捨て猫×2

 お母さんがいなくなって、私はみゃーみゃー鳴いた。そんな私を人間がダンボールに放り込んで、公園の真ん中に置いた。雨が降り出す。体が冷え、意識が朦朧とするなか、誰かが私を優しく抱き上げた。

 これが私とあー君の出会いだった。



 あー君が部屋に閉じこもって泣いていた。親友と喧嘩したらしい。自分に何も言ってくれなかったと、悔しそうに。その泣き方が、まるであの時の私と同じようだった。

 人間のことはよく分からない。私はペロンとあー君の掌を舐めてあげることしかできない。

 でも、あー君?

 あー君は捨てられてなんかいないよ? あの子はそんなことしない。私も捨てられてなんかいない。

 ちゃんとお話をしてみよう?

 私、傍にいるからね。

 

 


________________


第84回Twitter300字SS参加作品。

テーマ「捨てる/棄てる」

文字数、カクヨム換算299字。


君といるから呼吸ができる

黄島家のにゃんこ「モモ」と「彩翔」君でした。

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