Hello,new world


 バスの座席が湿ったと気づいた時、何が起きたのか理解できなかった。近くに立っていたおばさんが血相を変えて俺達を見る。

「……この子、破水したんじゃない?」

 へ?

 俺は目をパチクリさせるしかなかった。



 高校の制服のまま分娩室の前で待つ。学校の授業を思い返して。でも、命が産まれる現場は想像以上に緊迫感でヒリヒリする。

「翼――」

 思わず彼女の名を呟く。

 と廊下を駆ける音が響いた。

「妻は――」

 ちょうど分娩室のドアが開いた。先生と親友が顔を見せる。

「お父さんですか? たった今産まれましたよ、元気な男の子が!」

 医師の言葉で自分のことのように嬉しくなって――


「私達の時は、最初から傍にいてね?」

 唐突な発言に思わずむせこんだ。





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毎月300字小説企画

第5回参加作品

テーマ「待つ」で参加予定でしたが、こちらは見送りました。

5/6更新分を提出予定。


文字数300字



個人的には「待望」って感じでしょうか。


日本の新生児死亡率は1.9%

これは各国のなかでも、かなり低い数字

(安全な出産ができる国ということです)


医療現場の皆さんの尽力はもちろん

何より妊産婦の皆さんが

その体をはって出産をしたその結果だって思うんですよね。

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