秋桜で深まる恋心

DITinoue(上楽竜文)

0、調理部

 とある、高等学校。季節は秋になり、セミの鳴き声は聞こえない。まあ、もう

10月後半なのだから、当然だけど。調理部では、サツマイモを調理する。

「今回は、大学芋を作ります!」

調理部部長、酒井龍斗は、レシピをみんなに配る。

「大学芋・・・。ムズそう」

1年の入りたて、岡田小太郎は、料理音痴。それなのになぜ調理部に入ったかと

いうと、TwitterやInstagramで、料理ができるってかっこつけたかったから。

でも、それだけで入ったのは、やっぱりだめ。料理、ムズすぎ。

「難しそうにはないけどな。家でも、簡単に作れるし、失敗も少ないぜ?」

「僕の場合は、真っ黒こげになるんじゃ・・・」

「まあ、料理音痴では仕方ないか」

同級生の料理上手、石井昌弘。うらやましいな。モテそうだし。あいつは、運動も

出来る。勉強もいいほう。でも、「恋愛は苦手だ」って言って、SNSも、LINE

くらいしか、やってない。パソコンが苦手だからだろうか?

「それでは、作っていきま~す!」

龍斗の掛け声で、調理スタート。みんな、すぐに手際よく調理に取り掛かってる。

なのに、僕は・・・。僕はまず、レシピを確認して、じたばたと、調理器具を

揃える。これにすごく時間がかかる。みんなは、もうサツマイモを火にかけた

ころに、小太郎は、やっとサツマイモを切り始める。

「小太郎さん、もうちょっと切り口をキレイにできないかな?」

調理部の先生、小川理恵先生にビシッと指摘された。そう、包丁で食材を

切ることが苦手。切るところの大半を、小川先生にやってもらってから、ようやく

火にかける。ほとんどの部員は、出来上がってる。ああ、何でこう・・・。

他の部員から、10分遅れで、ようやくできた・・・。は、いいが、火を通しすぎて

予想通り真っ黒焦げ。黒ゴマの量も異常。タレはかなりの量で、調味料の塩と

みりんを入れすぎたから、さあ大変。

「それでは、みんな試食してみましょう」

「いただきます」

食べてみると・・・。マズい。これはだめだ。ああ、だから料理は嫌いなんだ。

こんなもの、持って帰ってもだれも食べなくって、結局ゴミ箱。食品ロスになって

しまう。環境問題には興味あるんだけど。それから、しばらく反省を話して、

今回は終わり。ドアを開けて、出るころには、僕をからかうように冷たい風が

吹いて、ドアにぶつかった。


 保健室で、怪我を見てもらった。打撲していた。ドアにぶつかって、こんなことに

なってしまった。なんてアンラッキーなんだ・・・。

「そんなことで怪我するなんて。これで何回目ですか?指相撲してたら突き指した

とか、雑巾がけで滑って顔面からいったとか。階段でカッコつけてジャンプして、

結局着地失敗したとか。もうこれで、最後にしてくださいね」

「はい・・・」

虚しくなって、大げさに足を引きずりながら、保健室を出た。

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