第14話 明日の予定
***
「へえ〜。アルルは初めて王都から出たのね。私は三年前に聖女認定に行ったのが初めての王都だったわ」
マリスは明るい性格のようで、夕食の席でもずっと笑顔でガードナーとアルムに語りかけていた。
「また王都に行ってみたいなあ。私は魔力なしだったけど、私の年には二人も聖女が出たのよね」
「メルセデス様とミーガン様、ですね」
「そうそう! 二人も出るのは珍しいんでしょ?」
聖女は毎年現れるわけではない。通常は二、三年に一人の割合だ。アルムの後には聖女が出ていない。キサラ、メルセデスとミーガン、アルムと三年連続で計四人の聖女が出たのはかなり珍しい当たり年が続いたと言える。
「ガードナー殿下は普段は何をしていらっしゃるんですか?」
「うむ。この国の民にあまねく筋肉の偉大さを広めるべく、まずは筋肉を作るための健康な肉体を維持することを目的とした食料計画などを考えている」
「まあ、素晴らしい!」
マリスはアルムとガードナーに交互に声をかけ、明るく話題を振り続ける。
(すごい。社交的な方なんだな)
アルムは自分が誰かをもてなせと言われたら、とても気の利いた会話なんてできそうにない。アルムが提供できる話題なんて、第七王子がパワハラ野郎だということと第五王子は突然求婚してくるから気をつけろということぐらいだ。それはそれで年頃の少女達の興味は引くかもしれないが、もっとこう、話を弾ませるような話題を提供できるようになりたい。
それに、友達になるためにはアルムの方から話しかけなくては。と思うのだが、元気なマリスについていくのが精一杯だ。
「明日はぜひ領民の暮らしを見て回りたい。筋肉のない暮らしをしている者がどれくらいいるか、実際に目で見て確認しなくてはな」
「では、私がご案内しますわ」
ガードナーとマリスが明日の予定を話し出すと、それまで二人の会話を冷や汗を掻いて聞いていたジューゼ伯爵が口を挟んだ。
「で、殿下! 領地を見ていただくのはかまわないのですが、実は最近ここでは瘴気の発生が増えていまして」
「ほう? そうなのか」
ガードナーは首をひねった。
「だが、隣のキラノード領には小神殿があるだろう? 神官が対応しているのではないのか」
「はあ、もちろんですが……神官長が新しくなったばかりなので、手が回っていないのかもしれませんね。キラノード領との間にある南の森付近は瘴気の発生が特に多くて危険なので、近寄らないようにお願いします」
伯爵の言葉尻には妙に力がこもっていた。
瘴気に触れると体力を奪われたり病気になったりするので、心配するのはよくわかる。だが、たとえ瘴気が襲ってきても浄化すればいいだけなので、アルムはあまり気にしなかった。
「大丈夫よ、お父様。私がしっかりご案内するわ」
「お前が……? いいえ、第二王子殿下。我が家の執事に案内させますので」
「いや。アルルもいることだし、マリス嬢に同行願おう。親睦を深めるいい機会だ」
ガードナーの決定に、伯爵は何故か顔を強ばらせ、マリスはにっこりと笑った。
「よろしくね、アルル!」
「あ、はい」
アルムは流されるままに頷いた。
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