2話 同棲スタート、そしてネタバレ



 俺、薮原やぶはら 貴樹たかき、22歳。


 社会人もうすぐ2年目の突入する。


 3月のある日、俺の元に、弟のように可愛がっていた【少年】から、連絡があった。


『え? お、お兄さん……いま、なんて?』


 電話の向こうで、【彼】が言う。


真琴まこと。俺と一緒に住まないか?」


 岡谷おかや 真琴。


 長野県の実家の近くに住んでいた、年の離れた幼馴染みだ。


 7つ下の彼が、今年、東京にあるバスケの強豪校へ通うことになった。


「初めての一人暮らし、不安だろ? 俺のマンションさ……結構広いんだ。だからどうだろう?」


 すると電話の向こうで、真琴がつぶやく。


『……なるほど。そういうことか……お兄さん、まだ【気づいてないんだ】』


「え、なんだって?」


 すると真琴は……。


『いいのっ? ぼくと、一緒に住んでも?』


「おうよ」


『【言ったね】? ……うん、わかった! ぼく、住むよ!』


 電話の向こうで、真琴が嬉しそうに言う。

「あ、そうだ。おまえの父ちゃんにもちょっと話ししとかないとな」

 大事な息子を預かるわけだし。


『そうだね! ぱぱー!』


 電話の向こうで、真琴と誰かが会話してる。


 程なくして……。


『やぁ、貴樹たかきくん。久しぶりだね』


「お久しぶりです、岡谷おかやさん」


 岡谷さんの家は、長野にある俺んちの実家のすぐとなりだ。

 

 お父さんの源太げんたさんとは、顔見知りである。

 

『それで……貴樹くん。いま、うちの真琴

《まこと》から聞いたんだけど……本気なのかい?』


 真琴ぱぱさんから、そんな風に言われる。

 どことなく、源太さんの言い方に違和感を覚えた。


「ええ。こっちで一人暮らしさせるよりは、良くないですか? 顔見知りがいるほうが」


『いや……兄貴の息子さんが東京にいるから、彼に任せる予定……え、真琴? どうした……むぐぐぐっ!』


 もがもが、と電話の向こうで、源太さんが口ごもる。


『ぱぱー? ちょーっと向こうでお話がありまーす』


 真琴が源太さんを連れて、どこかへ行くような声がする。


『……たし、……が、……きなの』

『……本気かい?』


『……うん。本気……だから……たいの。……だめ?』


 電話の向こうで、真琴と源太さんが会話してる。


 ほどなくして、源太さんが帰ってきた。


『……わかった。真琴が君と同棲することを、許可するよ』


「ありがとうございます」


 答えが出るまでに時間結構掛かったな。

 

『貴樹君。真琴を……頼むよ。幸せにしてやってくれ』


 なんだか、マジトーンというか……


 幸せにするって?


 ああ、幸せな学校生活を送らせて欲しいってことだろう。


「任せてください。俺が責任を持って、真琴の面倒を見ますから」


 俺がそう答えると、源太さんはそれ以上何も言わなかった。


『お兄さんっ。それじゃさっそく、引っ越しの準備するねっ!』


 父親と電話をかわり、真琴が言う。


『荷物は後から送るから、来週にはお兄さんとこいく!』


「随分と早いな」


『善は急げっていうし! それに4月から学校だから、早めに行って都会になれておきたいなーって』


「なるほど……了解した。待ってるよ」


 真琴は電話口で、実に嬉しそうにしながら、こういった。


『末永く、よろしくね!』


    ★


 あっという間に1週間が経過した。


 俺のマンションに、真琴がやってきたのだ。


「ひさしぶり、お兄さんっ!」


 数年ぶりに会う真琴は……昔とほとんど変わってなかった。


 白い肌。背はわりと高め。


 けれど、俺が彼を最後に見たのは4年前。

 真琴が11歳のとき。


「おまえ、小学校の時から、ほとんど変わってないな」


「そうかなぁ~? よく見てよー?」


 にやにや、と真琴が笑う。


 彼の格好は……。


 だぼっとしたパーカーを来てる。

 体のラインが見えない。


 野球帽をかぶっており、髪の毛は帽子の中にしまってるようだ。


 ホットパンツから伸びるのは、すらりと長い足。


 身長は170センチ前後。


 男からしたら、平均的な身長。


「うん、やっぱり変わってないな」


 小学校のころから、これくらいの身長はあったからな。


「というか、声も変わってないんだな」


「んふふ~♡」


 意味深に、真琴が笑う。


「なんだよ?」


「ううん、なーんでもなーいっ。じゃお兄さん、おじゃましまーす」


 真琴はキャリーケース1つで、俺の部屋に上がる。


 あとで荷物を源太さんが送るそうだ。


 ころころ……とキャリーケースをひっぱりながら、真琴が後ろをついてくる。


 リビングへとやってくると……。


「あらら~。お兄さん、ちょっとちょっと~。部屋が汚くなーい?」

 

 ソファには脱ぎかけのスーツやスラックス。


 そのほか洗濯物も、渇かして置きっぱなし。


「だめだなぁーんもー。ぼくが来るってわかってたのに、少しは掃除しといてよねー」


 ああ、この馴れ馴れしい感じ。

 ほんと、昔のままで安心する……


「この調子じゃ、お兄さん家事ぜんぜんダメダメでしょー?」


「う……い、いいんだよ。都会は田舎と違って、歩いてすぐにコンビニがあるし」


「んも~。だめだよ、コンビニ飯は太るって。しかたないなぁ!」


 にっ、と真琴が笑う。


「この真琴さんが、おいっしー手料理つくってあげるよー!」


 おお、マジか。


 真琴が料理を……?


「出来るのか、料理?」

「あったりまえ! ちょっとキッチンかしてねー」


 ててて、と真琴がキッチンへと向かう。


 冷蔵庫を開けて「うげっ!」とうなる。


「なにもないじゃーん! んもーしょうがない! 近くのスーパーいってくるー!」


「あ、おい! 待てって……って、行っちゃった」


 真琴が出て行き、俺は一人取りのこされる。


 しかしあいつが料理ねえ。


 昔はバスケしかしてない、体育系ボーイだったんだが。


 いつの間に家庭らしくなったんだ?


「まあでも、大したことないだろ。料理って言っても。カップ麺とかだろ、どうせ」


 あの山猿みたいな、バスケバカが、料理なんて急に出来るわけない。


 ……って、思っていたんだが。


「う、うめえ……!」


 真琴がスーパーへ行って数十分後。


 食卓には、手の込んだ料理が置いてある。


「へっへーん、どうだー! すごいでしょー!」


「ああ、マジでたいしたもんだよ……」


 カレーとかメッチャ美味えし。

 バーモンドじゃない、なんか、こう、手が込んでる。スパイスとかが違う。 


 てか、あんな短時間でこれだけのもん作るなんて……。


「なんでこんな料理スキルあがったんだ?


「ふっふーん。それはもちろん……愛だよ!」


「あ、あい~?」


 真琴が胸を張って、堂々と言う。


 だぼだぼパーカー越しだから、体のラインがわからんな。


「そう、愛! お兄さんへの愛がぼくを料理上手にしたのさっ」


「? ??? そ、そうか……」


 俺への愛?

 ああ、兄への愛みたいなもんか。


 でもそういうのって、好きな人がいるからーとかならわかるけど……。


 まあ、いいか。


「真琴よ」

「んー? なぁに」


「おまえ、いい加減その帽子、とったら?」


 家に来てからずっと、真琴は帽子をかぶったままだ。


 外出時ならいざしらず、部屋の中でそれはかなり違和感ある。


「それは後でのお楽しみ!」


「は、はあ……?」


 ちょいちょいよくわからんこと言うな。


 ややあって。

 食後。


「ところでさ~。ぼく、汗かいちゃった! お風呂貸してー」


「おう、いいよ。ついてこい」


 俺は真琴と一緒に風呂場へと向かう。


「わー! でっかいお風呂だね!」


「ああ、そうね……」


 かすみが広い風呂が良いっていうからさ……。


「これだけ広いと二人で入れそうだね~?」


「ああ。そうだ、せっかくだから一緒に風呂でも入るか? 久しぶりに」


 にんまり、と真琴が笑う。


「うん! いいよー!」


 俺もちょうど、スパイスのきいたカレーを食べて汗かいていたからな。


「ちょっとおトイレいってくるから、お兄さん先はいっててー」


「ああ、わかった」


 真琴がトイレへと向かう。

 脱衣所で俺は服を脱いで、風呂場へ入る。

 俺がシャワーをひねって、体を洗っていると……。


「おにーさん♡」


「おお、真琴。おそ…………い…………い゛?」


 ……そのときの、衝撃たるや。


 筆舌にしがたかった。


「ン~? どうしたのー?」


「え……あ……ま、真琴……?? え。でも……え? その髪……胸……?」


 そこにいたのは……ものすごい、【美少女】だった。


 さらさらの、黒く、長い髪。


 バスタオル一枚隔てた向こうには、はち切れんばかりの、巨乳。


 誰がどう見ても、女だ。


 しかもかなりのべっぴん。


「だ、だれ……?」

「やだなぁお兄さん……ぼくだよ。真琴♡



「なっ!? なんだってぇええええええええええええええええ!?」


 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


モチベになりますので、


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