第48話 アルム、決意する
ダリフの独白を聞いたアルムは、砂漠の民が聞きしに勝る過酷な状況で生きてきたのだと知って胸が痛くなった。
風がオアシスを枯らす前に、光の魔力を持って生まれた者がすべての魔力を使って谷底の瘴気を抑える。
これまでにいったい何人の『守り人』が犠牲になったのだろう。
「聖女アルム様!」
砂漠の民の過酷な運命に想いを馳せていると、マリスを捕えていた男女がアルムの足下に身を投げ出した。
「お願いです! そのお力で砂漠の民を助けてください! 食料がもっとあれば、オアシスを出て盗賊になる必要もなくなるんです!」
「王都には他にも聖女がいるんだ! ひとりぐらい、砂漠のために祈ってくれてもいいはずだ!」
男女は額を地面に擦りつけて懇願する。
アルムは思わずヨハネスと目を合わせた。彼もなんと言っていいかわからないような表情をしている。
マリスを誘拐し、ヨハネスを身代わりにしようとしていることについては絶対に許せないが、きっと彼らはハールーンを、砂漠の民を守るために危険な賭けに出たのだ。
悪人とは思えない。吹っ飛ばして捕まえて終わりにはできない。
「……わかりました!」
「え? 聖女様っ」
「おおっ、我らと共に砂漠で生きてくださるのか」
「谷底の瘴気を全部浄化しちゃいましょう! 綺麗さっぱり!」
『は?』
アルムとエルリー以外の全員の声がハモった。
アルムは呆気にとられる面々にかまわずに、エルリーを下ろすと縁に近寄った。
「よっし、やるぞ!」
「あーるぅ、がんばれー」
マリスの元に駆け寄ったエルリーが応援してくれる。
アルムは「ふんふん!」と気合いを入れた。
「おい、よせ。危険だ。中途半端に光の魔力を放てば、闇にのみ込まれて瘴気の一部になっちまう」
だからこそ、守り人は命ごと捧げて渾身の光で闇を抑えるのだ。とダリフが言った。
(始まりの聖女が浄化できなかったという……それが本当だったら、私でも完全に浄化するのは無理かもしれない)
だがしかし、やってみる価値はあるだろう。
「よっしゃ! やれアルム!」
「がんばってアルム!」
ヨハネスとマリスもアルムの背後で拳を握って応援する。
砂漠の主従はそんな彼らを見て戸惑いを浮かべていた。
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