番外編2:結菜視点SS「セフレ、スーパーハッカーになる2」

「男の人だもんね。きっとエッチな画像とか隠してあるよ」


 お兄のパソコンの「ピクチャ」フォルダを、あたしは覗いてみた。


 けど「ピクチャ」フォルダには、怪しいフォルダもファイルもない。普通に仕事の画像とか、ネットで拾った笑える猫画像、それにスマホで撮って転送したらしき、風景写真ばっかじゃん。


「こんなんで、スーパーハッカーの目はごまかされないよ……っと」


 怪しいのは、この「TMP」フォルダ。それに「仕事用」フォルダっしょ。どっちも容量すごく大きいし。


 TMPは……っと。ないなあ。普通に一時的に保管して捨てる予定のメモとかセール画像とかだわ。てかお兄、とっとと削除すればいいのに。三年前のセール情報とか残してるから、容量異様に食ってるんじゃん。


「次は仕事用ね」


 表示を「詳細」から「小アイコン」に切り替え、画像のサムネイルを見ながらざくざく掘ってみる。


「うわ……」


 見つけたかも。すごーく階層辿った奥の奥に、謎の「いらんファイル」フォルダがあって、容量が異様に大きい。覗いたら……どえらく肌色の写真とかイラストが並んでるんですけど。


「すごっ!」


 モロじゃん。


 お茶をぐいぐい飲むと、夢中であれこれ見て回った。


「そうかー。お兄、ラブラブエッチのシチュエーションが好きなのかあ……」


 なんとなくわかったわ。なんかエッチな漫画とかも入ってるんだけど、仲のいい恋人達が、とうとう一線を超えて乱れる――みたいなのが多いわ。


「あと日付的に最近取り込んだファイル、女子高生モノが多いなあ……」


 これもしかして、あたしを意識してるのかな。そうだよねお兄、きっとあたしとのエッチを想像して、これ見てるんだよね。……遠慮しないで本物に触ればいいのに。あたし、ずっと待ってるんだからさ。


 よし決めた。今晩は制服着てベッドでお兄待ってよ。帰ってきたらお兄をベッドに誘えばいいよね。お兄が帰ってくるまで、きっとドキドキして眠れないわ、あたし。


 ねえお兄、あたし女子高生だよ。制服着てベッドに潜り込んでるとか、結菜お前、わかってるじゃないか俺の好きなパターン。あっそんなに慌てないで、スカートが皺になる。いいだろ結菜、俺、女子高生が好きなんだ。ああ……お兄……。


「もうこれで決まりじゃん」


 女子高生モノ漫画を漁るのを止めて、実写系の画像をチェックする。


「うわあ、これがサイズMかな」


 さすがにボカシやモザイクが入ってるけど、男の人のアレ、なんとなくサイズがわかる。女の人が顔を寄せて……うわっ引くわあ……。


「お兄のどうだろ。前見た普段のときであのくらいってことは、興奮したらこの人より少しは大きくなる気がするけど……」


 よし。とにかく研究だ。今度ゴム買うとき、間違えないように。それにお兄とアレするとき、どうしたらいいか。心の準備とシミュレーションしとかないと。


 スーパーハッカーは、次々に画像をチェックしていくよー。


 カチカチマウスを鳴らしながら夢中で見てたけど、ふと気づいた。


 ……あれ、あたしなにやってるんだろ。


「もう八時じゃん」


 一時間もエロ画像見てたわ。今日の目的、お兄の好きなエロ探索じゃないよね。


「いかんいかん……」


 名残惜しいが、画像フォルダを閉じた。それによく考えたら、もう起動パスワードわかったし、これからいつでも見られるもんね。慌てることない。


「さて、今度泊まるホテルの予約コーナーを開いて……っと」


 ポチポチ。


「あった。これね。ツインで予約されてる。ここをポチして、部屋タイプ変更画面に。そんで同じ価格のダブルに変更して……っと」


――部屋タイプを変更します。よろしいですか。 はい/いいえ――


「はいっと」ポチ。


 んで、ブラウザのタブ閉じてっと。


「ふふっ。スーパーハッカーに抜かりはないよ、お兄」


 これだけじゃ、お兄に気づかれるからねーっ。


 ブラウザのタブにお兄のメール画面が出てるから、そこに今来た「宿泊予約変更のお知らせ」メールを、削除っと。んで、ゴミ箱からも削除しとく。TMPフォルダすら整理してないお兄だから、メールのゴミ箱なんか見もしないとは思うけどさ。念のためね。


 これで完璧じゃん。あたしこれもう、ロシアのハッカー集団にリクルートされるっしょ。へへっ。


 さて……と。ハッキングは終わったから、もう少しお兄のエッチな画像探索してみようかな。そうだ。どういうパターンがいいのか、画像見ながらノートにメモ取っておこうっと。旅行の予行演習……なんちゃって。


「よし、お兄。伊豆のホテルでラブラブエッチしようね。お兄の好きなパターンの奴、これから全部覚えるからさ」


 結菜、なんでダブルになったんだろうな、今日の部屋。仕方ないよお兄、多分ホテル側のミスだし。まあいいかせっかく旅行で同じベッドだし、Lサイズも持ってきてないみたいだから、子づくり一択だな。お兄、恥ずかしいよ。恥ずかしいもんか、もうふたりとも裸だし、俺の好きなラブラブエッチしよう。えーやだあ……まずお兄があたしのこと優しく触って、それからあたしがお兄のソコ、口で××するんでしょ、で、一回出してから、それからぁ……。なんでそんな詳しく知ってるんだ結菜。いやだなあ、別にお兄の「いらんファイル」フォルダ覗いたわけじゃないし。なら問題ないな、よし始めるぞ結菜。うん……あっお兄、いきなりそんなこと――。


「キャーッなにこれ、めっちゃ恥づ恥づラブラブなんですけどー」


 キャーキャー言うあたしを、例のクマさんがドン引きして見てたわ。なにあんたも参加したいの。なら伊豆旅行、こっそり連れてってあげるね。バッグに入れて。






■ご愛読感謝のおまけエピソード「結菜、スーパーハッカーになる」編は、いかがだったでしょうか。またしても結菜が謎の大活躍w、楽しんで頂けましたか。


結菜、またもや妄想暴走してるぞお前。それに画像フォルダは許してやれ。そこは男に残された最後の楽園なんだ……。


今回のこの話を伏線にすべく、「7-1 海の日。ドライブ。夕焼けの手つなぎ。」と、「7-2 脅迫犯の誘導尋問に引っ掛かる」(https://kakuyomu.jp/works/16816700428652777862/episodes/16816700429408168272)、「6-4 添い寝って安心する」

https://kakuyomu.jp/works/16816700428652777862/episodes/16816927859143778341)を、少し修正しました。気づいた方は笑って頂けるかなと思います。


この結菜視点SS、書いてて楽しいので、また追加するかもです。お楽しみにー。


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