31話 奥さんとの甘々な新生活



 4月の第一月曜日。


 朝。俺は、すっきりと目を覚ます。


 これも真琴による、ぬくぬくの嫁布団のおかげだろう。


「真琴……真琴……あれ? いない……?」


 ぼんやりと目を覚ますも、彼女の姿が無い。


 あの柔らかく、温かな布団がないだけで、俺の体は眠気をあっさりと手放した。


「おおー……い真琴ぉ~……。どこだよー……」


「はいはい、ここにいますよーっと」


 彼女がひょっこりと、俺のことをのぞき込む。


 そこに居たのは……高校の制服を身にまとった、世界一可愛い俺の嫁だ。


「おはよーの、ちゅーだよ♡ ん~♡」


 俺たちは朝から口づけを交わす。


 砂糖菓子よりもなお甘く、ゼリーよりもみずみずしく、プリンよりも柔らかく……。


 この春の日差しよりも、温かな……彼女の唇。


「んちゅ……♡ んぅ……♡ ん……♡ ちゅぷ……」


 俺たちは1分、じっくりとお互いにキスをする。


 彼女は顔を離して、笑みを浮かべる。


「おはよ、お兄さん♡」

「ああ、おはよう、真琴」


 朝から彼女の笑顔を見るだけで、元気100倍なのに、真琴のキスが底へ加わることで元気1000倍だ。


「こっちも元気だね~♡」


 膨れ上がった俺の股間を見て、ぺろん……と手でなでる。


「そりゃね」


「んも~♡ お兄さんってばエッチ大好き人間なんだから~♡」


「バカいえ。エッチ大好き人間はおまえだろうが。このどすけべ性欲魔人め」


「ち、ちがうもん! 私スケベじゃないもーん!」


「えー、どうだかな」


 昨日は凄かった。真琴が離してくれなかったのだ。


 さすがスポーツ美少女。

 体力有り余りすぎてる。


 気づけば日曜日すっ飛ばして月曜日になっていた。


「もうっ、お兄さんのばかっ。お嫁さんいじめる悪い旦那さんだっ」


 そっぽ向いて、ベッドに座り込む。


 俺は後ろから真琴を抱きしめる。


「あっ♡」

「うーん……やっぱり抱き心地は最高だな」


「ちょ……だめだよぉ~……朝から……あっ」


 俺は後ろから真琴をぎゅーっと抱きしめる。


 くたぁ……と体の力を抜いて、真琴が俺に体重をかけてくる。


「……ねえ、お兄さん。今日……さぼっちゃおっか?」


 熱っぽい瞳で俺を見上げてくる真琴。


「そりゃあかんだろ。おまえ……今日が入学式だろ?」


「ちぇー……そうだけどさ」


 俺は真琴を抱いて、彼女は俺の腕の中でおとなしくしてる。


「……お兄さん、遅刻しちゃうよ?」

「おまえだって、遅刻するぞ」


「私はお兄さんが離してくれないから、動けないんだもん」


「おまえが暖かくて柔らかくて最高の抱き心地なのが悪い」


 俺たちは顔を見合わせて、ちゅっ……とキスをする。


 ぬへへ、と真琴がだらしのない笑みを浮かべる。


「おきよっか♡」

「おうよ」


 俺は立ち上がって、身支度を調える。


 真琴はシャツにスカート、そしてその上からエプロンをつけていた。


 どうやらブレザータイプの制服らしい。


 ひげそって戻ってくると、真琴がキッチンに立っていた。


「おっまたせ~♡」


 真琴がテーブルの上に、美味そうな朝食を並べる。


 俺の前に座り、俺たちは手を合わせる。


「「いただきます」」


 朝食をすませ、手早く後片付けをした後……。


「おーい、真琴~。まだかー?」


 俺は玄関先に立ち、真琴が来るのを待つ。


「ごめんごめーん!」


 とととっ、と真琴が俺の元へかけてくる。


 スカートにブレザー。

 赤いリボンが……とてもキュートだ。


「どう?」

「最高」


「最高~? 足りんな~」

「超ウルトラはいぱー最高」


「よろしい♡」


 真琴がローファーを履いたのを見て、俺たちはマンションの外へ出る。


 ざぁ……と春風とともに、桜の花びらが俺たちの元へやってきた。


「うわぁ……! きれー!」


 マンションの5階から、俺たちは外の景色を見やる。


 風に舞う桜の花びらが、よく晴れた空へと吸い込まれていく。


「真琴さんには、綺麗さで負けてるがな」


「にゃっ……! も、もぉ~! 不意打ちきんし~」


 俺たちは並んでエレベーターに乗る。


 ドアが閉まって、下の階へと向かう。


「今日はね、始業式おわったら、部活あるんだー」


「もうか?」


「うん! 春の関東大会予選が、もうはじまっちゃうんだ」


 バスケの大きな大会があるらしい。


「じゃあ帰りは遅いか?」

「どうかな。帰るときに連絡するね!」


 チン……。


 エレベーターのドアが開いて、それと同時に……。


 ちゅっ……♡


「へへっ♡ 不意打ちのちゅー♡」


 真琴が自分の唇を指で押さえて言う。


「ったく、不意打ち禁止じゃなかったのかよ」


「自分がやる分にはいいんだもーん」


 ちゅっ……。


「に゛ゃー! お兄さん! 不意打ちキスはだめー!」


「自分がやる分にはいいだもん」


「もうっ! えへへっ♡」


 俺は真琴と、自然に手をつなぐ。

 そして、駅へと向かって歩き出す。


「あったかいねー」


「だな。あったかい」


 真琴から伝わってくるぬくもりは、春の容器に負けないくらい温かで、気持ちが良い。


 ずっとこの手を握っていたくて、たまらなくなる……。


 やがて、駅に到着しても、俺は手を離せないでいた。


「お兄さん。電車、逆方向」


「ああ、だがすまん。体が言うことをきいてくれないんだ。おまえを離したくないってさ」


「んも~。しょうがないなぁ~♡」


 真琴は背伸びをして、俺の唇にキスをする。

 朝の通勤に電車を利用する人たちの存在なんて……。


 今の俺たちの目には、写らない。


 お互いに、お互いの姿しか……見えてないから。


「お兄さんに魔法を施しました。これで少しの間、お嫁さんと離れてても大丈夫になったよ。その証拠に……ほら、手離してみて♡」


 俺はあっさりと手を離す。


「おお、本当だ。真琴とつながって無くても平気だ」


「それはそれでなんか嫌だけど……うん。家に帰ったらまた一緒に居てあげるから、しばらく一人でがんばるよーに」


「了解だ」


 真琴が俺を見て笑う。


 俺もまた、笑いかける。


「じゃ、お兄さん……いってきます」

「おうよ。真琴……いってきます」


 だが俺も真琴も立ち止まったまま、お互いを見つめたまま、動けない。


「「いや、動けよ」」


 俺たちは笑い合うと、お互いのもとへ向かって走る。


 抱きついて、キスをして、顔を離す。


 俺たちは手をあげて、ぱんっ、と会わせる。

「「じゃ、またあとで!」」


 俺たちは歩き出す。

 俺は会社へ、真琴は学校へ。


 それぞれの居場所へと、向かう。


 少しの間離れることになるが、大丈夫。


 またすぐ会える。


 俺はエスカレーターに乗って駅のホームへと立つ。


「おにーーーーさーーーーーーーーーん!」


 反対側のホームに、愛すべき嫁が、笑顔で手を振っていた。


「大好きーーーーーーーーーーーーー!」


 ったく、あいつめ。

 周り見てみろ。びっくりしてるぞ。ったく、バカだなぁ……ほんと、可愛くって、仕方ない。


「ああ! 俺も、大好きだぞーーーーーーーーーーーーーーー!」


 真琴に負けないくらい大きな声で返す。


 そんな俺たちを、人はこう呼ぶだろう。


 バカップルと。


 だがバカップル上等だ。

 俺はこれからも、堂々と、胸を張って、真琴と死ぬまでイチャイチャし続ける。


 そう、俺たちの幸せな新生活は、まだまだ、始まったばかりだからな!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


まだ続きます!

2章は更にイチャイチャさせてきます!


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