【episode5-捲れる紙と溜息と】


厳しくも清らかな作品を造り上げる祖父には、私との散歩のほかに、もうひとつの楽しみがあった。



それは、官能小説を読むことである。


彫りの手を休めると、徐に雑誌を手にする。



ある時、私がその手元を覗き込もうとした際、祖母に激しく止められた。


チラッと見えたページには美しい肌を露出した女性の挿絵があったのだ。


幼心にも、それが何を意味するのか薄っすら伝わってきた。



私は、楽しそうにページをめくる祖父と、溜息を漏らす祖母を交互に見つめると、そっとその場を離れた。

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