番外編 しあわせなハーレム新婚生活

1話 真琴、19歳




 岡谷おかや 真琴。

 今年で19歳になる。


 父親が盲腸で倒れてから、3年後。

 季節は春で、今は夜。


「……マコ、おまたせ」

「いっちゃん! おそいよー」


 真琴がいるのは、大学の駅の最寄り駅。


 改札の前で待っていると、五和がこちらにかけた。


 贄川にえかわ 五和。

 真琴の一番の親友である。


「……ごめん、あまりにもしつこくって、誘いが」


「あー、いっちゃん美人だからねえ、わかるわかる」


 五和は高校の時ときから美人であったが、今は更に綺麗になっていた。


 薄かった胸も、気づけばDカップにまで成長している。


「やっぱ恋すると女は美人になるんだねぇい」

「……そ、そうかも。マコは、この3年で、前よりもっともっと美人になったし」


「え~♡ ほんと~♡ ありがとー!」


 真琴もまた外見に変化が見られる。

 胸が大きくなったこともそうだが、顔つきも少し大人び、さらに化粧をするようになったことで、凄まじい美人になった。


 改札を横切るサラリーマン達、10人が10人、真琴を振り返るほど。


「じゃ、帰ろっか。我が家に」

「……そうだね、我が家に」


 真琴と五和は仲良く手をつないで改札をくぐり抜ける。


 キヨスクの売店に新聞が指してある。


【開田総理 新法案ついに施行】


 と書いてあった。

 刺さってる新聞すべて、見出しには開田総理が作った、新たな法律についての話題ばかりが書いてある。


「大学ってもっとこーしょーなとこだと思ってたけど、なんか飲み会とかナンパとかばっっかりで、俗っぽいね」


「……まあ、大学生だし、そんなものじゃない? みんな彼氏彼女がほしいんだよ」


 真琴と五和は同じ大学に、スポーツ推薦で入学した。


 京櫻けいおうという、一流大学である。

 羽瀬田わせだと対をなす、日本の私大で2トップの大学だ。


 もちろん二人はバスケをやるためにここに来ている。


「ぼくらには全く関係ありませんな。ね?」


 真琴の左手の薬指には、薮原やぶはらからもらった指輪がはまってる。


「……そうだね」


 そして、五和の左手の薬指にもまた、指輪が。


 ややあって。

 二人は帰路につく。


 薮原やぶはらと【かつて】住んでいた街ではある。


 だがあのマンションとは、別方向へと進んでいく。


 ほどなくして、二人は高層マンションへと到着した。


 一階がまるまる、ショッピングモールになっている、巨大なマンションである。


「……ほんとに、今日からここに住むで、いいだよね?」


「うん。けど……でっかいねえ、改めてみると、このマンション」


「……なんか有名人が住んでるらしいよ。アリッサ・洗馬せばって」


 アリッサ・洗馬とは、世界的有名歌手のこと。


 日本で彼女の名前を知らないひとがいないくらい、有名な歌手である。


「マジ!? すっごー……。そんなマンションに住めるなんて、やっぱりお兄さんはすごい!」


「……まあ、あと国から補助金もたっぷりでたみたいだしね。住宅補助とか、税金も免除されるって」


「ふぇー……詳しいね」

「……マコ、新聞、少しは読もうね」


 ふたりは高級マンションのエレベーターに乗る。


 そして……到着。


 マンションのドアの前までやってきた。


 がちゃり……とドアを開ける。


「あ! ふたりともお帰りなさい!」


 真琴達を出迎えたのは、薮原やぶはらの後輩である……安茂里あもり ひなだった。


「うん、ただいまひなさん」

「……ただいま。引っ越しすみません、手伝えなくって」


 ひなが笑顔で首を振る。


「いいのよ! だって大学の入学式だったものね! ささ、入って! もう荷ほどきは終わってるよー! せんぱーい!」


 真琴は五和とともに、ひなの後を着いてくる。


「……3年前は、あり得ない光景だね」

「そうだねぇ。まさか……こんなことになるなんて……」


 真琴がリビングへ行くと、そこには……。


「あ、おかえりーん。真琴ちゃん、五和ちゃん♡」


 薮原やぶはらの先輩、アンナ・塩渕しおぶち


 そして……。


「……お疲れ様、マコちゃん、イツワちゃん」


 薮原やぶはらの叔母である、桔梗ヶ原ききょうがはら 千冬までもが、薮原やぶはらの新居にいる。


 真琴は目を閉じて、ふぅ……と息をつく。


「あー……うん、どうしてこうなった……」


 これは、真琴が薮原と再会してから3年後の物語。


 この世界ではすでに、一夫多妻という壁は取り払われている。


 一人の男に、複数の女が関係を持っても、問題ない世界。


 そんな世界の、物語。

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