集者モードで一言申せと言った? 姉ちゃんも神妙な顔でメモとらない!
「……ドキドキ、してくれたのかな?」
翼は不安そうに呟く。いや、だからその点には触れないでいてくれると――。
「それは、空君に聞いた方が良いよね?」
ニッと、冬希兄ちゃんが笑む。なんという、キラーパス投げつけてくるのさ?!
「んー。書き直してみる!」
ぐっと、姉ちゃんが拳を握る。とりあえず軌道修正できたのは何より。永遠に作品そのものを、お蔵入りしてくれたら、もっと有り難いんだけどさ。
■■■
「ねぇ、空?」
姉ちゃんが、メモ帳とボールペンを持って、ニッコリ笑んだ。
「……それはそれとして、後で教えてね? 今後の参考にしたいから」
そう言って、兄ちゃんのことをチラッと見た。それから、姉ちゃんは心なし頬を朱色に染めて。
(……兄ちゃん、逃げた方が良いぞ!)
でも、それは取り越し苦労で。
誰が、とは言わないけれど。
その人が、返り討ちにあったのはまた別の物語。
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「あの空へ、君の翼で」
https://kakuyomu.jp/works/16817330667507707105
現在、意欲的に更新中です!
え……?
私と冬君の、その後が知りたい?
えっと……冬君には、やっぱり敵わないなぁって素直に思いました。
時々だけれど、冬君はちょっとイジワルなんです。
でも、そんな冬君に溶かされちゃう、
でした!
あとはナイショ💕
お口にチャックします!
最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!
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