5話 バスケの王子様たちも、ベッドでは可愛い



 あくる日、俺は京櫻けいおう大学という、私立の中でもトップクラスの大学へと運んでいた。


 今日は真琴と五和の所属するバスケチームの、他校との交流試合があるのだ。


 京櫻けいおう大学は何度か来たことがある。


 親父がここに務めているのだ。

 

「たしか体育館って……お、あそこか」


 俺は体育館に行くと……。


「きゃああ♡ 真琴さまぁ……♡」「五和さまぁ……♡」


 大量の女の子達が、黄色い声を上げている。

「なんじゃこりゃ……」


 今日は女子バスケ部の試合のはずだ。


 男子プレイヤーにキャーキャー言うのならわかる。


 だが……なぜ真琴と五和なんだ?


 もうすぐ試合が始まるらしく、チームメイト達と監督が、ミーティングしていた。


「あー! おにーさーん!」


 バスケのベンチから、ぶんぶん、と真琴が手を振っている。


「……真琴さまが笑ってらっしゃる!」「……お兄さんってだれ?」


 じろー……と観客の女子達が俺を見てくる。

 ちょ、ちょっと怖い……。


「お、お兄さんです」


 兄ってことにしておこう。

 なんかこわいし。


「なんだぁ」「真琴さまのお兄様か!」「なるほどぉ!」


 女子達に聞いたところによると、真琴と五和は大人気らしい。


「それでは羽瀬田わせだ京櫻けいおう、春の交流試合を始めます!」


 審判がそう言う。


 コート中央には、真琴、そして五和の姿があった。


 ふたりが言うには、1年生のレギュラーは真琴達だけらしい。


 五和が中央のコートに立って、ジャンプボールをする。


 ボールがティップされ……試合が開始。


 たんっ……! と五和が軽やかに飛ぶ。


「「「たかぁあああああい!」」」


「やべ……高すぎだろ……」


 長い手足にくわえて、あり得ないほどの跳躍をする五和。


 ボールをつかむと同時に、ぶんっ……! と放り投げる。


「ないすぱーす!」


 真琴はツバメかと思うくらいの早さで走り、パスを受け取ると、そのまま飛ぶ……!


 だんっ……! がしゃんっ!


 ボールをリングに、たたき込んだ真琴は、軽やかに着地。


「「「きゃぁああああああああ♡ 真琴さまぁああああああああああ♡」」」


 なるほど……あれだけ華麗なプレイを見せられれば、女子達が魅了されるのも当然か。


 今度は真琴達のチームがディフェンスになる。


 五和が中央に立って手を伸ばす。


「くそ! 隙がない……!」


 闇雲に出したパスを、五和がカット。


「マコ……!」

「あいさー!」


 すでに真琴は走り出していた。

 五和がボールをカットする前からスタートを切っていたのだ。


「止めろ! またあいつのダンクが来るぞぉ!!」


 敵がいっせいに真琴に追随する。


 あんだけ派手に決めたら、そりゃマークされて当然だな。


 だが……それは悪手だぜ。


「いっちゃん!」

「うん!」


 真琴が敵をひきつけて、逆サイドに向かって鋭いパスを放つ。


 五和が3ポイントラインのところでパスを受ける。


「ほっとけ! あんなデカぶつ、でかいだけだ!」


 敵チームの女子が叫ぶ。


 にや……と真琴が笑った。


「いつの話してるの、きみら?」


 五和はぐっ、と身をかがめて、シュートを放つ。


 綺麗な弧を描いて、リングをくぐり抜けた。

 パシュッ……!


「「「きゃぁあああああああああああああああああああ♡ 五和さまぁあああああああああああああ!」」」


 華麗に3ポイントシュートを決めた五和に、真琴がグッ、と親指を立てる。


「うそだろ……あの高身長で、3ポイントまで決めるのかよ……」


「ダンク女といい、ばけもんぞろいだ……」


 戦慄する相手チーム。


 その後も真琴と五和のコンビネーションを止めることは出来ず……。


 結局、3倍くらいのスコアの差をつけて、真琴達のチームが勝利した。


「「きゃあああああああ♡ 真琴さまぁ♡ 五和さまぁああああああああ♡」」


 試合が終わると同時に、客が真琴達に押し寄せる。


 ま、人気者ですこと。


「おにーさーん!」「貴樹たかきさん!」


 五和と真琴が笑顔で俺に近づいてくる。


 女子達の群れをかき分けて、抱きついてきた。


「どうどう、ぼくどうだった?」

「おう、すげえ」


 五和が少しためらいがちに、けれど、勇気を出したみたいに、くっついてくる。


「……貴樹たかきさん、私は?」

「おう、最高だった」


「「えへへ~♡」」


 ……さて、二人が無邪気に笑う一方で、女子達から、刺すような視線を受ける。


「……本当に兄なの?」「……ちがうんじゃない」「……王子様たちが、あんなふうにデレデレしてるなんて」


 ……やべえ、こわ。


「い、移動しましょうか」

「「おー♡」」


    ★


 その後、俺たちは自宅へと帰る。


 帰ると同時に真琴が服を脱いで抱きついてきた。


「……もう……だめぇ……♡」


 くたぁ……と真琴が俺の腹の上で、力を抜いて倒れる。


 その隣にでは五和が、肩で息をしながら、仰向けに寝ていた。


「しゅき~……♡ おにいさん……すき~♡」


 脱力しきった真琴が、俺にキスを浴びせながら言う。


「へばるの早すぎないか? 体育館じゃ、あんなに飛び跳ねても元気だったのに、ふたりとも」


「そりゃあ……お兄さんが上手すぎるんだもん。ね、いっちゃん?」


 こくこく……と五和が倒れたままうなずく。

「すぐぼくらをあんあん言わせるんだもん」


「……貴樹たかきさん、体力もあるし、私たちの弱点知り尽くしてるし、とっても上手です」


「いやまあ、あんだけやりまくればな……」


 ほぼ毎日……というか、毎日複数の嫁とやりまくってりゃ、そりゃいやでも技術が上達するってもんだ。


「コートの上の王子様も、お兄さんの上じゃ誰も勝てない……。はっ! お兄さんはベッドの王子様だ!」


 真琴が眼をキラキラさせながら言う。


「やめてそれ、なんか嫌……。なあ五和、おまえも嫌だろ?」


 すると五和は、にっ、と笑って言う。


「……マコ、それ。いいね。貴樹さんはベッドにて最強」


「五和……おまえなぁ……」


「……冗談です♡」


 五和は昔、不器用で、ちょっと固いところのある子だった。


 でも今は……真琴と過ごした影響か、すごく柔らかくなっている気がする。


 冗談も言うようになったしな。


 それに真琴と毎日バスケの練習をしてた影響で、ものすごくバスケが上達していた。


 もう、背が高いだけの女の子じゃないんだ。

「五和が変わったのも、真琴のおかげだな。真琴さまさまだな」


 すると五和は笑顔で首を振る。


「……違います。貴樹たかきさんがいたからです」


「俺?」


「……はい。フラれたあとも、あなたが、変わらず接してくれててくれたから。変わらず笑ってくれたから、頑張れたんです。あなたのおかげです」


 五和は体を起こすと……ちゅっ♡ と俺にキスをしてくる。


「そりゃ……良かった」

「そうだよ! お兄さんのおかげで、いっちゃんは笑顔が素敵なスーパーバスケ女子になったんだから!」


 ふふ……と五和が笑う。


「マコはウルトラバスケ女子だけどね」


「ねー!」


 二人は高校時代から今日までずっと仲が良い。


 一度大きくケンカしたらしいが、それもあってか、二人の絆は固い。


「次は3人でやろー! さんぴーさんぴー!」


「おまえなぁ……ちょっとは慎みってもんを……」


「……貴樹たかきさん♡ ご奉仕、しますね♡」


「五和ぁ……」


 ……ふたりが俺の前に跪いて、ふたりで仲良く、俺のものをなめる。


 まあ……仲いいことは、いいことだな。

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