37話 サファリパークでイチャイチャ
ゴールデンウィーク初日。
俺たちは長野の実家へ向かう途中。
「あれ? お兄さん高速道路おりるのー?」
「おう、途中のサファリパークに寄ろうと思ってな」
「さふぁり?」
はて、と
「でっかい動物園だ」
「動物! ぼく動物だいすきー!」
真琴が動物好きなのは承知済みだったので、俺は寄ることを決めていたのだ。
「サファリパークなんてあるの、長野に?」
「いや、群馬にあるんだよ」
「ほぉ! 楽しみ! んふふふふ~♡」
助手席で真琴が、足をぱたつかせる。
「どうした?」
「やー、お兄さん、私が動物好きってこと覚えててくれたのがさ~♡ えへへへ~♡ うれしくって~♡」
「ったりまえだろ。嫁の好みくらい覚えてるさ」
「うむうむ! 旦那のかがみだねぇお兄さんは! 大好きっ! ここが車の中じゃなかったら飛びついてちゅっちゅしてるねー♡」
「くっ、なんで俺は今運転中なんだ」
「向こうに着いたらい~~~~~~っぱいちゅっちゅしてあげる~♡」
そんなこんなで、群馬にあるサファリパークへとやってきた。
車のまま、園内に入ることができるのである。
「へえ! 動物園って言うから、歩いていくのかと思ったよぅ」
「いや食われちまうぞ。虎とかライオンに」
「そのときはお兄さんが守ってくれるって、ぼく信じてるから!」
「俺はそこまで強くない。ほら、いくぞー」
俺は車を運転し、サファリパークのゲートへと向かう。
アーチ状のゲートをくぐると、金網で四方を囲まれたパーク内へと入る。
「おおー! シマウマさんだ! キリンさんもいる~! すげー!」
真琴がべったりと車の窓に顔を貼りつけて、歓声を上げる。
「わ! 近い! すごい! 動物めっちゃ近い~! すげー!」
パーク内を動物たちが歩いている。
車は順路に沿って進んでいく感じだ。
「お兄さん! お猿さんだよ! うわぁ! かわいいな~♡」
猿の親子がちょこちょこ、と道路をよぎっていく。
子供が母親の背中に乗ってるのをみて、真琴がスマホでパシャパシャと写真をとる。
「ぼくも可愛い赤ちゃんほしいな~♡ ちらちら、ほしいな~♡ ちらちら」
真琴が期待のまなざしを俺に向けてくる。
「少なくとも学校卒業するまでなしな」
「むぅ……まあ高校はバスケ頑張りたいから、しょうがない……がまんする!」
真琴はバスケをやるためにわざわざ、東京へ出てきたんだもんな。
車は猿のゾーンを抜けて進んでいく。
大きめの駐車場へとたどり着く。
「ここなに?」
「ウォーキングサファリ。車から降りて、山羊とかアルパカとか見れるとこ」
「アルパカ! 見たい見たい~!」
駐車場に車を止めて、俺たちはゾーンへと向かう。
牧場のような趣の場所だ。
入り口に入るとフラミンゴがお出迎えしてくれる。
「フラミンゴー!」
真琴が片足で立って、ポーズを決める。
可愛いので写真をパシャッと撮る。
「お兄さん動物とってよぅ」
「真琴が可愛くてつい」
「えっへっへ♡ しかたないなぁ~♡ じゃ二人で写真とろー♡」
俺は真琴の隣に立つ。
彼女はスマホを持ち上げて、自撮りする。
「えへへ~♡ お兄さんとの写真でフォルダーを満杯にするぞ~」
真琴と手を組んで、俺たちはウォーキングサファリゾーンを歩く。
ロバやアルパカ、鹿などがいた。
柵で区切られており、動物がでれないようになっている。
本当に牧場みたいな感じ。
「アルパカだ! もふもふだー!」
真琴がアルパカの前で顔を近づける。
「ああ……触りたい……もふもふしたい~……」
「触っちゃ駄目って書いてあるだろ」
「う~……もふりたい……」
「アッチにモルモット触れるとこがあったぞ」
「! それを早くいいたまえー! 案内するのじゃー!」
俺は真琴と手をつないでモルモットコーナーへと向かう。
「きゃぁ~~~~~~~~~♡」
柵で区切られたゾーン内に、ウサギやモルモットが大量に放たれていた。
「お兄さんお兄さん! 天国だ! ここはもふもふパラダイスだよぉう♡」
真琴がモルモットを抱きかかえて、至福の表情を浮かべる。
とろけた笑みを浮かべる真琴がまたかわいらしく、パシャパシャと写真を撮る。
真琴はベンチに座って、モルモットをなでなでする。
「かわえー♡」
「真琴もかわえー」
「も、もうっ、からかわないでよぅ~♡」
えへへ、と照れる真琴がなんとも可愛い。
「モルモットかける真琴。かわいいものを掛け合わせることで、今ココに世界で一番可愛い存在が完成してしまった……」
「や、やぁ~……て、照れるなぁ~……♡」
防御力がゼロの嫁なので、俺が褒めるといちいち照れる。可愛い。
「お兄さんもモルモット抱っこしない?」
「残念だがモルモットよりもっと可愛い真琴のほうを抱っこしたい」
「んも~♡ しょうがないなぁ~♡ んっ♡」
真琴がモルモットを下ろして、俺に両腕を向けてくる。
俺は彼女の隣に座って、ぎゅっと抱きしめる。
「抱き心地は?」
「最の高。モルモットなんて目じゃないな」
ふわふわで、温かい真琴の体は、いつまでだって抱いてられる。
ぎゅっ、と抱きしめると、真琴が小さく体をぴくぴくさせるのが可愛い。
「んー♡」
真琴が笑顔で唇を近づけてくる。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♡ と俺たちはキスをする。
「んも~。お兄さんってば、真っ昼間からお熱いことですな~」
「いやおまえがキスをせがんできたんだろうが」
「えー、ぼくはただ目を閉じて唇を突き出しただけですー。ちゅーしてほしいなんて一言も言ってませーん」
チュッ……♡
「にゃ゛……! ふ、不意打ちにず、ずるいよぉ!」
「おまえの言い分だと別にキス待ちしてなくてもキスしても良いんだろ?」
「そ、そうだけど……もうっ! 準備もなしにちゅーするなんてっ。いじわるなお兄さんには……こうだっ」
ちゅっ、ちゅっ♡
「お返しだ」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♡
「えへへ~……♡ しゃーわせー……♡」
とろけた笑みを浮かべて、真琴が言う。
「「「…………」」」
子供達が、俺たちを見ていた。
「い、い、いこっか!」
「お、おう……」
俺たちはモルモットゾーンから出る。
ロバに餌やったり、鹿にえさやったりする。
「鹿せんべいって……どんな味するんだろー。おいしいのかな?」
ウォーキングサファリで100円で売ってた鹿せんべいを前に、真琴が首をかしげる。
「食うなよ」
「おっけー」
ぱくっ。
「味がしない~」
「食うなよ……」
真琴は鹿せんべいを鹿達に配る。
「きゃははっ♡ 指ペロペロされて……んっ♡ くすぐった~い♡」
真琴の笑顔を見ていると心が洗われる気分になる。
あいつは何をするにしても楽しそうだ。
鹿せんべいを配り終わった後、手を洗いに行く。
「ほら、ハンカチ」
「ありがとー♡」
洗い終わった真琴にハンカチを渡す。
真琴は俺の腕に抱きつく。
「ぼくが動物とばっかり戯れてるから、嫉妬しちゃった~?」
「どうした急に」
「なんかじーっとぼくのこと見てるからさ」
「ああ、いやまあ……楽しそうだなって」
俺たちは歩きながら周りを見渡す。
「そりゃたのしいよ! お兄さんとそばにいるだけで……ぼくは幸せだもん」
きゅーっ、と真琴が俺の腕にだきついて、とろけた笑みを浮かべる。
「お兄さんがいれば、ほかに何もいらないもん」
「真琴……」
なんて可愛いい嫁なんだろう。
俺は真琴をぎゅっ、と抱きしめる。
彼女の良い香りが鼻腔をくすぐり、柔らかな体の感触が俺に安らぎを与える。
ぽんぽん……と真琴が俺の背中を優しくなでる。
「ほらほら、お兄さん。突っ立ってるとジャマだよ~。車戻ろっか♡」
「そうだな」
俺たちはウォーキングサファリを堪能した後、車に戻って、園内をまた見て回る。
「うぉー! ライオンー! かぁっこいー!」
寝そべっている雄ライオンを見て、真琴が目をキラキラさせる。
「がおー! がおー! どうどう、勇ましい?」
「いやめっちゃ可愛い」
「えへへ~♡ がおー♡ 食べちゃうぞ~♡ 性的に!」
「なるほど真琴は雌ライオンでしたか。だから夜はあんな肉食になるのですねわかります」
「そうだよっ。真琴ちゃんはにくしょくじゅーなのだー! お兄さんパクパクしちゃうんだぞーがおー♡」
ライオンのまねしてる真琴がかわいらしくて、俺はほっこりする。
まあ冗談抜きで夜のこいつは、無尽蔵の体力で俺からいろいろ絞っていくからな。
本当に肉食獣だと思う。
ライオンゾーンを抜けた後……車はゲートをくぐって出入り口へと戻ってきた。
「あーあ、もー帰ってきちゃった~」
「ご満足いただけました?」
「うん! 超! たのしかった! 写真もいーっぱい取れたしねー♡」
えへへへっ、と真琴がスマホを操作し、アルバムを見返している。
「ミーアキャットちょーかわいかった~♡ 小柄でちょこちょこしてて……ん~♡」
「いや、真琴のほうが小柄でちょこちょこしてて可愛い」
「んも~♡ 張り合うなよ~♡ えへへっ」
真琴の幸せそうな笑顔を見れたので、ココへよって良かったなって思う。
「トイレ休憩したら、いよいよ長野に向かうぞ」
「おー!」
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