第3話_起『友情と別れのパレット:睦月夕立』

私、草島日は今日は友達のムッチーとショッピングを楽しむために

ショーワ町のわんわん像の前で、待ち合わせをしていた。

自宅から歩いて数分の地点にあるこのわんわん像はなんで立っているのかは、

地元民である私たちでさえ知らなかった。

だがいい目印になっているので私たちはよく利用している。


5分くらい像の前で待っているとムッチーがやってきた。

ムッチー、確か本名は睦月夕立、でもみんなはムッチーって呼んでる。


ムッチーは中学のころからの私の親友で情報処理部に所属してる。

昔は、いろいろとパソコンの操作とか教えてくれてたっけ。

ムッチーは黄緑色のスカートを揺らし、後ろ髪をお団子状にくくっており

長いピンクの前髪でこちらを見て、手を振る。

私は会うたびに思うのだがムッチーのような『メカクレ属性』というやつは

本当にこっちが見えているのだろうか・・・?


ちなみにだがムッチーは石流人(せきりゅうじん)である、

石流人(せきりゅうじん)とは人間より骨の数が異常に多く

成長するごとに女性は水のようにしなやかな体を持ち

男性は岩のように硬い体を持つという種族である。

なお顔や体のどこかに石流人(せきりゅうじん)たる模様が

浮かぶのも種族特徴のうちの一つである。

模様の色や形で血統や皮膚の硬さなどの種族としての特色の強さが

あるらしいけど、私は別種族だからいまいちわからない。


「ムッチー!」

「ニッちゃん!」

ひしっと炎天下の中抱き合う私たち、

これは私たちの中での儀式みたいなものだ。

なにせムッチーは柔らかい。やわらかくてぎゅっとしたくなる。

私に無い胸(もの)を持っている。

ぎゅっとすると心が落ち着く・・・。

女の子に生まれてよかったといつも思う。


心の中のソライさんが

「あらぁ~百合きたああああああああああああああああ!!」

と叫んだので心の中のソライさんを丁寧にぶん殴る。

この人は心の中まで失礼だな・・・。


「今日は何買う?」

「今日はお洋服とかアクセサリーとかがいいなぁ。」

「じゃあいこっか。」

「うん!」


 私たちは第8商店街の下層にやってきた。

下層はあまり治安がよろしくない代わりに、

質がいいお宝がたまにあるのだ。


昔、サイムさんとソライさんと買い物行ったときは、

めちゃくちゃ目利きと値切りをして、こっちが恥ずかしい目にあった。

でも、ムッチーとなら問題はない。

あのあほ二人のようなことにはならない。


「よし、じゃあ何から買う?」

「まずはアクセから行こうよ!」

そういって露天を物色し始める。


「お、草島の譲さん!いらっしゃい!」

「あ、どうも。」

私の実家は神社をやっている。

この人、良く神社に来る参拝者さんだ。

「いいのそろってるよ!見てみな!」

「どれどれ?」

「あ、これなんかムッチーにあうんじゃない?」

私は黄緑のビーズでできた腕輪をムッチーに見せる

「・・・いや、でも、これニッちゃんのほうが似合うよ~」

「え、そうかなぁ?」


ムッチーは少し考えた後、

突然、ごそごそとカバンを探って。

「じゃあ私は・・・

え、うん。

あ、うん

わかった。

ニッちゃんはこっちのほうが似合うって。

でね、私はこれの色違いを買えば・・・」

「あ、お揃いだね!」



・・・ん?なんか今言い方おかしくなかった?

なんでカバンを・・・。


まぁいいや

「店主さんこれください!」

「お、譲さん!お目が高い!そいつはまじないがこもっているよ~~!」

「それってどんな?」

恋愛成就とか?交通安全とか?まぁ神社(わがや)基準で考えちゃうとこうだけど。

「譲さんの神社で俺が『いいもん来い!』って念を込めたのさ!

がッはッは!!」

「・・・」


・・・なぜよりによって私の神社(じたく)・・・ありがたみなさすぎる。

よく参拝する理由はこれか・・・。

私が巫女服で同じことをやったお守りの方が効果ありそう・・・。

・・・私の家で、何してんだろ・・・この人・・・。


まぁ出来は良かったので

ムッチーと色違いのアクセサリーを買った。


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次は服を買おうってなって服屋に入った。

この服は古着屋さんけど若者向けの結構きれいな服が多くて

頻繁に商品が変わるから私たちのお気に入りの店の一つだ。


「ニッちゃん、これとかニッちゃんに似合うってさ!」

「ムッチーこそこれとかどうかな?」


「わぁニッちゃんセンスいい!

よーしもうちょっと待ってね。

本気出すよー。・・・・・・」

ムッチーはまたカバンを探り出し


「えーと・・・

うん。

・・・で、それと、これだね。

わかったよありがとう。

ニッちゃんさっきの服にね。

これとこれを組み合わせれば・・・

ふふ・・・」

ムッチーはカバンに向かって誰と話しているんだろう・・・?


「え、ちょっとムッチー!?」

ムッチーが手をワキワキし、更衣室まで誘導される。


数分後


「え、嘘。これが私?」


私は若干幼い顔立ちをしている。

だから今までは子供っぽい服が似合うと思っていた。

けど、今の私は黒色で大人っぽい服に身を包んだ淑女だった。

髪の毛までムッチーに若干セットされた。

「ど、どう?ムッチー?」

「わぁニッちゃん綺麗!」

「あーこれ買おうかなぁ・・・」

と値段を見るため、札を見る。


そこにはゼロがいっぱい並んでいた。

正直、給料面で不安がある私は数えたくなかった・・・。

「た、高い!私のバイト先の給料、何か月分だこれ・・・」

「あ、値段まで気にして無かったよ、ごめんなさい!」

こうして結局服屋では、何も買わずに終わった。

あーあサイムさんがもうちょっと給料を出してくれればなぁ・・・

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