第60話 そういうプレイ
「さて、それじゃあ始めましょうかベリアル……ベリアル……」
ヨハンは敵の頭上に表示されているモンスター名を見て驚愕する。
「ベリアルキング!? ベリアルトーサンではないの!?」
「も?」
横のヒナドラも首を傾げる。
「くっ……ネーミングの非統一感、許せないわ……行くわよヒナドラ、進化!」
「もっきゅー!!」
ヒナドラの第三スキル【進化召喚】を発動させると、ヒナドラの体が光輝く。そして、その姿をクロノドラゴンへと変化させた。漆黒の外装を纏ったドラゴンが、ベリアルキングの前に立ちはだかる。
「んんっー! 素敵よクロノドラゴン! さぁ、あの敵を倒しちゃって!」
カオスアポカリプスを纏った状態ならば、普通にヨハンが戦った方が強い。だが誰も見ていないという状況故か、ヨハンは童心に戻り、パートナーのクロノドラゴンに戦ってもらう、それを後ろから応援するというプレイを楽しむつもりのようだった。
「……ぎぃ」
だが、ベリアルキングはクロノドラゴンを無視。物凄い早さで走り出すと、王座の前に設置されているオーブ目掛けて走り出した。
「おっと」
「……ぎぃ!?」
その俊足でクロノドラゴンを抜き去り、オーブ目掛けて走っていたベリアルキングの体は突如宙に浮いた。攻撃を受け、吹き飛ばされたのだ。体勢を立て直した時には、ベリアルキングは王座の間の入り口まで戻されていた。
「……!?」
ベリアルキングに攻撃をした人物……ヨハンは兜の下で笑う。
「ダメよ? ……私のクロノドラゴンと、ちゃんと戦わないと」
「……ぎぃ」
諦めたように剣を構えるベリアルキング。
「ようやく戦う気になったようね」
ほっと一息つくヨハン。そして、クロノドラゴンが現在使える唯一のスキル【
「ぐるるあああああああ」
クロノドラゴンの背に、光の翼が現れる。そしてそれは、蝶の羽のように広がって、王座の間を包み込む。
一日一回制限【リミット1】の掛けられた、超強力なスキル【真時空竜皇領域】が発動する。これにより、クロノドラゴンはこの戦闘中に発動した全てのスキルを発動させることが出来るようになる。
ちなみに今回の【戦闘中】の範囲は、この一連の最終襲撃の事である。ヨハンの目の前にはこの最終襲撃の間に使用された全スキルの網羅されたウィンドウが表示されている。その数はざっと100を超える。
「思ったより……多い」
もちろん、全てのスキルを完璧に使いこなす事は、ヨハンには不可能だ。なので、知っているものから使っていく。
「なら、ゼッカちゃんの技……【ファイナルセイバー】」
「ぐるるああああ」
クロノドラゴンが手刀を振るうと、そこから黄金のビームが放たれ、ベリアルキングを襲う。
「……ぎぃ」
ベリアルキングはオリジナルスキル【キングスラッシュ】で応戦。クロノドラゴンの攻撃を凌ぎきる。だが、手数は圧倒的にクロノドラゴンが上だ。
「次はホワイトドラグーンの【レジェンドストリーム】よ」
続けてクロノドラゴンは口からブレス攻撃を放つが、若干隙が大きかった為か、敵に回避される。そして。
『ベリアルキングのスキル【ゲートオープン】が使用されました』
下でドナルド達を苦しめたスキル【ゲートオープン】が発動される。空間に開いた穴から、続々と外に居たアンデッドやオーガ系のモンスターたちが入り込んでくる。さらに、そのモンスター達には【ターゲット集中】状態が付与される為、こちらはベリアルキングを攻撃出来なくなってしまうのだ。
「えっと、確か【ターゲット集中】は、強化の部類に入るのよね」
昔ゼッカに教わった事を思い出すヨハン。次はこのスキルを指示する。
「【悪のオーラ】を発動。敵のタゲ集中を解除するわよ」
「ぐるああああ」
「さらに行くわよ……【ゲート・オブ・ヘブンズ】!」
ベリアルキングの悪のオーラを使い、敵のターゲット集中を解除。さらにソードエンジェルのゲート・オブ・ヘブンズを発動。聖なる門を呼び出し、敵が呼び出した雑魚モンスター達を亜空間へ葬り去る。
「続けて【ファイナル・メテオ・インパクト】!!」
「ぐるるああああああ!!」
クロノドラゴンは炎を全身に纏い、敵に体当たり。ベリアルキングは回避出来ず、大きなダメージを受ける。
「んんっ、バチモンスキルの連続攻撃……気持ちいい!」
身悶えるヨハン。今回のギルドホーム防衛に、バチモン召喚獣は使われていない。なので本来、バチモン達のスキルをタイムメイカーで使うことは出来ない。だがヨハンは、この戦いの為に、暇な待ち時間中に自分でバチモンのスキルを使っていたのだ。後でクロノドラゴンに使わせる為に。
「……っと、そろそろクロノドラゴンのMPが切れそうね。ここで私は、新たなスキルを発動するわ」
コンの指導の元に取得した新たな召喚師スキル、その名も【マジカルリンク】。自分のMP全てを、自分の召喚獣へ与えるスキル。召喚されている限り、徐々にMPを減らしていく召喚獣を延命する為のスキルである。
「これで私のMPはゼロ。でも問題ないわ……メテオバードの【はねやすめ】発動!!」スッ
さっとポーズを決める事10秒間。ヨハンのHPとMPは50%分回復する。さらに、リトルウィザードの【マナ加速】により、10秒ごとにMPを少量回復出来る。ヨハンのサポートを十全に受けたクロノドラゴンに隙はない。例えクロノドラゴンを倒したとしても、その後ろにヨハンが控えている以上、ベリアルキングに勝ち目はないのだ。
「……ぎぃ」
だがそれでも敵のAIは、この状況を打破する為の手を探る。しかし、それを待つヨハンではなかった。【フラワー・オブ・ライフ】【闘魂・極】【パワーエール】など、手当たり次第の強化スキルを使ってクロノドラゴンを強化。さらにスケープゴートの【増殖】を使い、クロノドラゴンを3体に分裂させる。
「トドメよ! トリプル・テラーズ・ブラスター!!」
「「「ぐるるああああああ!!」」」
「……ぎぃ……ぎぃ」
最後は現在のヨハンの手持ちで単体最高火力、バスタービートルの【テラーズブラスター】三連射によって、見事ベリアルキングの討伐に成功する。
「あっけない……海賊王ほどじゃなかったわね」
「ぐるるああああ」
「ドロップアイテムも無し。でもこれでイベント終了かしら……あら?」
その時、コンからメッセージが届く。なにかしらと開くと、そこにはこう書かれていた。
『ベリアルキング討伐おめでとー! せやけどイベントは敵を全滅させるまで終わらへんよ。庭に来て』
「これは……手伝えという事かしら?」
「……も?」
ヨハンとクロノドラゴンは顔を見合わせる。そして、もう一暴れだと、一番の激戦区【庭】へと飛び出していった。
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