第3話_起承転『決別とトモダチのイシ:ろある堂』

あれから一週間が経った。

俺たちはそれまでと何事も、変わりなく日々を過ごしていた。

あれから報酬もしっかりと支払われたし、何事も万事順調である。


仕事も当分はしなくていいと思っていた。

ちなみにニッちゃんは今日は休みだ。

友達とショッピングに行きたいんだと。

まぁそんな日の午前のある一場面

今日も今日とてソライとともに二人で、

テレビでワイドショーを見ながらだらけきったそんな日にだった。

ソライがせんべいを食いながらこんなことをつぶやくまでは


「なぁサイム、アルゴニック、どうする?」バリボリ


あ、考えてなかった。っていうか


「完っっ全に忘れていたわ。どうしよう、

置物として置いておいてもいいけど・・・」

「結局、あれから起きないし、どうすることもできないよね。」バリボリ

「うーんソライさ、俺一つ考えがあるんだが・・・」

「どうした?」バリボリ

「これさ、マチルダさんのところに売って、借金を返すっていうのはどうだ?」

「お、サイムらしくないまともな意見だな。」バリボリ


「ソライ、意見を言うその前に、お前はいい加減せんべいを食い終われよ。

それはまともな意見を聞く態度じゃないからな。」

「へいへーい。」


「んで、俺らしくないってどーいうことだよ。」

「いや、お前のことだから何かのイタズラに使うのかなー・・・って。」

「せっかくの戦利品をそうやすやすと使いたくない。

でも邪魔だ。だから売って金にしたい。」

収入があっても金がないことには変わりはないし


「まぁね・・・確かにあるだけ邪魔なんだもん。

今朝寝ぼけて躓いたし、それにどうせこれ、遺跡の出土品だろ。

鑑定屋のマチルダさんも喜ぶと思うし、

ご機嫌取りようの品として売っちゃおうか。」

そういえば歯を磨きながら今朝、盛大に転んでたなこいつ。

思い切り言い切り指さして笑ってやったが。

「それにだ。マチルダさんが依頼を斡旋してくれなきゃ

またピンチになるだろうしな、妙案だろ?」

「いいんじゃない?」

「うっし、じゃあ、ろある堂行こうぜ。」

「あ、ちょっと待った。」

ソライが俺を制止する。


「どした?」

「これも持っていこうよ。この超越の歯車。」

そう実はあれから歯車の件を、なんだかんだで依頼者に伏せておいて、

ソライが歯車をパクることに成功したのだった。

「お、そうだな。これもまとめて売れば、

借金どころか手元に金ががっぽりと入るかもしれん。」

「これでニッちゃんに給料を全額払えるね。」

「前回の依頼で半額は払ったから当分はいーだろ。」

「サイム・・・それブラック会社だよ、労基で訴えられるよ(ガクブル)。」

「そん時は労働局の連中をお前が追い返すさ。」

「僕がぁ!?いや確かに交渉担当だけどさ!」


多分ソライなら実際できる。

ただソライが労働組合なんか作られると俺が辞職するだろうけど。

「頑張ってくれたまえよ専務君!」

「えぇ~」

なんて戯言を言いながらアルゴニックと歯車を持って外に出る。


炎天下の中、俺たちはこのショーワ町の中を進む。


ショーワ町は、この国、『旭我きょくが』の中でも

戦前からある歴史が古い町で、トレーラーハウス群のごとく

強固な木材でできた箱状の住宅地が上下左右にところせましと積まれた、

都市外周部の俗にいうスラム街のうちの一つだ。

この外周部の町ってのは都市にとって大事な役割を果たす、

それは町自体が巨大な壁となってモンスターなどの

外敵から身を守ることができるっていうのがこの町の具体的な役割だ。

なお、めちゃくちゃでかい地震みたいに

めったなことでは大型のモンスターは襲ってこない。


戦前から町として、ある程度機能はしていたが

この町はおもに1990年代バブル前後に人口爆発の結果、

都市の拡張と再開発により発展してきたよくある町で、

基本的に当時の政府のめちゃくちゃな開発プランにより

路地が無駄に入り組み続け、大量の空中回廊、

むき出しのパイプ、日の届かない道、

建物間で洗濯物を干す主婦、適当に張り巡らされた電線、

怪しげな店、濁った空気、前時代的な街並みの要素も多く、

さらに整備不良で老朽化もひどい。

結果としてアウトローな連中がひしめき、不良やジジババ、冒険職

冒険職が親で命を落とした結果行きついた孤児なんかが

人口の大半の街並みになってしまった。


「おっと、商店街を通るのか?」

「ああ、こっちのほうが日陰になっていいだろ。

ついでだしなんか見ていこうぜ。」


俺はソライに第8商店街を抜けていこうと提案する

ソライは無言でうなずき了承を得る。

そりゃこの町いように暑いからな。

商店街は今日も活気づいていた。

この暑い中ご苦労なこって・・・



「おーいサイム!ソライ!」

商店街を歩いていると呼び止められたので振り返ると。

「最近調子どうだ?」

禿頭の魚屋だ。頭にたんこぶを作ってるってことは奥さんと喧嘩したな。

「よう魚屋!最近はまぁほっどほどに儲けたぞ。」

「またまた~嘘つくんじゃねぇぞ。お前が儲けるはずなんてないだろ~。」


・・・金の匂いがあるところにこのおっさんがある。

鋭い!


「それがな~こちとら命がけで仕事したんで、それなりに入ったんだわ。」

「ほぅ?だったらおめぇこの間の飲み代の付けを今すぐここで払えってんだい!」

・・・

「あ、悪いなぁ・・・今持ち合わせがなくってさ!」

「ほら見ろ、やっぱり嘘だったんでい!」

「あっははは!ご明察」

俺は嘘をついたという嘘をつく。

まずい。ここで、むしり取られるわけにはいかねぇ!


「じゃあ俺たちはマチルダさんとこ行かなきゃならねぇんで、これで・・・」

「おう、いつかまた金返せよ~」


・・・あの禿が馬鹿で助かった~・・・。


しばらく歩いて

「・・・サイム、また魚屋のツケ増やしたなぁ?」

「しゃーねぇだろ。金がちょうど無かったんだよ。そのうち返すよ。」

「マチルダさんはすぐに返さなきゃならんのに、魚屋はそのうちか。

そのうちっていつになることやら。」


俺たちは前方を歩いていると様々な人に声をかけられる。

「ソライ!今度は覚えてろよ!」

八百屋が叫ぶ。

「次は大根をむしり取ってやるよ!」

ソライはあっかんべーと舌を出し挑発する。

俺は『頼む!ソライ!勝ってくれ!』と内心祈る。


また道を進むと

「あらぁサイム~大きくなったわねぇ」

井戸端会議をしていた近所のおばちゃんから

「いやいや、図体ばかりですいやせん。」

町内会で結構お世話になったから頭が上がらない・・・。


「お、サイムさんにソライさんじゃねぇか!オッス!」

近所のリーゼントヘアーの不良から

「おーごくろーぅ。また遊びに来いよ。」

こいつは年齢的に俺の少し下で、道端に落ちていた500円を争奪しあった仲だ。


「こらぁ!サイム!いい加減髪切りやがれぇ!」

理髪店のおっちゃんから

「ぼったくりのテメェのところで切るなんて嫌なこった!」

それに俺は長髪が好きなんだよ!!ヴァーーーカ!!と心の中で叫ぶ。


「あら~サイムにソライ~。今度うちの店に寄ってかない?」

妖艶な感じのややはだけた女性から声をかけられる。

「ああ、寄らせてもらうよ。」

「「コンビニにな。」」

この人の職業はコンビニの店長だ。こんな感じだから夜の店と間違えられる。


「お、サイムパイセン!ソライパイセン!

どこ行くっすか?相乗りしていきますかい?」

『エアーボード』という乗り物に乗った、配達途中の酒屋の娘から

「いや、いいよ。僕らはろある堂に行くだけだし、配達頑張んな!」

「ハイッス!」


基本的にこの町は先に述べた通り、空中回廊で道が大量にあるが何分道が狭い。

なので、バイクや車が走れず、主に『エアーボード』と呼ばれる空気だか磁力だか

なんかよくわかんねぇ力で浮く、スケボーみたいな乗り物で移動する。

なお、15歳からとれる原付と同じくらいの取得難易度の免許がいる。





俺のエアーボードはどっか行った・・・。まぁ免停直前だったし。いっか。




そのまま奥へ進んでいく。



汚いけど、人は、どこか人情にあふれたいい奴らが多い。

それが俺の育った場所ショーワ町だ。

特にこの商店街の連中とは古くからの顔なじみで、

親のいない俺をよく気にかけてくれるいいジジイどもだ。

そして依頼や母校の後輩とかいろいろなつながりであふれた故郷でもある。

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一見すると古風な建物に着く、

家にはツタが絡まり、窓からはガラクタのようなものが見える。

おんぼろで人の住んでいないように見えるが人は住んでおり、

古びた看板には「ろある堂」と垂れ下がっていて、

営業中という看板があった。俺たちはその中へと入る。


ドアベルのチリンチリンという音がし、カウンター越しに一人の

ロングヘアー藍色ゴスロリ少女が、本を読んでいた。

服装は金の装飾をあしらったドレスで、少女は赤とピンクの前髪のメッシュを揺らし

ドアベルの音に応じ、本から目を離しこちらにジト目で顔を向ける。


「いらっしゃい、武山冒険社。今度はどんな面倒ごとを持ってきたの?」

落ち着いていて呆れるような声で尋ねる。


「金・・・」

「金なら貸さないし、あなたたちに高額の依頼を渡す気もない。」

即答である。

「じゃなくって!金を返す算段が付いたから!あんたんとこに来たんだよマチルダさん!」

そういうと少女、いやさながら子供のような外見をしているが、

俺よりも年上で実際は23歳という驚異的身長(140cmよりした)と

若作りさのマチルダさん『本名、書輪 街子ふみわ まちこ』は、驚愕の顔を浮かべる。


「意外ね。あなたたちがお金を返すだなんて

・・・銀行強盗でもやったの?それとも熱があるのかしら・・・明日は雪ね。」


この人と会うといつも迷惑そうな表情をされる。

いや、そりゃあ俺達いつも迷惑しかかけてないし、恩人なんだよなぁ・・・。

借りの数は片手で数えられない・・・。


「いやいや、そこまで驚く必要性はないでしょ!

僕とサイムは、こう見えてちゃんと清い手段で稼ぎましたから!

それにぃ、マチルダさんはいざっていう時の、

僕らの生命線でもあるわけでして・・・」

「まぁ私から返すのは賢明ね、で、何で儲けたの?」

「依頼とダンジョン探索でな!」


マチルダさんはますます、あきれたような表情を作って、俺とソライを見る。


「はぁそんなことか。あきれたわ。

大方、メイジダンジョンのごみを持ち帰ってきたってとこでしょ。」

マチルダさんは俺とニッちゃんが潜ったダンジョンの名前を言い当てる。

「なんで、マチルダさんわかんの!?」

「あのね・・・ここら一体でダンジョンって言ったら、

枯れたダンジョンのメイジダンジョンのことを指すものなの、

最近、落盤事故でもうなくなったけどね。

噂では土木業の陰謀とか聞いているわよ。

ということはあなたの持っているものが、

メイジダンジョン最後の出土品ね。

どうせ、あなたたちのことだから、ごみだろうけど。

とりあえず、座りなさい。」

信用無いなぁ・・・。


俺たちはマチルダさんに席を促され座る。


「さてと、出土品を見せる前に交渉したい。」

「何かしら?」

「まず俺たちはマチルダさんの鑑定結果を信じる。

だがぼったくらないでくれよ。たまにいるからなそういう鑑定屋。」

「それはいくら何でも『大天才少女-ジーニアスガール-』と

呼ばれた私のプライドが許さないし、

全国に支店を置くろある堂にとって、

嘘偽りなく鑑定結果を『正しく』証言するわ。社の信用にもかかわるしね。

だから私のところに来たんでしょうサイム?

こんな当たり前のことを言わなくちゃならないんだんて、

よほどの物を持ってきたんでしょうね?

『人を巻き込む天災-ディザスターピープル-』さん?」


そういうとマチルダさんは俺の二つ名を言う。

はずかしいからやめてほしいんだが、俺は若干照れながら

「ああ、どえらいもんを持ってきたよ。マチルダさん。

まずはこれから鑑定してもらおうか?」


そういうと俺とソライは担いできたアルゴニックを机に乗せる。


「これは・・・?」

マチルダさんは興味深そうに机に置かれたアルゴニックをまじまじと見つめる。

「これはメイジダンジョンの『最上階』にあったものだ。

水晶の中にあって確かアルゴニックって『名乗った』」


「は?ちょっと待って、いろいろと混乱するわ、

まずね。『最上階』って何?

あのダンジョンは最上階までいけない構図になっていはず、

壁をぶち破ろうものなら落盤する危険性がある塔なのに。

それをあなた最上階までどうやって行ったの?

まさか塔の崩壊をさせたのは・・・。」


「違う違う!!あれは俺らがやったんじゃない!

ギルドに5階に隠し通路があるっていうチラシがあったらしいんだよ。

それをうちのバイトが見つけて、俺が即決。でその場で行こうってなったわけよ。」

塔の崩壊に『関与』はしたが、『崩壊させた』のは俺らじゃあない。

嘘は言ってないぜ。


「ギルドにそんなチラシあったかしら?

まぁいいわ、次に水晶の中から掘り出したっていうのはまぁ信じてあげる。

本当は実物を見たいところだけど、

で、問題は何?『名乗った』?何よ、名乗ったって。」


「こいつがしゃべったんだよ、そんでもって動き出して

ダンジョンが崩れ落ちる限界ギリギリのところで、

ダンジョンの壁をドカンとぶっ壊して、

俺とそのバイトを空中に頬りだしたんだよ。」


「・・・」


今言ったことは残念ながらすべて事実だ。さぁどう出る?


「・・・」

「・・・とうとう詐欺までするようになったのですね、警察・・・」

「いや!詐欺じゃないから!やめてくれよ、マチルダさぁ~~ん!!!」

「話になんないわ。さ、帰って帰って、今私はそれどころじゃないの。」

「待ってくれマチルダさん!話を聞いてくれ!本当のことなんだ!」

「今時、初心者の書いた創作小説でもまともなシナリオ書くわよ。」

「だが!実物がちゃんとここにあるんだ!

これを鑑定していってみてからでも嘘かどうか決めつけるのは遅くないだろ!」

「そーだそーだ!」


「はぁわかったわ、どーせ、こんな・・・ガラクタ・・・

おもちゃか何かだろうけど、ちょっと待って、今調べる。」

マチルダさんはそういうと手袋をしてルーペでじっくりとアルゴニックを見る。

こういう時のマチルダさんは本気だ。


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マチルダさんは本気でじっくりと調べる。


「もしダンジョンから出たなら時代がわかるものがあるはず・・・

・・・

・・・ん?ないわね・・・。

少なくとも500年ほどの歴史上によく使われた痕跡がない。

・・・いや、1000年前の痕跡すらない・・・。

・・・いつの時代かしら、これが生まれたのは・・・」


マチルダさんは手袋越しにゆっくりと触る。

「・・・え、何この素材?

一見するとフェルト生地のように見えるけど、

鉄のように頑丈で布のように柔らかく

またゴムのように伸縮するカーボンに近いけど、違うもの。

まったく見たことない物質でできてる。」


おっとこれは期待しているができそうですなぁ。

ソライも俺もさっきから笑みがこぼれている。

ソライなんかさっきからよだれが出ているぞ。

お前はさっきまでせんべいバリバリ食っていただろうが!と内心ツッコむ。


「それにこれ未知の物体ってだけじゃない。たぶん相当古い物よ。

この国ができて3000年以上経つけど、

どの時代や文明にも当てはまらない形をしているし。

いやでもこれがメイジダンジョンで発掘されたことから考えると・・・」


やばいマチルダさんの実況に対してワクワクするけど・・・


けど、ソライのよだれが気になって仕方がねぇーーー!!!

難しい話よりもこっちの方が俺のような馬鹿には気になって仕方がないんだよ!

なんでいちいちよだれが上下するんだよ!

マチルダさんのテンションが高ければ高いほどよだれが相対的に下に行って

一旦、冷静になるとよだれが上に行くんだよ!

おかしいだろあいつのよだれ!!

あと歯に地味にせんべいの海苔がこびりついてることに気づけソライ!


1時間後・・・


「ぜぇぜぇ・・・はぁ・・・結果を言うわ。」

「え、あ、はい。」

ソライのよだれに注目していて、マチルダさんの解説半分くらい、

聞いてなかったわ。

「それでマチルダさん結果は?」

ソライがよだれを引っ込め聞く体制に入る。


「わかったことから言うわね。まずこれは完全に未知の物質でできているわ。

おそらく触った感じギアとかを形成する粒子に近い何かと思うわ。」

「ギアの粒子って・・・俺たちの武器になるガジェットに

個別のギアをセットして武器を構成する、あの粒子か?」

「ええ、本来武器の粒子はギアに詰まっていて、ガジェットの電気によって展開し

ずっとフル稼働しても、粒子が存続する時間は約1日が限界。

それ以降は新品でもフル稼働するために最長で1日はギアが使い物にならない。」

「ああ、そうだ。だから俺とソライは同じ武器を買って使ったら交代させている。」

「サイム、聞きたいのだけれど、『これ』何時間・・・いえ、『何日間』この状態でいるの?」

「少なくとも・・・3日・・・ってマチルダさんまさか!」


「ギア粒子で外に出しっぱなしで3日間は以上よ・・・。

だからこれはギア粒子じゃない。どの元素にも属さない物質。

そして驚くべきことに、おそらくこれは『生きている』わね、かすかに心音が聞こえる。

そしてこれはおそらくこの星で限りなく、最初の時代に生まれたことが鑑定結果でわかるわ。

どんな時代の痕跡もない。でもこの形状、もしかしたらだけど、

この国の建国神話ででてくる。あれかもしれない。」


「建国神話?何それ?」

俺が聞くとマチルダさんはこう告げる。

「詳しい文献は戦争なんかでほとんど紛失しちゃったんだけど、

ただ1つ残った壁画からは、ありとあらゆるものを創った創造主は

確かこんな帽子っぽいものをかぶっていたと言われてるわ。」

「へぇーそういえば、アルゴニックは自身が創造主とも名乗っていたな。」

「もしも、そうだとしたらこれは大ごとよ。

『最初の時代』のしかも『創造主』そのものを見つけてしまうなんて。

サイムあなた自身のしたことをわかってる!?

もし、これを研究機関に渡せば3日間武器を外に出せる発明品ができるかもしれないし、

犯罪組織に渡せば、街の武器発生の妨害電波をかいくぐれる

違法なガジェットを大量生産で来てテロに使われるかもしれない!」

この町を含む都市には安全のため都市内に限り

武器のギアを発生させないジャミング電波が出ている。

武器のみにしか効果がないのでガジェットやほかのギアには効果がない


「さーせん。ま、いいだろそれより買取金額をだな。」

「もっと自覚を持ちなさい!」

「いやーそー言われても発見しちまったもんは仕方がないだろうよ。マチルダさん・・・」

「はぁ・・・わかったわ。」


「まった、サイム。もう一つ鑑定してほしいものがあっただろ。」

「おっと、そうだったぜ。マチルダさん、実はこれも鑑定してもらいたいんだが・・・」

そう言って俺は懐から、紫色の超越の歯車を取り出す。

「・・・ッなんでこれをあなたたちが?」

「森で発見した。」

「・・・いや、よく見ると『オメガ』とは違う・・・。だけど・・・これは・・・」

「どうしたんですか?」

「いえ、なんでもないわ。鑑定を始めるわ。」


30分後

「結果から言うわ、これも未知の物質よ。

それにこれもあなたたちの使ってる『ギア』と大きさ、

要は規格が違うけれど近しい何かわね。」

「じゃあそれをガジェットにはめると武器になるのか?」

「ガジェットには大きいからはまらないわよ。

まぁこれが一体何なのかは説明できないけどね。」

「そうか・・・で、マチルダさん、」


「「これらの買取金額は?」」

ハモった。


「・・・・・・買い取れないわ。」

「え」

「なんで、俺たちが苦労して取ってきたのものを・・・」


「1.時代が古すぎて正式な買取金額がわからない。

2.買い取れたとしてろある堂じゃ高額すぎてお金が払えそうにもない。

まぁざっと上げるとこの二点ね。」


「そんなぁあああああああーーーー」


「絶望した!ろある堂に絶望した!」

一気に崩れ落ちる俺たち。


「まぁいいわ、本来なら鑑定代を払ってもらうところだけど、

いいものを見れたのでおまけしいといてあげる。

わかったらとっと、もっと高級な鑑定屋さんに行きなさい。

まぁそれこそぼったくられるだろうけどね。

その時はソライに何とかしてもらいなさい。私は今それどころじゃないのよ。」

「くそがあああああああ無駄足じゃねぇかああああああこんなもん!!!」


俺が超越の歯車をアルゴニックにドンっとたたきつける。


「ちょっと!壊れたらどうするの!?」

「大丈夫。フライパンで焼いても何ともなかったくらいだったし。」

「は?焼いた!?」


「?

・・・。サイム、ちょっと・・・。」

「はい??」

「さっきこれと歯車が若干、光ったというか揺らいだような・・・」

俺はアルゴニックと歯車を見る、少し薄紫色に輝いた気がした。


「この歯車、少し貸して。」

俺は言われたように歯車を渡す。

「もしかして・・・!」


マチルダさんがアルゴニックに歯車を近づける。


するとアルゴニックに歯車がぽちゃんと吸い込まれる!


「認証コード『ξ-クサイ-成長について考えるもの』を確認しました。」

その時だ。アルゴニックから声がする。


「うわっ」


部屋がばゆい紫色の光に包まれたかと思われると

アルゴニックの形が変わり始める。

アルゴニックの顔面が割れて中のがあらわになる。

中は機械と肉塊でできており目玉などがぎょろっとこちらを睨む


そのうちの機械の部分がにょきっとまるで木のように、にょきにょきと伸びてくる。

そしてその鉄でできた木にはいくつかの、パッと見て何個かわからないが、

パネルが取り付けられておりそのパネルが一直線上に並びくるくると回転する。

その回転がある一定で終わると俺のド正面に来た、

『ξ』こういうマークのパネルに先ほど吸い込まれた歯車がすっぽりとはまっていた。


次々と変化し続けるアルゴニックに動揺を隠せない俺たちが驚く間もなく

機械の樹が縮んでいき顔面が元の形になり

その状態からアルゴニックは宙を浮き始め。

前に俺とニッちゃんが見た時みたいに手と足が生えてきて、


そして・・・


「ふぁああああああああ~~~。

おはよう・・・俺は夜型なんだよ・・・。

はぁ、ねむ

昼とかに起こすなよ・・・。

・・・ん?ここはどこだ?」

アルゴニックが起きたのだった。


「はぁようやく起きたか、アルゴニック、お前ずいぶんと眠るのが好きなようだなぁ?」

「・・・?え~~~っっとぉ?どちら様??」


ズコーーーー


「あ、そうか、名乗ってなかったっけ?俺はサイム、武山才無だ。あの時、塔で助けてくれた!」

名乗るとアルゴニックはニッチャリ顔で


「ああ、快適な空の旅の人か!

あッてんしょぉおん!ぷりーずッ!

ご機嫌はいかがだったかな?にゃひひひっひひァ!」

なんだろう、むかつく、すげぇ殴りたい。殴っていいかな?


「一応僕も名乗ろう。僕はソライ。応木空井。」

「私は書輪街子、皆からはマチルダと呼ばれているものです。

あなたはもしかして、最初の時代にいたという、創造主ですか?」


「いかにもタコにも、俺は創造主だが?

そういえば最近たこ焼き食ってねぇな・・・。

明石焼きでもいいから食いたい。」

なぜたこ焼き知ってんだこいつ・・・。つか明石焼きって何?

「やはり・・・」

「で、お前らなんで俺を起こしたわけ?」

「は?なんで今まで起きなかったんだよ?」

「そりゃ俺の動力たる家族・・・超越の歯車がなかったからじゃん。」

「一応、聞きたいのだけれど、

サイムたちの話を信用して創造主だとして、聞きたいことがあるのだけれど、

貴方の中に吸収されたあの歯車はいったい?」

「あーあいつは、『ぜんま・・・』じゃなくって・・・!

俺の動力であり家族、超越の歯車の一体、『溶』を司る歯車『ξ-クサイ-』だ。」

「さっきから行っているが、動力?」


「あれだよ、劇場版ポケモ〇のアルセ〇スの属性のプレー〇みたいなもんだ。

詳しくはググるか、レンタルビデオ屋に行って借りてみてくれ。」

さっきから突っ込みどころがある、なんでそんな現代作品知ってんだよ・・・


「え、何々?やっぱりお前ら俺についてそんなことも知らないわけ?

じゃあマジでなんで呼び出したん?」

この狭い、ろある堂で何当たり前のことを知らなあいんだって感じで、

きょとんとしてもらっても困る。

「あなたのいた時代からざっと数千年たっています。

ご無礼を承知ですがいろいろと終えてくださいませんか?」

ナイスマチルダさん!


「いいだろう!なら、ここでちょいと重要なことを言わなくちゃあならない。

まずな、俺を起こすっていう奴はたいがい、『願い』を持っているもんだ。」

「願い?」

「そそ、願いだ。よくある話だろ、

願いを願ったらなんでも叶うっていうお話。

ほら、ディズ〇ーで見たことあるだろ?ア○ジンとかのジー〇ー的なあれだよ!

よくある奴だよ!

童話とかでも見たことあるだろ?打ち出の小づちとかさ!

デウスエクスマキナ的な展開で

『なんかなんやかんやあってうまくいっちゃいました~』とか~

都合のいいように願いが叶うとか!

『テヘェ、俺、なんかやっちゃいましたぁ~?

まぁなんか、すべてやっちゃったし

ウハウハで結果おらーいじゃねぇ?』

的なこういった小説サイトでよく見る

『夢と冒険、全部叶って、希望の未来へレディゴー!!』的な話だよ!

あるだろ?創造主があれやこれやで叶えてやろうってんだよ!」


こういった小説サイト??

「まぁあるっちゃあるけど。まさかお前・・・」


「だから言ってるだろぅ?

お前らは俺を起こしてくれた。

もし散らばった24体の歯車共を全て集めきってくれたら、

『俺の叶えられる範囲』で『なんでも願いをかなえてやろう!』、

しかも回数制限は『俺の気分次第!』

あれも叶ぁーう!これも叶ぁーう!自由ざぁーい!

よほどのことがない限りなんでも叶えられると思っているぞ!」


そういうと、どや顔を決めるアルゴニック。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

なんでも・・・叶う・・・?なんでも・・・叶う・・・?

なんでも叶うッっだって・・・!!!?


「えええええええええええええ!!!!!!!!!!?????」

いや待て待てこれっ非常に!

「「うっさんくせー」」

ソライも同じことを思っていたらしい


「え」

「これは興味深い話ですね。もしよろしければ私の願いを、

叶えてくださいませんか?」


「あ、今は無理。

だって『溶』の歯車一個分しか力使えないし。

誰でも叶えるつもりはない。あくまで集めてくれた奴限定だ。

それに歯車共は全部で24体いてそれぞれが超常的な力を持っている。

俺の中に今入ってるのが、物質をなんでも溶かす。『溶』の歯車だけだ。

もし願いを叶えてほしくば、

『24体の超越の歯車』が全員集めれたらな!」」


「はぁ~なんだよそれ~せっかく出てきてくれたのに、

何にも叶えてくれないのかよぉ~」

「すまんなぁ・・・だが、集めれば何でも叶えてやるよ。

よければ歯車探しを手伝ってくれないか?

大丈夫、やる気があればサルでもできる簡単な作業だから。

ちょっと遠めのスタンプラリー廻る感覚で済むだけだから!」


「はぁ~なんだよそれ~せっかく出てきてくれたのに、何にも叶えてくれないのかよぉ。

サイムこいつやっぱり売り飛ばそうよ。」

こいつの話はひっじょ~に胡散臭い。

力を取り戻せばなんでも願いを叶えるだと?

しかも、その力を取り戻すのを手伝えだと?

胡散臭すぎる。


・・・だが、だがッ!どうしてだろうか・・・


なんでこんなにも胸が、ワクワクすることでいっぱいなんだろうか?

「げッ!?サイムその目はまさか・・・考え直したほうがいいぞ!

こいつは嘘をついている可能性があるぞ。胡散臭すぎる。騙されんな!」


「ソライ、確かにこいつの話は、非常に胡散臭すぎる、

それにもし探すとして無駄な徒労に終わるかもしれない。

だがそれも冒険職ってもんだろ?

だから俺はそれでも俺は」




「こいつの話、乗ってみても

いいんじゃないかなって思うんだ。」


「はぁーー・・・相変わらず無計画さだな・・・。」

だがソライは苦笑し

「はは、また面白くなってきた

・・・わかったよ。お前がそういうんなら、僕も一緒にやることにする。」

俺の方針は会社の方針だ。それについてきてくれる

社員ソライがいるだけありがたい。


「決定だな。とりあえず、お前らについていくことにするわ。」

「よーし、それじゃ歯車探しを早速・・・」


「待ちなさい。」

ろある堂をでようとしたところ

マチルダさんが待ったをかける。


「あなたたちに依頼を渡します。

報酬は超越の歯車1つとと借金の帳消し。」


唖然としてしまう提案にぽかんと口を開くソライと俺。

「マチルダさん!?

マジでいってますか!!?俺達ですよ!!」

「僕らがこんなことを言うのもあれなんだけど考え直した方が・・・」

「あら?考え直した方がいいの?」

「い、いえ滅相もございません!」

「大マジよ。腕っぷしだけは強いあなたたちを見込んでの依頼なのだけど?

返事は?」

「「はい!」」


「それで、護衛って?」

「なぜ、下町の鑑定屋を護衛しなければならないか、理由を聞かせてもらえませんか?」


「実はね、私のろある堂がね。夕べ、何者かに侵入された形跡があるのよ。」

「それだったら、警察に・・・」


「行ったわ。ついさっき、でも何も盗られてないのよ。

だから警察も証拠不十分として処理された。

しかもこの町でも有数の防犯が備えたこの店に、

わざわざ入って何も盗らずに出ていっただけ。

まぁ裏口の扉は歪んじゃったけどね。

まったくの意味不明なドロボウ・・・」


「なぁ防犯カメラには何か映っていたか?」

「それがその時間の防犯カメラの

データが壊れてて何も映っていないのよ。

警備会社も連絡が来ていないらしいわ。

私が目撃したのは、そこの玄関から大慌てで逃げていった姿のみ。」

「ふむ・・・何か狙われるような理由は?」

「わからないわ。

ただ最近、何者かに後をつけられているような気がしてならないのよ。」

「ストーカーか。」

「そう。多分ドロボウと同一人物でローブを羽織っていて顔や姿は

よくわからないけど、背格好から子供っぽい感じがするのよ。」

「なるほどな。で、警察も当てになんないし、

俺たちを頼るしかないってことか。」

「あなたたちは戦闘能力は称賛に値するはあとはダメだけどね。」

戦闘以外評価されてねー・・・


「じゃあ今日は一日中、ここから出なければ結構安全なんじゃない?」

「残念だけどそうもいかないのよ。

私たちの社長であるジェームズがそろそろ誕生日で・・・

その・・・わ、私も贈り物しなくちゃいけないの。

だから今日贈り物を選んで贈らないといけないのよ!

売っているものは今日限定のもので・・・。」

ちなみにだがマチルダさんは本店にいる、

謎の敏腕社長ジェームズ社長に対して絶賛片思い中ということは

ショーワ町の周知の事実である。


ジェームズ社長は謎は多いが、本名は慈英難変桃という。

このろある堂の本店がある食料自給率が半端じゃない都市にいるらしい。


「あーなら、仕方ないか。」

マチルダさんはこの町きっての強情さだ。

そして町のみんなの温かい目でマチルダさんの恋を応援している。

「ところでよー俺の家族・・・

超越の歯車は本当にお前の手元にいるんだよな。」

「ええ。」

「何色だ?」

「茶色っぽいけど、でも反射するし『銅色』っぽい感じです。」

「つまりは『ドウ』・・・

いや、『この世界での名前』は確か『オメガ』か。」

「・・・あなたはやはり『オメガ』のことを知っているのですね。」

「当たり前だろ、数少ないまともな性格をした

『あいつ』は俺の歯車なんだから。

依頼が達成したら俺のもとに返してくれるんだね。」

「ええ、それは私の名前にかけて保証するわ。」


「まぁうだうだ言ってても話進まねぇし。

とっと贈り物買いに行こうぜ。マチルダさんよ!」


「そうね。慎重に取り組んでください。

少なくとも歯ついている海苔をつけないくらいは

慎重に仕事してほしいものです。」

「歯に海苔?」

「お前だよ、ソライ・・・」

ソライは自分の歯を触る。

「あ、ごめーーん!あっはっは!」


「まったく、依頼中はしっかりして下さい。」

「「はい!」」

「依頼スタートです。武山冒険社、覚悟はいいですね!」

そういって俺らはろある堂を後にする。


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