第7話 感化
その後は問題なく近場のシェルターに避難し、そこでしばしの休憩。車両での搬送もあったが燃料の問題と乗り合わせていた他の人のシェルターまでの帰路に間に合わないということで歩けるまで回復した後にメアシェルターへ。
シェルターに着いてユリとコランは検査室へ。頭痛も何も戻ってくるまでに回復していたがまぁ、一応。目の前にはヒマがいる。
「ねぇ、報告の事なんだけど。」
「何?」
「・・・花が熊を操っていた。熱源が無かったのは道中説明したと思うけど、今までそんなのを見たのは初めてだよ。不自然な動きでもあったけどさ。」
「スイセンの花の形をした花。それでは人間同様、ゾンビのような動きをすることもなく普通の動物のように活動が出来ることが不自然だったって事でしょ?植物が主導権なのに。」
「まぁ確定ではないけどさ、そう考えられるかもじゃん。後はコランの症状。あれは熊・・・というよりは花の力、・・・・あれ、メアだったんじゃないかな。」
「レグアニではなく、メア?だとすれば熱源がないのに・・・いや、熊じゃなくて花がって言いたいのね。植物のメア、ね・・・。」
今まで人的被害はレグアニ、レグユーが多くみられてきた。確かに人のメアが居るなら他動物のメアが居てもおかしくはない。だが発見できたとしても人のように長続きはしないというのが現状ある論だった。
メアの特徴は様々。主に感染しても症状がないということ。または感染の速度が遅い、感染が悪い方ではなく進化とも言える方だった。過去のメアの人というのは無症状や能力者、特徴的な一部の外見変化など異常な所は見られても死に至らないという点。しかし他動物では無症状の発見には検査が必要で、外見の変化ではその動物が本来の生き方をすることが出来なくなってしまったという問題が多く、餓死やレグアニとして消滅、他のレグアニに捕食されることがほどんどだった。
これは生物すべてがメアになる可能性を持っていながら、なった時にそれに対応できる能力、言わば知識を持っているかで人のメアが生き残ったということだと言われた。人は集団で生き、欠損あれば補い、有益あれば発展する。疑問点から異常を見つけ、解決を求め生きる希望となったと。
・・・・結果世界はほぼ崩壊している訳だが。
「ひぃー、んあ、お疲れさん。ヒマ、カルミア。」
「ユリとコランは?」
「お疲れぃ、プランター。」
ツーブロックの青髪に多めのピアス、目の下にクマを常につけて休めと言われるもお前が休めと突っ込みたくなる男性、”プランター”。彼はメアシェルターにいる専属医療者、そしてメアの管理官だ。
「自覚症状はないが脳の負荷反応が見られた。部屋戻って落ち着いてこいって返した。ユリは昼寝するんじゃねぇか。ったくよぉ、丁重に扱ってやれって。」
「そういって探索させてんのはそっちだろーって。」
「生意気言うなよサイコパス野郎、スクワットサボりは把握してんだからな。今夜はプラスして筋トレしやがれ。」
「ひぇえ・・・。」
「丁重と言われても緊急だって言ったはずよ。初めて見たレグアニ・・・私達は植物のメアと疑っているけど。」
「植物のメアぁ?まぁ、あながち外れでもねぇさ。全部ではないがログは簡単に見てきたんだ。俺でも植物が主権と見るな。んだが植物による感染の拡大があってもあそこまで攻撃的で行動を起こすのは初めてだ。・・・そこまでの判断と寄生が確定なら植物のメアと言っていいだろ。」
「あの熊は生きているかのように動かされていた。熱源を見るまで死骸と気づけなかったんだよ?花にそこまでの知識ー?って言われたらメアだと判断してしまえば納得できる。進化パターンのメアね。」
「これは映像ログも含めて本部に渡す。報告はお前らからしてもらうのが一番だが俺の意見も汲んで欲しい欲しいもんだ。それと一番気になったところだけ解析を早速やってもらってる。結果が出たらまたそれぞれの感覚を教えてくれ。」
意見ではなく、感覚。それは感染者だけが感じる何かを言語化し、教えること。考えではなく思ったこと。感染者にしか分からないことが出始めているのだ。例えば、言語。
このメアシェルターではないが、別の、アメリカのメアシェルター本部でメアの住居スペースでの会話が一部、解読できない言語であることが分かった。しかも本人やそれを聞いていた人もその言語を使用していたという自覚が無かった。他愛のない会話をしていただけなのにその中で不明な言語をいきなり使用し、理解できていたのだ。メアには。
そして重要部分だけ本人たちでも何を話したのかよく覚えていない。
ここでその問題の会話の抜粋だ。以下はそれを出来る限り文章にしたものである。
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この後、小腹満たしにパンでも貰いに行こうかって、お前も来るか?
あぁ、行く。何のパンがあったっけか。この前はブルーベリーがあったような。
俺はプレーンがいいんだがな、あ、クロワッサンでもいい。バターを付けるのがいいんだ。
まるで――のトーストだな。
――そうなんだから、お決まりだろう。だが、色々考えている方がいいぞ。その方がどんなパンが来ても楽しめる。
これがいいと固まっていたら――してショックも受けるか。まぁ分からなくはない。
さ、行こう。俺が―――――がこの――になるように。じゃなくて――――――でも――――――。無意識―――。
楽しみだ。
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「ねぇ、プランター、その一番気になったのって?」
「耳鳴りのような音のことだ。もしかしたら例の言語かもしれねぇし。ユリは夢で熊を見たと言っていたんだが急ぎで内容の詳細までは覚えてない。んだが声を聴いたらしい。とてもうるさい声だったってな。」
「コランも視界が埋め尽くされるほどの感情を見て把握に遅れていた・・・、感情?いえ、感情のようなもの、読み取れない目が眩むほどの大きなものって。」
「・・・コランの検査を精密にする。メアはメアでも会っちゃいけねぇメアが居るんだからな。」
説明しただろうか、メアの能力者には段階がある。そして同じ能力を持つメアは発見されていない。そして能力の数は未知数であり、ナイトメアに至っては他のメアの能力を感化させるという疑惑が立っている。
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