5、モミジ

 それから3日後、小太郎に話しかけられた。

「招待状読んだんだけど、どういうことだい?」

「何がぁ?」

「今、秋だよね?」

「うん」

「なんで、“桜”の花見なんだい?」

「だって、桜の花見に行くんだもん」

小太郎は、その辺りを指さして言った。

「桜なんか、ここらには咲いていない。モミジなら咲いてるけど」

「それは、また今度のお楽しみだよ♪」

「はぁ」

「それで?」

「あ、そうそう、予定空けたよ!これで行ける。準備も大体したよ。デートは

初めてだからさ。ちょっとよく分かんなかったんだよね」

「これでちょっとでも気が楽になればいいね!料理、また今度食べさせてよ!」

「何で?」

「それを、お母さんにも食べてもらう」

「お母さん?なぜ」

「私のお母さん、実は料理研究家なんだ♪」

「へぇ~」

「また食べてもらってね!!Boy&Girl love・mixでモテまくりだよ!フォロワーの

数がハンパなくなる可能性あり」

「別にそういうの興味ないけど」

「ま、いっか。んじゃ、またね!!」

「バイバイ・・・」


 ついに、その日がやってきた。小太郎は、固まっている。初めての男女の散歩。

そんなこと、これまで一回も経験がない。どう対応すればいいのか。特に何の下調べ

もなく、ここまで来たから、すごく怖いんですけど。恋愛経験は、ない。

Boy&Girl love・mixを始めたのも、なんとなく友達が欲しかったから始めた。

特に近況なんかも書いてないし、管理は届いていない。フォロワーは、2人だけ。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。緊張で冷や汗がどんどん滝の

ように流れでる。

「コタロー君、ハロー!!」

「あ、凛ちゃん」

「それじゃ、もういこっか」

「了解」

それから、2人で歩き始めた。は、いいけど。黙ったままで歩いている。こういう時

に、相手は話すネタを探しているに違いない。何よりも僕から話しかけてほしい

はず。でも、どうやって?緊張して、声が出なくなる。

「もうすぐ、1つ目の目的地だよ」

「あ、モミジの林だ」

「そうそう!!メイプル樹林って言うらしいよ」

「メイプル?カエデ?」

「カエデも英語でメイプルだけど、モミジもメイプルって言うらしいよ」

「ふぅ~ん。下調べしてきたんだね」

「うん!それにしても、見かけからすごいキレイ」

「本当」

「メイプル樹林ってすごい気持ちいい!」

「あそこに松があるからかな?フィトンチッド」

「フィトンチッドか!!て何?」

「松脂のことで、殺虫成分があるんだ。でも、人にはすごく心地よくって、森林浴

ってみんなやってくるんだよ」

「へぇ」

何で、雑学の話になっているんだろう。どうにか、話を元に戻さないとっ。

「それにしてもキレイだね~」

「・・・・・」

「ん?何してるの?顔隠して」

「ちょっと待って」

「??」

「出来た!!」

顔を上げた彼女の髪には、モミジがついていた。素直にカワイイ。

「どう?いいでしょ~」

「カワイイじゃん」

「ありがと」

「それじゃ、コタロー君も」

「え?え?ちょっと・・・」

プチッ 近くの木から、モミジをとると、僕の髪につけた。

「似合ってるよ!」

「そうかい?」

「似合ってる似合ってる!!」

パチパチパチ 何でか、拍手される。そこに、まさかと、こんな奴がいた。

「あれ?小太郎。と、えっと・・・岡村りなちゃんだっけ?」

「りなじゃないです。りんです」

「そうかい。ところで、2人でどうしたんだ?デート?」

「え、それは、実は・・・」

「そんなわけないじゃんか!!何言ってんだ昌弘!」

そう、そこにいたのは昌弘だった。

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