75話 ジェンガ対決、甘い罠



 俺たちは罰ゲームをかけて、ジェンガ対決をすることになった。


 リビングのこたつテーブルを囲っている。


「ところでお兄さん、ジェンガ対決のルールなんだけどさー」


 ジェンガのピースを積みながら、真琴が聞いてくる。


「やっちゃ駄目な行為ってなにかな?」

「そりゃ、机を揺らすとか、手番が回ってきてる人の体に触れる……とかかな」


 ほうほう、と真琴がうなずく。


「じゃー、机を揺らしたり、手番である人に触れたりしなかったら、何してもいいんだねー?」


 言い方が気になるが……。


「まあそうだな」

「んふふ~♡ いっちゃんいっちゃん、ちょいとご相談が」


「……なに?」


 真琴と五和ちゃんがぼしょぼしょ、と何かを耳打ちしてる。


「!」


 五和ちゃんが目をむいている。


「……い、いいのかな?」

「……でも、いっちゃんも欲しいんでしょ?」


「……う、うん」

「……じゃ、そゆことでー♡」


 よし、と真琴がうなずく。


「準備かんりょー! じゃ、勝負をはじめよう! 正々堂々とね!」


 罰ゲームとして、【何でも言うことをきかせる】権をかけて、勝負がスタートした。


「それじゃぼくから……とりゃ!」


 真琴がピースを危なげなく回収。


 次は五和ちゃんの番になる。


「…………」


 最初の頃と違って、五和ちゃんはスムーズにピースを回収した。


 うん、上達してるな。


「よし、俺の番な」


 さてどこから取ろうかな……としていたそのときだ。


「うーん、暑いな~。脱いじゃおっかな♡」


「なっ!?」


 真琴がシャツに手をかけて、脱ごうとする。

「お、おま! ばか! 五和ちゃんいるだろ!」


「およよ? お兄さーん、勝負の途中ですよー?」


 ニヤニヤと笑う真琴。

 その間にも、シャツを脱ごうとする……。


「あんま時間かけてちゃだめだよ~。公式ルールだと、10秒以内に取らないと~♡」


「くっ……!」


 俺はジェンガに集中したい。

 だが真琴が脱ぎ脱ぎし出す。


 くっ! 普段は見慣れてる真琴の裸……だが。

 

 となりに第三者がいると、はずい……!


「こ、れを取る……!」


 なんとか回収し終えた。

 ほっとする俺……。


「ちぇー、まー最初はこんなもんか」


 ぱっ、と真琴がシャツを戻す。


 2巡目。俺の手番になる。


「ねーいっちゃん、暑いよね~」

「……そ、そうだね、マコ」


 また真琴が、俺の番になって変なことをし出す。


「脱いじゃお♡」

「なっ!? おま……五和ちゃんになんてことを!?」


「ほらほらー、集中集中♡」


 くっ……!

 集中だと……そんなこと……。


「……ま、マコ。やっぱり脱ぐのは……恥ずかしいよ」


「大丈夫大丈夫! お兄さんはジェンガに集中してるから! ほらほら、脱ぎ脱ぎしましょうね~♡」


 俺はジェンガのタワーを注視する。


 ジェンガに集中……。


「……ま、マコっ。ひゃっ♡ だめだって♡」


「ぬふふ~♡ よいではないかよいではないか~。ぬぎぬぎ~」


「……だめだって! やっ! 見られちゃうから! だめだってば!」


 ああああああああ。

 集中できない!


 え、どうなってるの? ねえ!?


「はいボタンぬぎぬぎ~。シャツぬぎぬぎ~


「……マコやめ……んっ♡ やぁ♡」


 駄目だ、ふたりが何をしてるのか……めっちゃ気になる。


 俺は早々にジェンガのピースを回収し、塔の上に乗っける。


「お、終わった……」


「ぬふふ~♡ なかなか崩れませんな~お兄さんの理性」


 いやもう結構やばかったけどね!?


 ちら……と五和ちゃんを見やる。


「…………」


 彼女は顔を真っ赤にしながら、あせあせと、ボタンをとめていた。


 ……見れなかったな。


「お兄さん、がっかりしてる~?」


 じとーっ、と真琴が俺を見てくる。


「いっちゃんのあられもない姿、見れなくて残念?」


「あ、あほぉ! そんなの……別に……なぁ?」


 にまにま笑いながら真琴がピースを回収。


 ようやくわかった……。


「真琴おまえ、五和ちゃんと結託して、俺の邪魔してるだろ!?」


「えー、気づくのおそくなーい?」


 やっぱりか!


 てか、え……? 五和ちゃんも協力してるのってマジ……?


「……ご、ごめんなさい」


「あ、いや……別に。悪いのはアホな提案した真琴だし」


 ……でも意外だった。


 五和ちゃんはこういうずるとか許さないタイプだと思っていた。


 真っ先に止めるかと。


「……ごめんなさい。でも、勝ちたい、んです」


 五和ちゃんが真面目な顔でピースを回収する。


 まあ、勝負事って、勝ちたいよね基本的には。


「ほいお兄さんの番~♡」


 くっ……! こうなったらスピード勝負!

 

 邪魔される前にピースを回収するんだ!


「いーっちゃん♡ お胸もませて~♡」


「なっ!? む、胸をだと!?」


 ちら、と見る。

 真琴が五和ちゃんににじり寄っている。

 手をわきわきしながら、笑いながら。


「……ま、マコ!? さすがにそれはやり過ぎ……!?」


「よいではないかー! とりゃー!」


 どたんっ!


「……やっ♡ だめっ♡ んぅ♡ やぁ♡」


 どたん! ばたん!


「ほうほう、なかなかのもみ心地……お兄さん! 結構あるよ!」


「何の実況しとるんじゃ貴様!」


 たぶん五和ちゃんのおっぱいのことだろうけど!?


 でも、駄目だ。集中だ。

 いやでも……。


「もみもみ~♡」

「……あっ、あっ♡ だめだって……ん゛っ♡ んぁっ♡」


「おやおや~? ちょっと立ってきましたよ~? 女の子同士なのに興奮しちゃうのかな~?」


「……やぁ♡ 見ないで~♡」


 ……見たいぃいいいい!


 女子高生がふたりでくんずほぐれずしてるんだぞ!?


 え、今どういう状態!?

 服の状態とか気になるんだが……!?


「お兄さんあと3秒~」


「グッ……!」


 ピースを選んでなんかいられない。

 ここは目についたピースを回収して……よし!


「取れた!」


「まだだよ~。乗っけるまでがジェンガだからねー!」


 確かに……だがこれでもう難所は突破した。

 後乗っけるだけなんて、簡単だぜ!

 もらった!


「もみもみ~……あ、やべ……きゃっ!」


 どたんっ! ……と強く何かが落ちる音。


「お、おいだいじょ……ぶっ!?」


 真琴が、五和ちゃんの上にのしかかっている。


 着衣が乱れている。


 そして、ふたりともスカートが完全にめくれていた。


 上に乗っている真琴は言うにおよばず、下になってる五和ちゃんも。


 五和ちゃんはM字に開脚して、真っ白な下着が……俺の前にさらされる。


「な、何やってるんだ真琴ぉおおおおお!」


 がしゃんっ!


「あ」


「はいぼくらの勝ちー!」


 真琴が五和ちゃんの上からどく。


「いえーい! お兄さん何でも言うこと聞かせる権げっとだぜー! やったねいっちゃん」


「……マコぉ~」


 ふるふると肩をふるわせながら、五和ちゃんが彼女を押しのける。


「……なんてことするの! ばかっ! もうっ! 死ぬほど恥ずかしかったんだからね!」


 こちょこちょ、と五和ちゃんが真琴をくすぐる。


「ご、ごめんってば! きゃははっ! ごめんよぉういっちゃーん!」


「……許さない! ほら、ほら、どうだっ!」


 真琴が組み敷かれて、くすぐられている。


 さっきまで攻めだった真琴が、一転してやられてる……。


「きゃっ♡ くすぐ……んっ♡ あっ♡ あっ♡ だめっ♡ 頭真っ白になっちゃうよぉ♡ あっ、あっ、ああっ♡」


 ……な、なんだろう、エロい。


 ほどなくして、五和ちゃんが真琴を解放。


「も、もぉらめぇ~……♡」


 真琴は白目をむいて仰向けに倒れている。


「……ごめんなさい」


「あ、いや。別に君が謝る必要ないでしょ。悪いのはそこのアホだし」


「あほゆーなぁー……」


 崩れたジェンガを俺が回収する。


 五和ちゃんが、真面目な顔で言う。


「……勝ち、ましたよね」


「ん。そうだね。まー手段はあれだったけど」


「……なら、その……いい、ですか?」


 何でも言うこと聞く権のことだろう。


「うん、いいよ」


「~~~~~~!」


 五和ちゃんが目を大きくむいて、口元を緩ませる。


「よっしゃぁ……!」


 おしとやかな彼女にしては珍しく、大きな声でそういって、ガッツポーズを取る。


 だがすぐに正気に戻ると、肩をすぼめて申し訳なさそうにする。


「……ご、ごめんなさい」

「いやいいって……でも、ふふっ」


 俺は思い返して笑ってしまう。


「結構やんちゃなとこあるのな、五和ちゃんって」


 彼女は耳の先まで真っ赤にすると、うつむいてもじもじし出す。


 まあなんだかんだあったけど、楽しかったな。


 

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