4、招待状

 今日は、調理部の日。今回こそは、うまい料理を作りたい。という時に、こんな

料理が出てきた。料理名は・・・カルボナーラ。意外に簡単そうに見えて、実は失敗しやすいと、母から聞いた。

「それじゃ、調理部始めます!!」

龍斗の声で、今日も調理日がスタート。

「今日は、カルボナーラを作ります」

「は~い!!」

「今回のカルボナーラは、すごく濃厚。本格的で、なのに、失敗しにくい料理

なんです。ただ、ダマになりやすいので、注意してくださいね」

小川先生の簡単な説明が入る。

「それでは、調理スタートです!」

みんな、すぐに取り掛かった。なのに、僕はレシピをずっと読んでいる。失敗したくないからレシピを何回も読んで、取り掛かるのが遅くなり、焦りと元々の才能で、

失敗する。だから、次こそは失敗しないようにと次の回でまた入念なレシピ

チェックをする。それがいけない悪循環。分かっているけどついついやってしまう。

それから、今回も当然失敗した。卵黄が少なくて、塩を入れすぎ、生クリームを

こぼした。だから、生クリームがない。パスタも茹ですぎた。その結果、今日も

失敗作だった。

「みなさん、うまくできましたか?」

「は~い!!!!」

「ぃぃぇ…」

小川先生の問いに、みんなは、はいと答えるが、僕だけは小声で、いいえと

答える。それが調理部の日常だった。それを変えたいけど、中々変わらない。

「これで、本日の調理部を終わります」

「終わります!!」

「かいさ~ん!!」

「はい・・・」

いつも思う。なぜ車いすでも料理をさせてくるのか。実際車いす料理人はいる

らしいけど、それほど熱意がない人にこんなことさせるか?


 今日も私は、考えている。図書館では、恋愛小説を読み漁り、参考になりそうな

ものはないかと探してる。PCでは、恋愛に関するブログやYouTubeを見て、ヒマが

あれば、スマホでGoogle検索の情報を漁る。でも、あまりヒットはせず、参考に

なりそうなものも、なかった。図書館から教室へ戻っていると、いつもとは違い、

ゆっくりと車いすのタイヤを回す小太郎がいた。

「はぁ・・・・・」

何かあったのだろうか?落ち込んでる?ってことは、慰めた方がいいよね?

「どうしたの?コタロー君」

「いや、何も」

「何かあるでしょ?」

しばらく思考回路を作っていると、思いついた。

「さては、調理部の料理を引きずってるんでしょ?」

「バレたかぁ・・・」

「そうだ!!気晴らしに、どっか行かない?!」

「いつ?」

「今!!」

「無理だろ!!」

お、元気にツッコんでくれた。なら、ここからヒートアップさせることができる。

「んじゃ、今週か来週にどっか行こう!紅葉を見に行く?」

「もう散ってるんじゃないか?」

「いや、残ってるとこたくさんあるよ!!それは、絶対きれいだって!!」

「そうかな?」

「ん~。ま、ひとまず、これ渡しとくね!!」

空いていた紙に、シャーペンですらすらと文章を書くと、小太郎に手渡しした。

「分かった。ありがとう・・・。日程合わせとくね」

「りょうか~い」

それから、別れると、また立ち止まって考え事を始めた。ああ言ったものの、

なかなか計画を考えられない。秋のもの。モミジ、キノコ、サツマイモ、読書、

スポーツ。植物だったら何だろう。モミジ、コスモス。ん?コスモス?そうだ、

いいこと思いついた・・・。私ってやっぱ恋愛マスターなんだ。よし、新しい招待状を書こう。絶対いいよ。また、恋愛を続けるかを決める話し合いにも使えそうだ。


 数日後——

「はいこれ」

「また?まあ、ありがとう」

「どういたしまして!!」

私は、新たな招待状を、小太郎に手渡した。

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