【episode3-芸術家の時間】


祖父の仕事は美しく繊細だ。



厚みのある一枚板に下絵を写し、彫刻刀で彫り進める。


女性の髪の毛などは1ミリに満たない。



一瞬でも手元が狂えば、作品は台無し。


再び新しい板を用意し、下絵を写すところから始めなくてはならないのである。



祖父が彫りをそんじるのを見たことはない。


だからこそ、祖父が作業台に向き合った時には、その真剣さが背中から伝わってくるのだ。



彫刻刀を握った祖父は、私のおじいちゃんではなく、ひとりの芸術家そのものだった。

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