第4話_承『逃亡者3066:万歳ストーム』

俺、ソライ、アルゴニック、そして3066号は腹が減ったので

俺とソライの中学時代からの行きつけの店。

『チャーハン専門店 つくるよ!』に来ていた。

店の中に入ると香ばしくも濃厚なチャーハンの匂いにそそられる。

店はぼろいラーメン屋みてぇな感じだが、

チャーハンの腕はそこら辺の、中華料理店と比べると異様なほどうまい。

店は汚いから人は来ないけど。本当にこれだけは世界中から称賛され誇ってもいいレベルでうまい

店内には学生数名、おっさん数名


「ソライ!ちゃんと自販機で水買ったろうな?」

「もち!あとで必要になるからな。」

「「?」」

この店初見の二人は首をかしげる。

こいつらのために水は絶対に必要だ。

俺らは適当なテーブル席に腰掛ける。


「さてと何を頼むか・・・」

メニューをざっと見てみる。

五目チャーハン500円、海鮮チャーハン600円、焼き肉チャーハン750円、カレーチャーハン600円・・・

などなど定番から変わり種まであるのがこの店だ。



「あ、ところでさ、君3066ちゃんもご飯て食べるの?」

「はい。充電するか食事をとるかの、どちらかでエネルギーを得れます。」

「ふーむなるほど。」

「で、サイム。どれにするか決まった?」

「俺は決まったソライは?」

「僕も大体。」

「俺も決まった。」

アルゴニックが言う。

「私も決まった。」

3066も答える。


「マスター!いつもの五目チャーハン一つ!」俺が一品目を頼む

「僕は焼き肉チャーハン、もしも『あの事』、ばらされたくなかったら

肉を増しましにして、半額にしてくれよマスター!」

ソライのあからさまの脅しにマスターはびくっと、額に汗を流し明らかに動揺を見せる。


あの事ってどのことだよ!!俺もマスターの弱み一つ知ってけど、

この馬鹿はマスターの弱みを握ってゆすりやがった。


アルゴニックは朗らかに。

「じゃあ俺はこのマスターおすすめ、スペシャルチャーハンってのいただこうかな」

「「あ」」

「アルゴニック!お前考え直さないか?」

「え、だって彩鮮やかなチャーハンで格別においしいですって。コメント欄に書いてあるじゃねぇか。

あと妙に安い。」


こいつやりやがった!よりによってこの店で三番目頼んだらいけない、

あのチャーハンを頼みやがった!!


「私も五目チャーハンを頼みます。」

マスターが注文を受け取り、にこやかにカウンター越しの厨房へと戻る。


「さてといろいろと聞きそびれちゃったな。だがまず、重要なことがある。それは

自己紹介だ!!」

「そうだね。」

「じゃあまず俺から、俺は武山才無。サイムとかそんな風に呼んでくれ。

ここらで活躍しているZ級冒険職の社長だ。」

「Z級冒険職って何ですか?」

「え、そこから?冒険職ってのはな、国から認められて、

遺跡探索や人々の困っている依頼を解決したりだとか、

モンスター退治だとか、そんなことをこなす連中のこと」

「で、Z級っていうのがこの国で線引きされたランクのことね。

例えばこの店は料理V級の店なんだ。

料理なら客の入店数や値段、味、店のたたずまい、

そのほかもろもろを国が評価をして、

高い順でA~Zランクにランク付けされているんだよね。ちなみに冒険職の場合、

依頼のこなした数や、モンスターの盗伐数、

などなどを冒険職ギルドっていう、専門の役所に報告しておけば、

順位が上がるんだよ。」

「じゃあよ。お前らは出来立てほやほやの、会社ってわけか?」

「いやーそうじゃないんだよね・・・実は冒険職ギルドに、

もろもろの理由があって行っちゃダメだって出禁食らってて。」

「ランクもあげたくても上がらんのだぜ。」

「「あっははっは!」」


むろん笑い事じゃあ済まされんレベルの問題だ。

けっこうだましだましやってる。

この国で今の時期会社を経営しているZ級は税金でケツの毛まで国にむしり取られるのが世の常だ。実際、ソライと俺は帳簿を睨めながら何度も頭を抱えている。

まぁ楽しくやれてるからいいけど。


「でー僕がそんな馬鹿とともに会社を立ち上げた一人、経理兼専務兼副社長の応木空井。

そーだな。ソライお兄ちゃんと呼んでくれたまえ。」

「ソライ・・・お兄ちゃん?」

上目遣いで3066号は甘ったるい声で言う。


「うっひょー妹萌えサイコオオオオーー」

ガッツポーズをとるソライ。

それを見て思うことはただ一つ駄目だこの専務。業が深いぞ。


「あ、俺はさっき言った通りアルゴニックでいいぞ。

今はわけあってこいつらのところに、居候している。」

「それで3066号は一体どこから、なぜ追われているのか・・・

教えてくれないか?」


「えっと、はい。私はどこから来たのかはよく思い出せません

研究所を抜け出して走って走ってそれでどこだかわからない道をずっと、歩き続けていました。

いろんな都市を回ってヒッチハイクとか、時には貨物列車に乗り込み、雨風をしのいだ時もありました。」

どこぞの宅急便かよ。めちゃくちゃたくましくって頼もしいじゃあないか。


「姉ロボットがおかしくなったって言ってたけどいったい何があったの?」

ソライが訊ねる。これは聞いとかねぇと。


「わかりません。お風呂から出た後寝ようとしていた時。研究所内で何か大きな爆発が起こり

姉さん達が私を逃がしてくれたことは、よく覚えています。

その後、外の世界をさまよった後に、姉さんと出会いましたが、どの姉さんも豹変してしまっていて、

どこか壊れたんだと思いました。

ですが、ただ壊れたんじゃなく姉さんは私を攻撃してきてしまって。

私、あの優しかった姉さんがこんな壊れ方するなんて怖くって・・・」

3066はうつむく

俺たちはいたたまれない表情になりながら3066号を見る。

だが疑念もある。爆発が起こって『壊れる』?

あれの対応は・・・


『壊れる』なのだろうか?『強迫観念』のような・・・『操られている』・・・ような。


でもこの子は今真剣に悩んでいる。

いくら声が無機質と言えど、

いくら目の前にいる子がロボットと言えど

俺には真剣に悩んでいる女の子にしか見えない・・・。


「ソライ、これが演技しているように見えるか?」

「いや。」

「もう警戒しなくっていいと俺は思う。」

「うん。そうだね。」

こういう俺たち以前モンブが言ったようにやはりどこか甘いのかもしれないが。

少なくとも俺らはこの子を信じたい。


そんな空気を払しょくするかの如く、チャーハンが四つ運ばれてくる。

「さ、飯だ!飯!嫌なことがあっても飯は食うもんだ!

そうじゃねぇとやってられねぇぞ!」

「わーい焼き肉チャーハン増しましキターーーーーーー」

もはや肉だらけで見えなくなっているがな。


「おい、これがスペシャルチャーハンかよ!!

超絶うまそうじゃないか!!」

アルゴニックのほうを見てみると

大皿の上に10個のミニチャーハンが所狭しと並んだスペシャルチャーハンがあった。

「なんだかおいしそうです。」

「「「いっただきまーす!!」」」


俺らはチャーハンに手を付けようとする。

その時に気づいてしまった。

「おい、3066号、君、ちゃんといただきますって言った?」

「え、えっと言わなきゃダメなんですか?」

「言わなきゃだめだ。俺はな、挨拶できないやつが大嫌いなんだ。

中でもいただきますは、食をするうえで重要な挨拶なんだ。

食べるものを作ってくれた人やこれから食べる食べ物に対してちゃんと感謝を伝える。

これが大切でなくて何なんだ?」

「えっと・・・はい。いただき、ます。」


俺はこの子がちゃんといただきますを言えたことを確認し、

二っと笑って見せる。

これを作っている奴も飯を作ってくれる奴がいるから生きていられる。

いろんな大切なことが折り重なって今を生きていられるのだから。

それを言うことが大切だってあいつは教えてくれた。

だからちゃんと言える奴が増えることが俺は嬉しい。

「よろしい!じゃあみんな食べるか!」


 俺たちは蓮華を使いチャーハンを食べ始める。

俺はチャーハンの先端に、蓮華を乗せその山を崩し少し掬う

それをそのまま口の中に運びゆっくりと味を堪能する。

ぱらぱらという米の感触が何とも言えない。

「肉サイコおおおおおおおーー」

せっかく味を堪能しているときに雰囲気ぶち壊すなよ馬鹿ソライ!


「おー?」

3066号が首をかしげながらソライの真似をする

なんだろう・・・隣にソライがいるとこいつが猫かなんかと同じ感じがして癒される・・・。


「あ、五目うめーでもこっちの海鮮もカレーもなかなか行ける!

お、この赤いチャーハンは何なんだ?」

「「あ」」


アルゴニックがミニチャーハンに乗った禁断のチャーハンに手を付ける。

「・・・・・・かっっらあああああああああああああああああああああああ」


そうスペシャルチャーハンがなぜ食べたら、やばいのかっていうのが

この激辛チャーハンがついてくるからだ。

このチャーハン相当な辛党でも辛いって言われるくらい異様な辛さだったりする。

現にアルゴニックは舌が真っ赤にしていた。


そしてこの店には重大かつ致命的な問題点がある。


「水!水!!」

アルゴニックが水を飲もうとケトルに手を伸ばす。

そこから出てきたものは


「・・・・・・ってチャーハンじゃねええええかああああああああ!!!!」

そう、この店、マスターがチャーハン以外の水を含む、飲み物食べ物を、

飲ませない食べさせないようにしているため、

給水ケトルの中に入っているものを含めすべてチャーハンである。


「おかしいだろぉおおお!!!この店えええええええ!!!

水ゥ!!水!!」

「ほれ水。マスターがうるさいから外で飲んできなー」


「さんきゅ」

アルゴニックはそういって水を持って外に出ていった。

ちなみにだがこの店で頼んでいけないのは3位スペシャルチャーハン


2位がさっきのスペシャルチャーハンの中に入っている激辛チャーハンのでかい奴、

食いきったやつ曰く舌の感覚がなくなり1か月間は何を食べてもなんの味もしなくなるようだ。


1位がエクサ盛りチャーハン。最強にでかいチャーハンだ。

食べきれたら3万円くれるが負けると3万失う超リスキーなチャーハンだ。

しかも水なしで、さっきの激辛チャーハンもエクサ盛りチャーハンの中に混じっているから

かなり辛くて、大食いじゃないとダメなんだ。

1回挑戦して、食べて失敗して吐いたことがある。2度とごめんだ。


「万一に持ってきといて、正解だったね水。」

「ああ、この店は相変わらず面白いからなぁ」

「だってこの店に来てチャーハン定食頼むだけで

チャーハンにチャーハンがダブってしまった状態になるもんね。」

井之頭〇郎風にソライが言う。

ちなみにだがチャーハン定食というのは好きなチャーハンを3つまで選べる定食?だ。

正直、飽きる・・・


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俺たちは店を出たところで困ったことになった。3066をどうするかだ。

この子の境遇についてまだあまり考えていなかった。

この子を何とかしてやりたい。このままいけばこの子は姉ロボット、

主にノーツー辺りに連れ去られてしまうだろう。

それにこの子を制作者のもとに送り届けてあげたいとも思う。


そうやって考えていると突然横から大きな声で

「敵の潜水艦を発見!!!」「駄目だ!!」「駄目だ!!」「駄目だ!!」

「駄目かぁ・・・」

と非常に聞いたことのある、うるさい声が聞こえてきた。

「おいサイム。」

「わかってるソライ。厄介な連中がすぐそばまで迫ってきてんだろ。」

「よう武山才無。こんなところで飯とはいいご身分だねぇ」

俺は声のしたほうを振り向く

「久しぶりだな大和魂と万歳ストームども。」


俺たちの前に現れたこのミリタリーな六人はX級冒険職、万歳ストーム

通称、万歳突撃部隊。

全員がミリタリーオタクの集団で、俺らほどではないにせよ、

戦闘力と連携力で行ったらかなり強い部類の同業者である。

ただし俺同様に人の都合を考えない節があり強引かつがむしゃらかつ力づくで解決節がある。

ようは俺と似たようなただの馬鹿。ただその特徴的な言動から結構人気者なのが腹立つ。

ほぼ同時期に、俺の武山冒険社と事業を始め『先に』ランクを上げたので何かと、

うちを見下してきやがる傾向があるんで、その喧嘩を買い続けていった結果、

完全にライバルとなってしまった。

あと口が悪くうるさい。

「おいタバコくれよ。(唐突)」

「悪いねぇ俺は持ってない主義なんだわ。」

「チッ。まぁいい。そんなことよりだ。今、時間いいか?」

「今は勝負をしている暇はない。後にしてくれ」

「よし、今いいんだな!」

「いや、よくねえから今クッソ忙しいの!」

その言葉にタマシイ以外のメンバーが口を開く。


「俺は攻撃を行う。半端ものには一泡吹かせねぇと気が済ままねぇや。」

この男の名はカンミ。紺色の軍服を着て薄汚れたバンダナをつけたしわだらけの

50代後半の老兵という印象で。身長が低く手先が器用な草原人(そうげんじん)という種族だ。

万歳ストームのある意味かなめであり工作員だ。

『山軍王-マウンテン・アーミーキング-』と呼ばれている。渋い感じの言葉遣いだ。


「ハイ!ワカリマシタ!」

この男の名はワア。体が男性なら岩や鉄のように固い赤い模様が入った石流人(せきりゅうじん)だ。

でかく2m越えのタンクトップを着ておりハゲで筋肉もりもりマッチョマンだ。

つねにニコニコと^p^って感じの笑顔が欠かさない爽やかな感じの男だ。

めちゃくちゃタフで壁にされると攻撃は通らない。

通ったことがない。片言でしゃべり、

特徴的な声をしている『ハイ!マッチョ・ソルジャー!』の異名がある。


「了解であります!」

こいつは吉田(ヨシダ)飛弾(ヒダン)。頭にかぶったミリタリーヘルメットが特徴で、

種族はアナウサギの獣人だ。

ニッちゃんやムッチーと同級生でニッちゃんたちと仲良くケンカしている。

ニッちゃんたちの仲はある意味、俺とタマシイ以上にとげがある感じで、仲が悪いかもしれん。

学校で何があったんだか・・・。

二つ名は『デモリッション・バニー』

基本あります調でしゃべる。


「攻撃だー燃えてくるじゃあないの!」

こいつはメダ。 赤い髪と一本角と黒の軍服のマントが特徴的な奴で正直戦闘したくない・・・。

縁の下の力持ちというか、影が薄いから下手な行動をするといつの間にかやられている。

つまり隠密行動(スニーキング)させれば、右に出る者はいない。

こいつを意識しながら二手三手を考えなければならない。口を開けば交戦的だ。

結果として、ついたのが『ミエナイチカラ』という二つ名である。


「敵艦発見!!我らが最強たるゆえんを見せてやろう。」

この男の名はエイ。髪の毛で光合成し栄養素を創る妖精人(ようせいじん)という種族だ。

カーキーの軍服に種族特徴の緑の髪に長耳。

万歳ストームの副参謀、交渉を担当しており、頭がよく。危険感知技術がこいつの強みだ。

素性を明かしたがらず不気味な奴だが頭の良さははっきり言ってタマシイ以上。

『大本(だいほん)エイ発表(はっぴょう)』という二つ名があり

常にどこか客観的な口調をしている


「だが我々の意見は満場一致で貴様らとの勝負をする方針だ。さぁ我々との勝負を受けろ!!」

最後になったが

大和(ヤマト) 魂(タマシイ)。万歳ストーム、代表取締役社長。種族は黒髪黒目の人間だ。

深緑の軍服が特徴的な男で。

熱血漢、口がうるさく、うざく、全力で物事につっかかる、

そしてこいつは強い。腕力もそうだが全体的な能力が馬鹿みたいに高い。

厄介なのが成長能力そのもののスピードの速さだ。相手にしてたらキリがない。

あと、なーんか、俺と正確の相性が悪い。腹立つ。


この厄介でうるさいのが俺らのライバル。万歳ストームだ。


「えーーーもうじゃんけんでいいじゃん。勝負なんてさ。」

「駄目だ!それはもうやったからな!

まさかとは思うが我々に負けるのが怖くて、敵前逃亡か?

そちらの事情など知ったことはない!負けっぱなしでいられるか!我々との勝負を受けろ!!」

「ハイ!」

「話聞け!!」

「ヤツラヲタオセー」


あ、やばいいい加減キレそう、このうざい連中。

暑さのせいか頭ももうろうとしつつある。

怒りでどうにかなりそうなレベルだ。

「あぁ!!もうわかったよ!!やりゃあいいんだろ!!やりゃあ!!!」

「勝負でも我々は勢いをとどまることはないだろう。」

「おいサイム・・・本当に引き受けちゃっていいの?僕かーなーり不安なんだけど」

「おい吉田!」

タマシイの奴がそう叫ぶと若者が出てきた。

「吉田です!」

「勝負成績を教えろ。」

「は、勝負は現在前回のかくれんぼで20対20、5引き分けになりました。」

「ということはここが世紀の一戦!さて勝負・・・サイム!あのバイトはどうした!?」

バイト・・・ニッちゃんか・・・。

「家の掃除を押し付けた。」

「今すぐ呼べ!!お前たちとは対等に戦いあいたいのだッ!!」


「へいへい・・・。

・・・もしもし~ニッちゃん?」

「サイムさん!何やってんですか!かえって掃除してください!」

怒ってらっしゃる・・・そりゃそうか・・・すまない・・・。

「あ~その節(掃除)はごめんね。でもね、目の前にタマシイの奴がいて帰るに帰れなくって・・・。」

「こっちは掃除が大変でムッチーにも手伝ってもらっていたんですよ!

何、同業他企業(バンザイストーム)と遊んでんですか!!」

「ニッちゃん、これどこにー・・・。うわ!これ、男物のパン・・・」

ムッチーの声が電話越しに聞こえる・・・やばい。パンツそこら辺においたまんまだ。

男でもこれは恥ずかしい・・・

「いや・・・本当にごめん。ボーナス出すから・・・

マジでごめん・・・。

とりあえずタマシイが呼んでいるから来てくんない?」

「はぁ~わかりました。これでろくでもない用事だったら殴り飛ばしますよ!

覚悟してください!!」

ろくでもない用事なんだ・・・確実にろくでもない用事なんだ。

覚悟しておこう・・・右で殴られるか・・・左で殴られるか・・・

下手すりゃ両方か・・・オラオラか・・・

考えるだけでぞっとする。


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20分後


「こんなところで油を売っていたんですか・・・呆れますね。」

さっき炒飯を食べた「つくるよ!」からさして距離のない位置にある広場に俺たちは来ていた。

ニッちゃんが来てくれたはいいものの・・・。

ニッちゃん、めっちゃ怖い。

「お久しぶりです、サイムさん。」

ムッチーにいやされる。かわいいし愛想がいい。何だ姿だけで放たれるこの包容力は・・・

とても先ほどまで俺のパンツを見ていたとは思えない。

ほんと、適当においていて済まない。

「よぅ、ニッちゃん、ムッチー。」

「あれ?ムッチーイメチェンした?」

「はい。髪をちょっと・・・。」

ソライが何気ない一言を放ち

気づく

今までは目全体を覆っていた前髪が右眼の部分をよけるように

セットされており片目しか隠れていないようになっている。

あと頭にあったお団子がない。


「この前ぶりであります。草島さん。睦月さん。」

「あ、吉田君。ということは・・・」

吉田とニッちゃんの間にピリリと火花が散るような光景が目に浮かぶ。

ひりついているというか、ある意味俺とタマシイ以上にライバル視していやがる


「そういうこと・・・。ムッチーも巻き込んでごめん。補欠頼むわ・・・。日給を出すわ・・・。」

日給という言葉にムッチーが

「内容によっては割増してくださいね。」

ちゃっかりしてる発言をしてきた。たくましい。




「よし!じゃあこの6人で、勝負を開始する!!」

「ん?6人ちょっと待ってくれよタマシイ!!

お前らまさかこのちっこいロボットと、さらにちっこい謎生物ももしかしてカウントしてる?」

「よし!大和魂を見せてやる!!!」

「いや、聞けよてめぇ!!」

まてまて、こんな幼女ロボットと馬鹿みたいに飯を食らうことと

寝ること以外役に立たったことない生ものなんて戦力外を連れてこいつらとの勝負受けるのか!?無茶言うんじゃあねぇよ!!


「今回の勝負内容は前回勝者の我々が決めさせてもらう!!」

「だから聞けよ!!!」

「さすがだなタマシイ。フルで戦える。」

「燃えてきたであります!!」

「やはり我々は6人全員の力を出してこその暴風の嵐となる。」

「ふ、実にいい気分だなぁ。タマシイよぉ。経験の差を教えてやる。」

「ハイ!」

あーーーーもうこいつら話聞かねえええええぇー


「勝負のルールは簡単だ!ここに数枚の依頼書がある。

どれも街の内部の困りごとだ。これをそうだな・・・二つ解決する。

町の依頼を解決後、その後あそこに『タイショウモダンタワー』があるだろう?

若干さびれているけどこの近辺じゃあ重要施設だ。

そこを決められたポイントにある地下と上層の依頼を

それぞれ1つずつ、合計2つ解決して突き進む。

そして最終的に地下と頂上の両方のゴールに三名ずつ六名全員でたどりつく。以上だ。

ようは街の依頼2つ、塔の依頼2つ

合計4つを解決し

2つのゴールにたどり着くだけの競争だ!!」


あー依頼解決系のタイムアタックか。

「感覚としては肝試しとか借りもの競争みたいなものってことね。はいはい。」

「ハイ!」

「我々の勝利は近い。」

「チッ、仕方がねぇやってやるよ!!」

もうこいつらに対してはほぼやけくそだったりする。


「ではここから依頼を2つ取れ。街の奴だ。」

「はいはい・・・」

そういって手渡された依頼書からまず街の二つ取る。

依頼内容は・・・げッテッシュ配り百個に迷子の猫の捜索!?

これめちゃくちゃ時間がかかるんじゃないのか?

「ふむ、我ら万歳ストームは、マンホールの写真を50か所撮ってくることと、

牛乳の配達20軒か」

あいつらの依頼のほうが謎だな・・・

「サイム・・・依頼こなしていけるのか?」

「やるだけやってみようか・・・ここで諦めるのはカッコ悪いし。」

「じゃあ次にここから2つ依頼をとれ塔の奴だ。」

・・・依頼書をとる。

「上層部サーバーのファイル整理。地下・・・謎の幽霊を何とかしろ!?はぁ!!!?」

幽霊なんて無茶苦茶だろ・・・いるわけねーじゃん。

ちらっと女子組を見る。


あーーーニッちゃんが青くなってる。

ムッチーはコクンとうなずく。そりゃそーか。

覚悟して勝負しなきゃな。

最悪のことも考えよう。

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俺たちは万歳ストームがあらかじめ持って行ったテッシュの入った箱と猫の写真を受け取り

万歳ストームの吉田の合図でスタートすることになった。

「行くであります!位置について!」

クラウチングスタートの体制をとる一同

「ああ!」

「行くぞ!よいドン!!」

あいつ!!?スタートの掛け声が雑ッ!!

「タマシイッ!『よいドン』ってなんだよ!」

「ばんざあああああああああああい!!」

「ごまかすなあああああああああ!!」


俺たちはいっせいに駆け出していく

「サイム!どこに行く!?」

「ショーワ駅だ!駅なら何とか配りきれるはずだ!」

「アルゴニック!塔の時に壁吹っ飛ばしたあのでかい手で、3066号を背負っていけるか?」

「ああ、できる。来い!ラスチ!」

アルゴニックが巨大な鉄の手を背中から生やし、3066号を掴む。

いきなり走ったんで昼間のチャーハンがこみ上げてきそうだ。

それでも、この勝負にちょっとワクワクしている自分がいた


炎天下の中全力疾走で移動したんで、汗だくになりながら駅に到着。

「あっつい・・・」

「はぁはぁ・・・じゃあ配るぞ・・・」

「おーーー・・・」

俺たちはポケットティッシュを配ることにした。

ティッシュには商店街にあるサンマルピアノ教室と書かれており、

これを人に手渡していけばいいということが分かった。


1時間後

「サンマルピアノ教室でーす。よろしくお願いしまーす。」

道行く人たちはたまーにテッシュを受け取ってくれて

おかげで順調に全員で合計して40個消費することができた。

「もーいや!もー知らん!マジあっついし!やらん!」

アルゴニックが駄々をこね始めるまでは順調だった・・・


「そんなことを言うなよ。これ勝負だから、

早く終わらせて次の依頼まで行かなくっちゃいかんだろ。」

「そうは言うけど!俺は暑いの嫌だもん!誰だよこんな暑い世界創ったの!」

「お前だよ!!」


「大体さ、なぜちまちま一人ずつに配らなきゃいけないわけ?

めんどくさいだけじゃないか!」

ああ、こいつ根っからのめんどくさがり屋なんだな・・・

「確かに僕もアルゴニックの意見に賛成かな・・・

このままいったところで時間をとられて、勝負に負ける可能性がある。」

「ほら見ろ、ソライもこう言ってる。」

「やるんならできるだけ、人を集めれそうな方法を取れたらいいんだけど。」

「人を集める方法か・・・」

うーむなんかいい方法はないかな・・・

「・・・思いついた!!なぁアルゴニック、君の中にあるカイの力でやってほしいことがあるんだ。」

「何を?」

「それは・・・・・・だ!!」

ソライの一言で場がシーンと静まり返る。

「うーーーん。一度やったらへとへとになって、できなくはないけど。まぁやってみるわ。」



準備が整い数分後

「準備完了!!」

「大丈夫です。」

「「いくぞおおおおーー」」

「「「「おーー!!」」」」

俺は、オーディエンスに向かって言う。

「皆さん俺たちのマジックショーに、集まっていただきありがとうございます!!」

ソライの用意した作戦とはまずアルゴニックの中にあるカイの力でここら一帯にマジックショーの宣伝をやる。その間これまたカイの力で俺たちは特にニッちゃんをメイクをする。その間、ソライが駅に事情を話し、許可を得る。あとはステージもろもろをアルゴニックとカイの力で整えれば完璧。

キャストは俺とニッちゃんが、マジシャン

3066号がマジックを受ける側、アルゴニックが舞台装置

ムッチーとソライがティッシュ配り

ちなみにアルゴニックは俺のそばで、疲れたのかほぼくたばっている。


「では早速やっていきます。」

「はい、では皆さんまずはここを見てください。

ここ」

ニッちゃんはまず、地面を指さす。

「何なら触っていただいてもかまいません。

ここには、何もない変哲な地面ですね。ここからなんと等身大の箱を出現させて見せます!」


「ハイ、3・2・1。」

「クリエイトぉ・・・!」

アルゴニックが言うと同時に子供がすっぽりと入りそうな巨大な箱が出現する。

「おおぉぉぉ」

観衆は驚いたように見やる。

ちなみにもうアルゴニックは炎天下で横たわって干からびそうなんだが・・・あと家に帰ってからきれいにしないと・・・帽子になんか砂利がくっついている。


「ではこれより人体切断マジックショーを行います!それでは助手の3066号君入ってくれたまえ。」

「はい。」

3066号がボックスの中に入る。

「それでは剣を」

「おぇ・・・クリエイト!

(小声で)まず、そろそろ【ペナルティ】がきつくなる・・・。」

アルゴニックの周りに3本の剣が出現する。

なんか吐きそう声が聞こえたが気にしない。


「見てください。この剣、この剣は固い本物の剣です。

この剣を今からソライが少女に刺していくんで、見ていってください。」

剣を見て息を飲む観衆。

「はい、まず一発!」

ソライが箱の中に剣を挿入する。


「きゃーーー」

3066号が叫ぶ。しかもかなりリアクションがガチだわ。

彼女の顔についているゴーグルの目玉が左右別々を向いていやがる。

「Oh・・・」

観客が戸惑う。

「それじゃ二本目!えい!」


「きゃあああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」

さっきよりもかなり怖く叫ぶ。

ここら一体の人が集まってくる。


「ッ・・・ぁッ・・・」


そしてボックス内でがっくりとうなだれる3066号。

さらにボックスから、流れ出す血(赤い絵の具)

観客は若干ドン引き。

中には警察に連絡しようとしている人もいるようだ。

正直やりすぎた・・・


「そ、それでは。3・2・1でボックスの中身が開かれます!いきます。3・2・1!ハイ!」

ニッちゃんがそう叫ぶとボックスがもやを出して、

「ばぁーん!」

縦に割れ中から元気で無傷な3066号が出てくる。


「じゃーん!3066号は無事でした!」

「おおおぉおおおおおぉお!!」

即席で作った簡易ステージは拍手に包まれる。

「それでは皆さん、記念にポケットティッシュをどうぞ!」


「あとすいません!実は皆さんに協力してもらいたいことが一つありまして、

この猫を見かけたという方はぜひ教えてくださいませんか?」

ソライナイス。これで猫捜索の依頼も何とかなりそうだ。

その後、俺たちはポケットティッシュを無事に配り終わった。


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「えーーーっと、ここら辺に例の猫がいたってさっきのお客さんは言ってたんだけどなぁ。」

「暑いですねー。ムッチー飲み物のむ?」

「うん、ありがとうニッちゃん。」

「俺はもうとっくにこの暑さでくたばって、干からびてると予想する。」

「いや、でもついさっき見たって言ってたし、たぶんこの近辺。」

俺たちはショーワ駅から、割と近場にある住宅街まで来ていた。

さっきのお客さんの情報を頼りに、ここまで来たはいいものの。

いったいどこに猫がいるんだよ・・・

これだから猫探しの依頼は嫌なんだ・・・


「にゃーん。」

「ソライ・・・今の聞こえたか?」

「ああ、聞こえた。こっちに猫がいる。」


「いました!」

ムッチーの声で気づいた。塀の上俺はそーっと近づき確認する。

そこには写真の通りの猫がいた。

「みーっつけた。ゆっくりと近づけよみんな。」

俺たちは慎重に猫に近づいていく。


「にゃっ!?にゃ」

猫はすぐに気づいたらしく

素早い逃げ足で、暑さでぽけーっとしている、アルゴニックのほうを

抜けていった。

「そっちいきました!!」

「アルゴニック!!」

「え、なに?」

ボケーっとするのは無理ないだろう。この暑さでしかも徹夜ときたもんだ。

あとさっき無理させすぎた・・・。


「逃がすな!追え!!」

「にゃにゃにゃ!」

猫は一層素早く路地のほうへと入っていく。

俺たちは路地のあれやこれやを壊しながら突き進む。


「くっそ!獣人である僕の足より速いのかよ!」

「相手は本物の獣だ!仕方ねぇよ!」

「ああぁまったくこんな時に便利な青い猫型ロボットがいたらなぁ!」

「猫型ではありませんがロボットならここにいます。」


ソライに並走する形で、3066が走っていく。

この子意外に足が速い。

「捕まえるの協力してくれねぇか?3066号?」

「かしこまりました。コードユニットA-06展開します。」


 3066号の服の上から出よくわからないが腰辺りから、ガコっと何かが出てくる。

それは大量の巻き取られた、様々な色の極太の電気の配線とかでよく使うコードだった。

電気のコードが10本くらいがタコやイカの触手のようにうねうねと動き出し、

猫に迫っていく!

「にゃ!?にゃにゃにゃにゃ!!?」

コードはだいぶ長く少なく見積もっても10mほどはあり、3066号の体の中にあったとは思えないほどに多く長い。

猫は慌てて路地を左に逃げるが、そこにはもう大量のコードがびっしりと敷き詰められていた。

「捕らえました。」

「にゃーん・・・」


「すげぇなお前、一体全体何なんだ?あの電気のコード。」

「このコードは私の意思で操れる、いわば第三の手足のようなものです。」

そういってコードをうにょうにょしてみせる3066号。

おそらく、ノーツーの背中に生えている腕やモンブの射出する腕のようなものだろう。

猫を抱きかかえているところからだいぶ重いものを持ち上げられそうだ。


「うっひょおお何これすげぇええ!」

ソライの馬鹿がコードにぐるぐる巻きになる。

ムッチーとニッちゃんはあの犬(ソライ)を辛辣な目で見ているが

3066号はほほ笑んで喜んでいるようだった。

「なれればかわいいものですよ。」

「お、おう。そうか。」

「さてと、猫も捕まえたし、あとはタイショウモダンタワーへ昇るだけだな!」


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ノヴァアージ-nOva urGE- ~願いをかなえてやろうと 言われ、リアルファンタジーな世界を巡る24つの心と、 七つの絆で突き進む熱き衝動の冒険社~ ラクルドゥ @racledu

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