84話 えっちな嫁とコスチュームプレイ



 五和いつわちゃんとの出来事を終えて、俺たちの絆は、さらに深まった。


 その終末。土曜日。


「うーん……」


 俺はベッドに横になっていた。

 朝からなんとなく動く気になれない……。


「五月病かな?」

「おにーさーん! 朝だぜー!」


 エプロン姿の真琴がちょこちょこと近づいてくる。


「早く起きて、ごはんだよぅ!」

「うーん……」


「どうしたの?」

「なんか朝からだるくてな……」


 真琴がふむ、とうなずく。


「五月病では?」

「それなー」


「じゃあやる気が出るように、ぼくとエッチしようっ♡」


「うーん……」


 昨日の晩もたっぷり搾り取られたあとだからな……。


「なぬ! お兄さんがえっちに反応しない……これは……たいへんだー!」


 真琴がドタバタと走ってどこかへ行ってしまう。


 ほどなくして、寝室のドアが開いた。


「ぼくの患者は、ここか……!」

「おま……なんだそのかっこう……?」


 そこにいたのは、女医の格好をした真琴だ。

 だて眼鏡。髪の毛は一つに結んで、肩の前から垂らしている。


 白衣にタイトなミニスカート。

 そして黒ストッキング……。


 おっぱいで白衣がはち切れそうになっている。


 健康的な太ももを包むストッキングは、むちっとしている。


「主治医の岡谷おかやです。ここに患者がいると聞いてやってきたのです」

 

 くいっ、と真琴がだて眼鏡を持ち上げる。


 ははん、なるほど。


「そういうプレイか」

「そういうプレイです♡」


 完璧に把握した。

 ようするにじゃれつきたいらしい。


 俺がやる気ないとか言っていたから、気分を変えるためのコスチュームプレイってことか。


「お兄さんくん、診察を始めます。はい、体を起こして」


「はい岡谷おかやせんせい」


 俺がベッドに腰を下ろすと、真琴先生が椅子を持ってきて、俺の前に座る。


「今日はどうしたのかなっ?」


「最近何をするにも無気力で……」


「ほほう、無気力ねぇ~」


「はい。嫁からのエッチの誘いにも断ってしまって」


「それは奥さん、心配してらしたでしょうっ」


 奥さんって、そりゃ目の前のいるおまえだよ。


 まあでもそういうプレイだもんな。

 真琴先生と真琴は別人って設定らしい。


「ではまず問診から始めます。最近えっちしたのはいつですか?」


「なんだその質問……」


「これは医療に必要な質問なんですー! 真面目に答えてくださいっ!」


 はいはい。


「最近だと昨日ですね。夜から明け方まで」


「なるほど、それはやりまくりですね」


「嫁さんがドすけべなんで」


「女性は男性よりドすけべな生き物なんです。甘んじて旦那さんは受け入れましょう」


 どやぁ、と真琴が笑う。


 まあこいつの性欲やばいからな……。


「何回やりましたか?」

「休憩を入れながらですが7,8回ですかね」


「なるほど、よほど旦那さんは性欲がたまっている……と」


「いや奥さんが寝かしてくれないんです。なんども疲れ果てて倒れようとしても、無理矢理元気にしてくるんで……」


「なるほど奥さんは床上手と……」


「はい、それはもうかなりの。どこで勉強してるのでしょうか?」


「医療に関係ないご質問はお控えください」


 今の今まで医療にまったく関係ないご質問なんですがそれは……。


「なるほど……次は実際の診察に移ります。服をめくってください」


 俺は上着をがばっ、とあげる。


「では心臓の鼓動を確かめますね」


 真琴は聴診器を持っていない。

 どうするんだろうか……。


「では失礼、ぴとー」


 真琴が俺の胸板に耳を当ててきた。


「先生、直でわかるもんですか?」

「ご心配なく、プロですから」


 ふむふむ……と真琴がうなずいている。


 女医姿の真琴は、非情に新鮮だ。


 まず眼鏡かけてる時点で何倍も美しく見える。


 髪型もいつもと違っててチャーミングだ。


 しかも肌にぴったりくっついているので、太ももとか胸とかが当たって気持ちが良い。


「どきどきしてますね」


「ああ、かなり。先生が魅力的だから」


「浮気は感心しませんね。奥さんが知ったらどうなると思います?」


「お猿さんになって襲いかかってきますね。だいぶヤキモチ焼きなんで」


「女性は男を独占したいものです。甘んじて受け入れましょう」


 聴診を終えた真琴は、ふむ……と神妙な顔つきでうなずく。


「次は触診です」

「触診ですか」


「はい触診です」

「何を触るんですか?」


「ナニを少々」


 ここはどこぞのイメクラですか?


「いやちょっとさすがに……」

「健康チェックなんです。必要なことなんです。はいベッドに横になってください」


 普通に考えて恥ずかしいんだが……。


 しかし真琴がわくわくした目で俺を見ている。


 ったく、しょうがねえなぁ~。


「医療行為だもんな」

「ええ、医療行為ですので」


 俺はズボンを脱いでベッドに横になる。

 真琴が神妙な顔つきで、ぺたぺたと触ってきた。


 つ、冷たい……それに、くすぐったい……。

「ふむ。形、大きさといい健康的ですね」

「そりゃどうも」


「なかなかの名器。さぞたくさんの女を泣かしてきたことでしょう」


「残念ながら使ったことのあるのは奥さんだけで、彼女をヒンヒン言わせてるだけに使ってます」


「なるほど、理想的な旦那さんですね」

「どうも」


 ……め、めっちゃはずい。

 てか普通に股間が熱くなってきた。


「着衣を治して座ってください。診察結果をお伝えします」


 俺はズボンをはいて真琴の隣に座る。


「先生、俺は何の病気なんでしょう?」

「はい……それは、【嫁いちゃいちゃ不足症候群】です!」


 見た目だけ賢そうなのに、馬鹿みたいなネーミングの病気を出してきたな……。


「よ、嫁イチャイチャ不足症候群? なんですか先生、聞いたことありません」


「嫁とのイチャイチャがたりなくなったときになるやつです」


「そんな……まだ足りませんか、イチャイチャが」


「ええ、十分なイチャイチャが必要です。さもないと死んでしまうでしょう……」


「まじか……それは困る……」


 こほん、と女医姿真琴さんが、すました顔で言う。


「早急に治療が必要です。まずは、おちゅーしゃしましょう」


「了解だ先生」


 真琴が笑うと、がばっ! と俺に飛びついてくる。


 唇を俺に重ねて、むさぼるように、キスをしてきた。


「んちゅ♡ ちゅぷ……♡ んっ♡ ちゅく……♡ ちゅる……♡ んちゅ……♡ ちゅ……っ♡ ぢゅ……♡ んぅ……♡ ちゅ……♡」


 餓狼が肉に食いつく勢いで、真琴が俺にキスをする。


 だが俺もまた自然と真琴に、熱いキスで返していた。


 ぷは……と真琴が唇を離す。


「注射じゃなかったのか?」

「お、ちゅー、しゃ♡」


「なるほど……これは効果てきめんだわ」

「みたいだね~♡ うん、元気元気♡」


 真琴が俺の股間を見てにっこりと笑う。


「演技ほら演技」

「おっとっと……。こほん、お兄ちゃんさん、ちゅーしゃだけじゃたりないようです」


「なん……だと……まだ足りないですか?」

「ええ。どうやら末期みたいです。これは手術が必要かと」


「マジか先生。是非お願いします」

「わかりました。では服を脱いで、ベッドに横になってください」


 俺が普通に服を脱いでベッドに横になる。

 

 真琴は女医の服装のまま、俺の腹の上にまたがってきた。


 自分でストッキングをやぶきながら、目を♡にして言う。


「では……まず、ここに、えっちなお注射……してください♡」


 ……その後の記憶はない。


 俺も真琴も我を忘れて、ベッドの上でいちゃいちゃしまくった。


 気づいたら夜になっていた。


「一日中やってしもうた……」

「あー! すっきりした~!」


 全裸の真琴が隣でニコニコしてる。


「お兄さんやばかったよ、もうギンギンだったね♡」


「てか、普通コスチュームプレイだったな」


「倦怠期によくやるやつだね」


「それなー」


 ぐしょぬれになった女医の服を指さす。


「あれどうしたんだ?」

「ドンキで買ってきた♡ 倦怠期のコスプレエッチコーナーに置いてあったよ」


「やっぱりコスプレエッチだったよなぁ」

「こすぷれえっちだったねぇい♡」


「今思い返すと、なんともアホなやり取りをしていたな」


 俺たちは顔を見合わせて、くすくすと笑う。

「元気出た?」

「めっちゃ出た」


 今朝はなんとなくやる気がでてないかった。

 しかし……今は体にやる気が満ちてる。

 あれだけやっても、まだ気力が沸いてくる。


「お兄さんやばいくらい興奮してたよ」

「嫁さんが床上手すぎてな」


「ふっふーん、旦那さんの性欲コントロールも、嫁さんのお仕事だからね~♡」


 そんなふうに、土曜日の夜はまったりすぎていった。


 ま、たまにはこういう日も悪くない。

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