第50話 それぞれに出来ること
「二人でとは、どういうことです?」
困惑するオスカーに、ガードナーはあっさり答えた。
「簡単な話だ。マリスが十八歳になるまでの二年間、オスカー殿が後見人をやる。マリスが成人したら後見人を譲ればいい」
一同は「はっ」と目を見張った。
二年後であれば、エルリーが成長して魔力制御できるようになっている可能性が高い。
「こういう筋書きはどうだ? 『ジューゼ伯爵領を訪れた第二王子を案内していたジューゼ伯爵令嬢が子供を拾った。その子供が強い魔力を持っていたため、キラノード小神殿に相談。魔力の使い方を学ばせるため、キラノード神官長が後見人となり、第二王子が保証人となって聖女の付き人に推薦した。』これならエルリーが聖女のそばで暮らせるぞ」
ヨハネスは唖然とし、アルムは目をぱちくりさせた。
大神殿の中でも、聖女が暮らしているのは聖殿という特別な場所だ。そこには護衛の聖騎士以外に聖女の身の周りの世話をする付き人が住んでいる。
付き人になれるのは未婚の女性と決まっていて、貴族だけではなく平民も多く働いている。そこにエルリーを紛れ込ませようというのだ。
「なるほど! 付き人なら聖女のそばにいても誰も不思議に思わないですね!」
アルムは目を輝かせてガードナーを見上げた。
「くっ……脳筋のくせに!」
「ヨハネス殿下。オスカー様どころかガードナー殿下にも負けておりますわ。完敗ですわ。ざまぁですわ」
嫉妬して歯噛みするヨハネスをキサラがせせら笑った。
(聖殿で暮らしながら大きくなって、魔力の制御ができるようになれば、エルリーは自由に暮らせるようになるはず!)
アルムは明るい気分になって、スクワットを始めたガードナーに肩車されたままのエルリーをみつめた。エルリーは嫌がることなく上下に揺られている。
(私も、エルリーのために何かできないかな?)
エルリーは闇の魔導師にはならない。と、レイクに宣言したのはアルムだ。魔力の使い方を教えるのは向いていないが、キサラ達に任せっぱなしにもできない。
(私が役に立ちそうな場面って、エルリーが魔力を暴走させた時ぐらいだよなあ……)
エルリーがキサラ達では抑えきれないぐらいの魔力を暴走させそうになった場合に、即座に対処する方法はないかとアルムは考え込んだ。
(エルリーに何かがあった時、すぐにわかるようにできれば……)
その時、ヨハネスの懐からぽろっと丸くて平たい石のようなものがこぼれ落ちた。さっきの藻玉である。
「おっと。藻玉が落ちた」
「それ持っていると幸せになれるって言い伝えもあるみたいですわよ。お守りにしてはいかが?」
「俺の幸せを嬉々として邪魔してくる聖女から投げつけられた豆にそんな御利益ねえよ」
藻玉を拾うヨハネスとキサラのやりとりを見て、アルムの脳裏にぴんと閃くものがあった。
(そうだ。確か伝説の中に……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます