61話 誕プレデート、ストーキング嫁
真琴は部活をサボって、彼らのデートを追跡することにした。
「見極めてやる……マジのデートなのかどうかをなっ!」
じーっ、と後ろから熱い視線を送る真琴。
「ま、で、でもっ! ぼくとお兄さんの絆は、そう簡単にゆらいだりしないんだもんねー!」
ふふーん、と真琴が胸を張る。
「どーせただ買い物に付き合ってるだけにきまってる! そーにきまってる!」
と思っていたのだが……。
「ぴぇーーーーーーーーー!」
真琴が奇声を発する。
千冬が興味を抱き、
一口どうぞ、とばかりに千冬がタピオカドリンクを渡す。
「そ、そそ、そんなぁ……! 飲み物をシェアするだってぇーーーーーーー!」
真琴も何度か
だが、愛する女以外と、
「お、お、おち、おちけつ……じゃなかった、落ち着けぼく。あれはなにかの間違いだ……」
だらだらと汗を垂らす真琴。
目の前の事実を、見たまま受け取ると心がやみそうになる。
「そ、そうだ! 千冬姉さんが買ったドリンクを、まずいからおまえ飲めよって、強要されたんだ! そうに違いないんだぁ!」
……すでに半泣きの真琴。
自分で言ってて、その可能性の低さを自分で理解してる。
「くぬ……くぬぬぅん! お兄さんめぇ~! ぼくの心をもてあそびよってー!」
次に
「お、お洋服……? ま、まあね。女は服が好きだもんね。お兄さんかわいそうに、興味の無いお洋服選びにつきあわされるなんてっ。ぼくならそんなことしないもんっ」
と、二人の様子を見ていたら……。
「なぬぅううううううううううううう!?」
なんと千冬が両手に、ブラを持っていた。
赤いのと黒いのをもって、
「そ、そ、そんなぁ! お兄さんにブラを選ばせてるだってぇ!?」
顔を赤らめる千冬に、気まずそうな
そんな様子を、真琴はうらやましそうに見る。
「くぅ! ぼくだってやったことなかったのに! お兄さんに見てもらう下着、どっちがいい? ってやつー! ぼくやりたかったのにぃ! くやちーーーーーーーーーー!」
……その後も真琴は、
その都度「ひょえ!」だの「ぴぇ!」だの「ひゃー!」だのと、奇声を発する。
そして、真琴は一つの結論にたどり着く。
「どーーーーーーーーーみてもデートです! 本当にありがとうございましたっ!」
真琴達はテラスのハンバーガー屋へとやってる。
ふたりが仲良く食事をする様を……遠くからに見張る真琴。
ぷーーーーーっと、まるで焼いた餅のように、真琴は頬を膨らませる。
「なんだいなんだいっ。結局デートじゃん! なんでぼく以外の女とデートするのさぁあ! お兄さんのあほぉおおおおおお!」
ぱたぱたぱた! と真琴が足をばたつかせる。
そう……ヤキモチを焼いているのだ。
「おのれお兄さんめぇ……どうしてくれよう……後ろからタックルして、テキサスクローバーホールドでもお見舞いしてやる~」
「……じゃあそろそろ、本命いこうか」
「……そうね。店の場所は調べてあるから」
二人が立ち上がって、席を離れる。
「本命……? なんだろう……」
真琴もまた、
やがて……たどり着いたのは、
「ほ、宝石店……?」
ガラス窓の向こうには、きらびやかな宝石が、いくつも並んでいる。
そして……
「!? ゆ、指輪……」
店員が取り出したのは、1組の指輪だった。
がつんっ、と頭を殴られたような、衝撃が走る。
真琴はその場にへたり込んだ。
「指輪……千冬姉さんに送る……指輪……えらんでた……」
じわ……と真琴の瞳に涙が浮かぶ。
指輪を贈るくらい、ふたりは親密な仲だったのだ……。
「そう、だよね……考えてみれば……ぼくは16の子供で、
大きな瞳に、大粒の涙がたまる。
「向こうの方が……きれいだし、包容力もあるし、経済力だって……ぼくじゃ、かなわないもん。負けても……しょうがないよね……」
ふらり、と立ち上がる。
真琴は……
そのまま、その場をあとに……。
「でも……でも!」
真琴はくるんときびすを返して、店のほうを見やる。
だんっ……! と走り出す。
「だからなんだ! ぼくは……ぼくはぁあああああああ!」
以前なら、
だが……嫌だった。
サファリパークで笑ったこと、実家の夜の駅で寄り添ったこと。
そのほか、色んなところへ行き、色んな思いを共有した。
一緒に居て、あんなに楽しい人は居ない。
一緒に居ることが、あんなに幸せに感じる人は、
そうだ、自分は
「おにぃいいいいいさぁああああああああああああああん!」
真琴は宝石店に突撃する。
ちょうど会計を済ませた
「おま……真琴!?」
「……なんで?」
面食らっている千冬の前で、
ぎゅっ、と真琴は
「ぷはっ……! おま……なにしてんだ……?」
真琴はきっ、と千冬をにらみつける。
すぅ……と大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「あげないよ! お兄さんは、ぼくのものだ!」
店中に響き渡るくらいの大声で、真琴は叫ぶ。
「ぼくはお兄さんのこと心から愛してるんだもん! お兄さんを誰かに譲る気は無い! ぼくは……ぼくは! お兄さんの、お嫁さんなんだからーーーーーーーーー!」
……しばし、静寂があった。
店のなかには、
店員も、客も、目を点にしてる。
千冬は……どこかうれしそうで、それでいて、さみしそうに微笑んでいる。
「真琴……」
彼は……あきれたように、溜息をついていた。
「あほだなぁ、おまえ」
「あ、あほとはなにさっ! 浮気してたくせにっ! 千冬姉さんに指輪プレゼントしようとしてたくせに!」
「……おまえのだよ」
「確かにぼくはおっぱいで負けてるけど! 張りで言えばぼくのほうが…………………………え?」
ぽかん……と真琴が口を大きく開く。
はぁ~……と
「あ、あのぉ……今、なんて?」
「だから、この指輪、おまえの」
目を点にする。
そう、
今の
つまり……。
「ぼ、ぼくの……勘違い? 早とちり?」
「で、でも……ふたりで、デートして……」
「……たっくんに頼まれたのよ。マコちゃんの誕生日に指輪送るから、選ぶの手伝って」
「え、ええー……で、でも千冬姉さんは、お兄さんを奪おうってしてたんじゃ……?」
「……私が、あなたたちの幸せの、邪魔をするわけないじゃないの」
千冬があきれたようにつぶやく。
周りを見ると、くすくす……と店員と客が笑っていた。
まるで、微笑ましいものを、見るような目だった。
かぁ~~~~~~~~っと、真琴は顔を真っ赤にした。
「ぴぇえーーーーーーーーーーーー!」
「どうも、お騒がせしました。ほら、真琴。おまえも」
「お、お騒がせ……しました……」
二人そろって頭を下げる。
客も店員も……そして、千冬も、笑っていた。。
真琴の可愛らしい勘違いを、みんな許してくれたのだ。
「ほら真琴、店出るぞ。ついてこい」
「あ、うん……」
ちらっ、と
千冬は何も言わず、ただ静かにうなずいた。
……彼女はただ微笑んで、ふたりを見送った。
その瞳に、涙を溜めて。
涙が頬を伝って、こぼれ落ちてしまってるけども。
二人の幸せを、心から祈りながら、彼女は黙って見送ったのだった。
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