第11話 最上階到着!
***
最初のうち、ヨハネスとキサラは侵入してきた瘴気を浄化していた。ヨハネスはいつも身につけている水晶に力を込め、瘴気にぶつける。キサラは手をかざしただけで次々に浄化していく。
だが、いくら浄化しても次から次へと湧いてくる瘴気に、キサラは浄化の光を放つのをやめて自分達の周囲に結界を張った。
「殿下! このまま浄化していては、魔力を使い果たしてしまいます!」
キサラの言葉に、ヨハネスも頷いて額の汗をぬぐった。聖女のように豊富な魔力を持たないヨハネスでは、キサラより先に魔力が尽きる。浄化を連発しただけでも息が上がっている有様だ。それでも、キサラの十分の一程度しか浄化できていない。
わかってはいたが情けないことだと、ヨハネスは唇を噛み締めた。
結界の外ではどんどん瘴気が増え、ただでさえ薄暗かった塔の中で明かり取りの小窓から射し込むわずかな太陽の光さえも徐々にさえぎられていく。
ヨハネスはごくりと息をのんだ。キサラも永遠に結界を張り続けることはできない。塔の外がどうなっているのか、塔の異変に外の人間が気づいているのか、なにもわからないのだ。助けが来るかもわからない以上、キサラとエルリーは結界を張れる今のうちに急いで塔から脱出するべきだ。
「……早く塔を下りろ」
「殿下! しかし……」
「魔力が尽きるまでここにいるつもりか? いいからエルリーを連れてとっとと……」
ここを出ろ、と命じようとしたヨハネスの言葉をさえぎって、キサラにくっついていたエルリーがなにを思ったのか床を蹴って結界の外に飛び出した。
「「エルリーっ!?」」
瘴気の中に飛び出したエルリーはぎゅっと目をつぶって腕を広げた。すると、辺りを漂っている瘴気がエルリーの胸元に吸い込まれていく。
強い闇の魔力を持つエルリーは瘴気に触れても平気だ。そして、瘴気をその身に吸収して魔力に変えることもできる。
そのことはヨハネスとキサラも知っていた。だが、エルリーにも吸収できる限界があるはずだ。これだけの大量の瘴気をいっぺんに吸収して平気でいられるだろうか。
それに第一、瘴気は今も際限なく増え続けており途切れる気配がない。
「駄目よ、エルリー……」
キサラが止めようと手を伸ばした。
次の瞬間、
「わー、やっぱり上も瘴気だらけ。よいしょっと」
緊迫感のない声がしたかと思うと、目の前を覆う瘴気が一瞬にして消え去った。
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