6、椛ノ丘
昌弘?石井の?なぜ?知り合い?私は、想定外の事態に、かなり戸惑う。
「あの・・・誰ですかぁ?」
「え?!知らない?!ショックぅ~」
「気持ち悪いんだけど、昌弘」
「気持ち悪い?そう思う?凛ちゃん?」
「えっ?どーでしょーね?」
「おい!!」
何で?何で何で?いや、どういうこと?何で入ってきたの?まず、そこから説明して
いただきたいのですが・・・。
「それで?何で、こんなとこいるんだ?」
お、ナイス!コタロー!
「何でって、これから椛ノ丘に行こうと思って。それでここ来たんだよ」
「なっ?!」
「どうした?」
「あのぉ・・・私たちもそこ行こうと思ってたんですよ」
「ふぅん。そうなんだ。で、何がまずいんだい?小太郎君?」
「いや・・・」
「じゃなんで、さっき『なっ』って言ったの?」
「なんか反射的にびっくりしちゃっただけさ」
「ホントに?ホントにほんとですか?」
「え、いや、ホントですけど?」
「アヤシイ」
「ホントだってば!!」
「はいはい」
「それじゃ、そろそろ行かない?石井君も混ぜてさ」
「え、凛ちゃん?!」
「いいよ!小太郎も、まあOKしてやるよ」
「こいつめムカつく」
「いいから行こう!!」
そうして、騒がしく、メイプル樹林を後にした。
それから、みんなで、椛ノ丘に向かっている。この丘は、すごくモミジがキレイ
で、この町では、ちょっとした観光スポットでもある。
「ついたな」
「うん!」
「何で・・・ほんとに最後までついてきたじゃんか」
「それくらいいいでしょ!」
と、言いながら、私も正直嫌だった。本当は、2人だけで話をしたかったのに。
でも、石井君がいると、それができない。厄介な存在になっている。
「そういえば、家でレシピ考えてきた?小太郎」
「げっ!!まだ考えてないや!」
「それヤバいじゃんか!」
「どうしよう?どうする?マジでどうしよ!」
小太郎がパニック状態になっている。どうにか助けようか?
「ねえねえ、ひとまず、やっぱモミジ見ない?」
「いいね」
ここは、かなり広い丘で、向こうを下りて、もう1つの丘へ行くと、また別の丘が
あるらしい。それを私はすでに抑えている。後々小太郎にも明かす。
でも、その前に、石井君をどうにか追っ払わないと。
「なあ、そろそろ帰らないのか?」
「なぜ」
「帰ったら一緒に料理しないか?」
「何でやだ。君は、下手だから僕と一緒にできないよ。やっても、食い違って最終的
に完成しないまま終わってしまうぞ?」
「それでも大丈夫だから!」
「僕が大丈夫じゃないんだよ」
ハァ~。何でこうなるんだ?
「そうだ。ちょっといいか?」
「何々?教えて。いい方法思いついたんでしょ?」
「その通りだよ」
何だろう?いい方法って。でも、調理部で一緒ってことがさっきの会話からわかった
から2人は、まあまあ親しいはず。何かいいアイデアがあったらいいな。
「ゴニョニョヒソヒソ・・・」
「なるほど!!いいじゃん!!」
「何がだよ?」
わっ!!石井君に心の叫びが聞こえてた!!
「何がだよって何が?」
「お前バカか?さっき何話してたのか、って聞いてんだよ」
「ああ、そういうことだったのね」
慌てて小太郎に、アイコンタクトで、HELPを送る。それをキャッチしたのか、
小太郎はウインクを返してくる。
「それは、誕生日のサプライズのアイデアを考えてもらってたんだよ。もうすぐ
誕生日じゃないか」
「まあ確かに」
「だからだよ」
「タイミング違うと思うけど?まあいっか」
「それじゃ、昌弘にお願いがあるんだ」
「何だい?」
「一緒に車いすでここらを乗り回したいんだけど」
「ああ」
「ちょっと、広いとこあって、そこの一角を借りたんだよ。車いすテニスのために
早くしなきゃいけないから」
「分かった。んじゃ、早速行こうぜ!」
よし、うまくだませたっぽい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます