5話 JKのいる日曜日の朝



 年下幼なじみ真琴まことと、同居することになった。


 朝からドキドキイベントがあったあと。


「ごちそうさん」


 からになったお皿が、テーブルの上に乗っている。


 俺は確かな満足感を覚えて、椅子に深々と腰を下ろす。


「美味すぎだろ……」


 朝食は、真琴が作ってくれた。

 どれも手が込んでいて、何より美味い、美味すぎた。


「えー? なんだってー?」


 正面に座る真琴が、ニコニコしながら俺に尋ねる。


 テーブルの下で長い足が、ぱたぱた……と上下されていた。


「聞こえないな~? 真琴の料理が、なんだってー?」


 こいつ……! わかっててわざと、もう一度言わせようとしてるな!


「…………」

「おやおや、お兄さんは料理を作ってくれた人が、感想を聞いてるのに、なーんにも言ってくれないようなひどいひとなのかな~?」


「ああもう……わかったよ。美味かった。大変おいしゅうございましたよ!」


 真琴は俺からの返事を聞いて、満足そうにうなずく。


「お粗末様でしたっ♡ へへっ♡」


 ったく、朝から心臓に悪い笑顔向けてきやがるぜ……。


 真琴はテキパキと皿を回収していく。


「あ、俺がやるよ」

「いいっていいって! お兄さんはどっしり座ってて!」


「いやでも……飯作ってもらったのに、片付けまで」

「いーのっ! 私は居候させてもらってるんだから。お料理とお片付けくらいさせてよ」


 年下にここまで甘えていいんだろうか……。

 というか普通に申し訳ないし……。


「いいやでも……あれ? 真琴?」


 とっくに真琴はいなくなっていた。

 キッチンへゆき、テキパキとお皿を洗っている。


「あ、デザートにリンゴむいてあるよー、食べててねー」


 テーブルの上にはいつの間にかカットりんごが置かれていた。


 デザートの準備まで……なんて至れり尽くせりなんだ……。


 一人暮らしの何が面倒だって、飯の準備と、後何より後片付けだ。


 都会は便利だ。長野の田舎とちがってコンビニが歩いた距離にあるし、スーパーだって歩いて行ける。


 だからどうしても、自炊よりも、コンビニ飯ですませてしまう。


「けど……手作り飯も、いいもんだな」


 なんというか、コンビニ飯より雑味がない。

 それに……何万倍も美味かった。


「ん~? お兄さん、いまなーんかマコちゃんをお褒めになられてませんでしたかー?」


「……地獄耳め。ったく」


 皿を洗い終えた真琴が、俺の元へとやってくる。


「お兄さん、買い物いかないとだね。冷蔵庫のなか、なーんもなかったし」


「そうだな。後でスーパー行ってくるよ」


 すると真琴は、んふふ♡ と楽しそうに笑う。


「お兄さんお兄さん、スーパーに、一緒に買い物いこーよ~?」


「え、どうした急に」


「だってぼく……じゃなかった、私こっちきたばっかで、この辺のこと知らないしぃ? 案内してもらえるとうれしいかなーって」

 

 真琴は長野から出てきたばかりだ。

 それにこれから3年はこの辺を拠点にするわけだし……地理は知っとかないとな。


「いいぞ」

「やったぁ! デートだぁ!」


「で……はぁ!? なんでそうなるんだよっ?」


 んふぅ~♡ と真琴が笑いながら言う。


「男女が一緒にデートすること、これすなわちデート!」


「いやいやいやいや! デートじゃないだろ。デートって言えばもっとこう……大切な、重要なもんじゃ?」


「何言ってるの。お兄さんとふたりきりで出かけること以上に、大切で、重要なイベントはないでしょー?」


 ……そんな風に言ってくれたのは、真琴が初めてだ。


 かすみのやつは、いつも淡泊だった。

 デートの時も、ただ淡々と、一緒に歩いてるだけ。


 デートの時も、喜んでるようにも見えなかったし……。


「じゃっ、着替えてくる!」


「え、着替え? いいだろそのままで」


「何言ってるのさ。こんなジャージ姿で外であるわけないでしょっ。お兄さんと出かけるんだから、ばっちり準備しておかないと!」


 ぴょんっ、と椅子から立ち上がる。


「じゃ、ちょーっと待っててね~」


 てててっ、と真琴が部屋を出て行く。


 一人取り残された俺は、ふぅと一息つく。


「相変わらず騒々しいやつだ、まったく」


 ……ふと、俺は窓ガラスに映る自分の姿に気づく。


 ……笑っていた。


 そういえば、俺はあいつが来てから、いつも感じていた、だるさを感じなていない。


 そして時計を見て……驚く。


「もう10時じゃねえか……」


 朝起きたのが8時だった。

 もう2時間もたっていたのである。


 ……いつもは、土日、時間が過ぎるのが遅かった。


 ベッドでゴロゴロして、スマホを見て、でも……時間が全然たってなくて。


 明日から仕事が嫌で……無駄に寝て、起きて……そんなふうに、休日は無駄に長く感じていた。


 でも……今は違った。


「あいつのおかげか……」


 あ、あれ? なんか俺、もうあいつのことが……いやいや!


 俺はまだ落ちてない、落ちてないったら落ちてないんだからね!


「おまたせ~♡」


 真琴が着替えを終えて、戻ってきた……のだが。


「おまっ!? なんだその格好!?」


 真琴は……女だった。


 ……いや、何言ってるのかわからねーと思う。だが、うん。


 真琴は、すっげえミニスカートをはいていた。


 もう、ちょっと身じろいだくらいで、ケツが見えちまうってくらい。


 赤いミニスカートに、黒いのニーハイソックス。


 フリル付きの半袖シャツ。


 ……女だ。服が、女子女子してる。


 昨日来たときは、パーカーにズボンという、まあ体のラインを隠していたこともあったけど、男っぽいかっこうだった。


 そんな……真琴が。

 一発で、女とわかるような格好をしている……。


 大きな胸も、ニーソックスからのぞく、ちょっとむちっとした太ももも……。


 彼女の体のパーツから、【異性】を感じて……ドキドキしてしまう。


「ねーねーお兄さん♡ そんなに熱心に私の体見て……どうしたのー?」


 目を細めて、真琴が前屈みになる。


 ぱっくり開いたシャツのすそから、彼女の大きな胸が……そして、白い、ブラがちらっと……


 い、いかんー!


「いやまあ……おまえも本当に、生物学上の女なんだなって」


「んだよーその言い方~。もっとあるでしょ、かわいいね♡ とかー」


 ぷくーっとすねたように頬を膨らませる真琴を見て、ほっとした。


 ああよかった、俺の知ってる真琴で……


 って、なんだ? 

 なんで俺はほっとしてる?


 ま、まさか異性だって意識してるのか俺!?


 いやいや!


「こうして異性と幼なじみの間で、心揺れ動くお兄さんなのでしたー」


「くっそ! ばればれなのかよっ!」


「あったりまえじゃん! 女子は男子より、そーゆーのよーくわかってるんだからね~♡ ふふふっ♡」


 くっ……!

 いつの間にか男をもてあそぶような女になりよって!


 はっ! まさか俺が知らないだけで、結構たくさんのやつと、あってるんじゃ……。


 ……ずきり。


 え、なんで?


 胸が痛んだ……?


「安心してよお兄さんっ」


 真琴は俺の隣までやってくると、耳元でささやく。


「……お兄さんが、はじめてだよ♡」


 ばっ、と俺は顔を話す。


 片目を閉じて、ぺろっ、と舌を出す。


「付き合うのも、ここも……はじめてだよーん」


 真琴が自分のスカートの、股を手で触れる。

 しょ、処女ってことか……なんだ、よかった……。


 よかったじゃない! 何だ、何に喜んでいるんだ俺はっ。


「ほ、ほらいくぞ、買い物に!」


 俺が先へ進むと、後ろから真琴がついてくる。


「うんっ。いくよー、デートに♡」


「買い物だってーの!」




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【★あとがき】


物凄くモチベになりますので、


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