送る言葉
あの
音楽ユニット【COLORS】脱退が大昔のように感じる。
――真冬のコーラス好きです。応援してます!
その手紙に救われた。脱退を決めた時は、あえて読まないようにした。脱退してからも、定期的に送られて――事務所から、処分されることなく転送されたのは、きっと温情だったんだと思う。
「な、なに? 上にゃん?」
クラスメートがあからさまに狼狽する。あえて言葉にするのも照れくさいので、あの手紙を見せることにした。
「そ、それって――」
「ありがとう」
やっと送り主に言うことができたんだ。
「何の話?」
みんながいつものように集まるけれど――。
「「ナイショ」」
笑みを含み、そんな俺と黄島さんの声が重なって。
さて、と。
ここから、雪姫と光の追求をどう回避すべきか。
ぶすっと頬を膨らます雪姫を尻目に。
気が気でないくせに、言葉にすることに遠慮がある光に。思わず、ため息が漏れてしまう。
「彩ちゃん、可愛いもんね」
「冬希、格好良いもんな」
二人、同時に拗ねないで欲しい。
「仕方ないな、二人とも」
「仕方ないんだから、二人とも」
俺と黄島さんの声がやっぱり重なって――二人そろって、苦笑が漏れた。
「「仲良いね」」
そっちも、な。そう言いたいのをぐっとこらえた。
ここからは、忍耐の時間である。
気持ちを送り届けようと思ったら、手間暇と時間がかる。そして、惜しんだら伝わらない。惜しむつもりもない。言葉を贈ろうとおもったら、それぐらいの覚悟が必要だと教えてくれたのは、黄島さんだった。
「「あのね、これは――」」
「「やっぱり、仲良いよね」」
むすー、むすーっとさらに頬を膨らます二人を見やりながら。
話し合いの席につくのにも、もう少しだけ時間がかかりそうだった。
________________
【作者蛇足】
本当はですね。
毎月300字小説企画
第三回テーマ「おくる」で参加予定の作品だったのですが、
300字ver.はしっくりこなかったので、未参加。
結果、700字オーバーとなりました💦
個人的には、ゆっきは上にゃんが甘やかしたら良いけど、
ひかちゃんは拗ねたら面倒くさそうだねぇ、と思いながら。
ひかちゃん、早く素直になりなよと思う、今日この頃です(え?
お読みいただき、ありがとうございました。
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