第49話 全力全開! アルムパワー!
アルムは目を閉じて集中した。
これまでにないぐらい魔力を消費するのだ。途中で気絶でもしたら谷底へ真っ逆さまだ。慎重にやらねばならない。
「まずは、これっくらいの力で……はーっ!」
アルムは両手を谷底へ向けて魔力を放った。まばゆい光が谷底に届く。
突然攻撃を加えられた瘴気が這い上がってこようとするが、浄化の光に触れて消滅する。
この調子でいけるか、と思ったが、次の瞬間大量の瘴気が光を覆い尽くさんばかりに湧き上がった。
「ならば、二倍の力で……えーいっ!」
アルムが光を増やすと、瘴気は勢いを削がれ光にのみ込まれるかに見えるが、すぐに復活して光をものともせずに這い上がってこようとする。
「じゃあ、三倍!」
瘴気の勢いが少し鈍くなったようだが、まだ駄目だ。
「五倍ならどうだ!」
谷底が光であふれる。が、瘴気はまだ光の下で蠢いている。しぶとい。
「十倍だあーっ!!」
これまでに使ったことのないぐらいの魔力を放出して、アルムは谷底をすべて光で満たした。
「はあ、はあ……」
さすがに疲れてふらついたアルムを、駆け寄ったマリスが支えてくれた。
「瘴気はすべてなくなったの?」
「たぶん……」
マリスが身を乗り出して谷底を覗き込んだ。
次の瞬間、消えかかった光の向こうから瘴気が矢のように放たれて、身を乗り出していたマリスをかすめた。
「きゃっ……」
マリスがバランスを崩し、谷底へ落下した。
「マリス!」
アルムはとっさに地を蹴って飛び出した。
マリスに手を伸ばすと、空中に投げ出されたふたりをのみ込もうと谷底で待ちかまえる瘴気の塊が見えた。
「こんの~っ! マリスに触れさせるもんか!」
落下しながら、アルムは渾身の力を込めて光を放った。
「完・全・消・滅!! 波―っ!!」
ちょっと必殺技っぽい雄叫びになってしまったが、誰も聞いていないだろう。たぶん。
まばゆい光が谷底を覆い――いや、谷底のみではなく、ほとばしる閃光が崖の上まで届いた。
アルムは地面に叩きつけられないように自分とマリスを結界で包んで光の中を下りていった。
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