1、車いす

 痛い。足がとても痛む。学校の横には、モミジの木が植えてある。それは、学校が

出来てすぐに植えられたものらしく、今でも立派に立っている。そのモミジは、少し

ずつ、赤くなっている。そろそろ、赤く染まっていくことになるだろう。その時に

なると、やっと僕の怪我が治るころになると思う。僕の怪我。それは、先程の打撲

ではない。あれから、今日までの間に、病院に行ったところ、ある事実が明らかに

なった。打撲の箇所の近くに、しているところがあるということ。

何だって?骨折?僕はその時、パニックになった。骨折というほど痛くない気がした

から。でも、言われてみれば、痛くなってくる。それが治まると、ベットの中で、夜

痛くて、なかなか寝れなかったことを思い出した。初めは、テレビゲームのブルー

ライトのせいだと思っていたけれど、確かにブルーライトで足の痛みは起こらない

はず。そのおかげで、今は車いすを使っている。病院を出て、しばらく杖を使って

歩いていた。ちょっと平気になってきたところで、ついつい、これくらいで僕は

終わらない、という勇姿を誰かに見せようとした。それで、地下鉄の階段を

下りようとすると、案の定、落下した。そして、また病院へと戻っていった。

「なんでまた・・・。安静にしておいてくださいと言ったのに・・・」

お医者さんにも呆れられて、杖から車いすになった。先程とは、また反対の足を

骨折していた。最悪。でも、自業自得だ。仕方ない。安静にするしかないか。

 僕は、あれから何か車いすでできるカッコいいことを調べた。ダメだということは

分かっていても、ついつい。その時、僕は「車いすテニス」というものを知った。

パラリンピックの競技にもなっていて、金メダリストもいる。——これだ。僕は

その時決意した。車いすテニスをやってみよう。治るまで。いや、治っても、健常者

として、車いすを使えばいい。僕は、決めたぞ。

 その時から、母親を説得した。何日も説得して、ようやく許可が出ると、近くの

教室を探した。が、なかなか見つからない。何とか見つけたのは、意外に近い

とこだった。最近できたらしい。この町には、車いすを使う人が何人かいるらしく

近くにオープンしたらしい。全然知らなかった。そこに、僕は行くことにした。


 同じころ、女子高校の、岡村凛は、スマホを2時間半操作していた。画面に

映っているのは、最近人気の、マッチングアプリだった。凛は、常に愛を求める者。

誰かに恋して、当たれば続行、外れれば、またアプリで別の人を探す。

「誰かいないかな・・・」

「凛、そろそろスマホ置けば?」

「すでに置いてるよ?」

「そう、失礼。それじゃ、買い物行ってくるね」

「私も遊びに行くかもしれないから。OK?」

「分かったわ」

こんな場合に備え、凛は常にスマホを置く棚の近くにベッドを持ってきて、そこに

うつ伏せで寝転がる。そして、スマホを操作する。

家から誰もいなくなると、それは、凛のスマホの天下。早速良い人探しに取り

掛かる。先日、同じ高校の子の、兄に告ったら、あっさりフラれた。だから、

新しい美丈夫イケメンの自分に合う男性を探す。ん?何々、みぃ~つけた。

市内の高校の男の子。同い年だった。名前は、岡田小太郎。ちょうど、独り立ちを

考えていたころで、高校を中退しようと思っていた。この女子高は、私と話題が

合わなくって、窮屈。あっちなら、いい人もいっぱいいそうだし・・・。岡田小太郎をターゲットにし、私はとあることを独断で決めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る