第2話_結『パープルメルト:成長の終焉』

そういうとソライに向かって走り出す。

「まずはソライ。」

「おっと。」


力強く大地を蹴りソライのもとまで迫った瞬間。

モンブは大きくのけぞりながらジャンプをする。


「『模倣技ロッコウ』」

「なに!?」


そう、その構えは武器は違えど俺の技、六甲にそっくりだった。

そしてそのままモンブは重力に従い落下しながら

力を込めて技を放つ。


ソライに対し技が決まる瞬間。


「ポンパタポンパタ~退却~」


この馬鹿はふざけた口調で全力でこちらに、走っていた。

お前は、パタポ〇か!


ズドンという種王劇が地面に伝わる。

「あーあー外しちゃった。」

モンブはこういうが本来この技は隙がでかく、

ちょこまかと素早い動きをするソライでは当たらない

そして技を放つだけで足に負担がかかる。

足を負傷している、こいつではまず大したダメージにはならない。


「ソライ、けん制重視!コピーされないために

相手が技を出すとき以外、技を出すな!!

技を盗まれると対処が大変だ。

ニッちゃんはできるだけ離れつつ、俺のサポート!」

「了解!!」

「おけー」


「そううまくいくと思うなよ。」

モンブが斧を周りの木に食い込ませバリスタのような、

はたまたスリングショットのような姿勢をとる。


「戦斧弐激(センフニゲキ)!!!」

すこから勢いよく発射されたモンブがリールを巻き取りつつ

しなる両腕(オノ)を俺とソライに振るう!


「ガードしろ!!ソライ!!」

「なんの・・・

ってうぉおお!!?」


予想以上にパワーがある!!

反動で後ろにノックバックする。


「サイム!!パープルメルトが後ろにあるぞ!!」


ッ!!!

そうだ!!パープルメルトがここを取り囲んでいる!!

そしてしなる腕(オノ)はもう一撃俺達へと迫っていた・・・。


これ以上、下がったら、消化液の餌食!!

なら!!


「ソライ!!」

「おう!!」


「伊吹(イブキ)!」

「桃(モモ)!!」


既出の技で!このパワーを押し切り!!

いなすしかない!!!


俺は伊吹で強引に斧に蹴りを入れ照準をずらす!

ソライは居合で斧をはじき!

二人とも広場中央まで戻り体勢を立て直す。

なんとか、斧を退け、モンブの腕が元に戻る。


「やるね。だがこれならどうかな?『模倣技モモ』」


そういうと俺に向かってすさまじい速度で、こちらに向かってきて

ソライの先ほどの居合そっくりのような、攻撃を繰り出す。


「くっみんな!俺の後ろに隠れろ!」

そしてモンブがこちらに向かって斧を抜くと同時に


ガァアン!!っと


俺が槍の柄で受け止める。

この槍、柄も金属製でできてるのでそうそう折れることはない。

持ち込まれるのは、つばぜり合いの構図。

またかよ!!と突っ込みたくなる!!

しかも斧二本分の重みと出力がありやがる!!


「ぐっ!力強い!」

「ブースト!」

モンブは両手からロケットパンチの時に、

見せたロケットが出てさらに一段と力強さを増す。


「サイムさん!」

ニッちゃんが俺の腰に手をまわし体を支える。

二人分でも十分に後ずさりする!

後ろにはパープルメルトがある!!

このまま、押し出し俺らを消化液で溶かす気か!!!


「うおおおおおおおおおおお!!!」


「応木流刀術(オウキリュウトウジュツ)!」

ソライが横から、つばぜり合いに割って入るようにジャンプをし

「漆花(シチカ)!欅(ケヤキ)!!」

超上段からくる兜割を繰り出した。

「何!?」

すんでのところでモンブがつばぜり合いをやめてその場を離れる。


「よっしゃー!」

「あぶねーだろ!ソライ!俺に当たったらどうするんだよ!」

「ごめんごめん。いつも通りの賭けさ!」

こいつ・・・相変わらず無茶と無謀の塊だな。


「にしても、どうやって倒すべきか・・・」

「あ、そうだ。サイム弱点覚えてる?」

「ああ、覚えているが・・・」


「実はさ弱点ともう一つ気になっている点が僕あるんだけどさ

さっき、背中をちらっと見たときに、なんか『くっついてた』んだよ。」

「なに?なにがくっついてた?」


「明らかに増設されたパーツっぽいもの。

僕のただの推測だけど、あれって外部バッテリーじゃないかな?」

「なるほど、電力の消費が激しそうな体してんもんな。

ということは電源を落とせば・・・」

「ザッツライト!あいつは今、二つ大きな弱点を抱えてることになる。」


足(ケガ)と背中(エネルギー)。


「よし、行くぞ。ニッちゃんはあいつの攻撃が来たら頑張ってよけてくれ。

俺たちは今から、『守る』のではなく『攻め』に転じる。」

「りょ、了解です!」

「行くぞ、ソライ!」

「おk、サイム。」

「ようやく『本気』を出すの?いいよ。僕も『本気』を出すから。」


 そういうとモンブは突然両足を軸にして、

バレリーナのようにくるくると回りだす。

と、同時にロケットを使いさながらコマのように、

さらに手についた空圧のブーストをかけコマのように高速回転をする。


「くるぞ!」



「戦斧螺旋(センフラセン)ッッッ!!!!」


それと同時に両方の斧がロケットパンチみたく飛び出し

広場全体を覆うかのように攻撃範囲を広げる。


「みんな!ジャンプだ!」


それと同時に俺たちはもはや遠距離武器と化した

斧を巧みにジャンプでよける。


「次くるぞ!ジャンプしながら進むんだ!」

持久戦はできない!

縄跳びの要領でジャンプをしていっても中心のモンブに近づくほど

内周の方がワイヤーに引っかかる可能性がある。あのワイヤーは鉄製だ、

この速度でそんなものに当たれば大けがじゃすまないかもしれない!

かといって外周にいれば斧の餌食だ!

「あ、サイムいいこと思いついた。

今すぐ少し離れたところに地面に槍をさせ!できるだけ内周だ!」

「槍?・・・そうか!」


ソライに言われた通り地面に槍をさす。

するとどうだろうか、ロケットパンチで

射出されていたワイヤーが槍に絡まって

一瞬隙ができる。


「今だ!応木流刀術(オウキリュウトウジュツ)!弐葉(フタバ)!桃(モモ)!」


ソライが居合で一線をかます。

そこで半壊していた足を狙い。

片足を完全に斬る。


「ぐおおおお!!!僕の足が!!!!」


足がなくなったことによって、

よろけたその瞬間をソライは見逃さなかった。

ソライはモンブの背後に回り


「連撃(レンゲキ)!!応木流刀術(オウキリュウトウジュツ)!」


上段、下段、中段、そしてまた上段の順でソライがモンブの背中を斬りつける。

この技を受ける者は刀があまりの速さのせいか、3本錯覚し回避が難解な技だ。

隙が無く、恐怖感も与える。


そして最後の中段を切りつけた時


「参木(サンモク)!栗(クリ)ィ!!!」


モンブの背中のパーツが大きな音を立て火花を散らす!


「うぁ・・・ぁ・・・



ザー

・・・ごめ・・・サ・・・イ


ぃ・・・う・・・と


・・・すケ・・・」




プッ・・・



・・・


「最後の一撃は切ない・・・」

ソライが刀を鞘に納める


モンブは背中から火花を鳴らし、目の光が消え

膝から崩れ落ち、その機能を完全に停止した。

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「さてと、これで何とかなったな。」

昨日の時点でこいつにはだいぶ警戒していた。

だが、今日再び明らかな敵意をこいつは俺達に向けてきた。

今回は先手、しかも不意打ちをかけたから勝てたものの

もし後手にまわって相手のペースを許していたらこの喧嘩、負けていたかもしれん。


こいつについて深く詮索はしない。

人としては詮索とか少しはすべきだろう。

だが冒険職として会社に身を置く経営者として

詮索し禍根を残すのは社員の二人の心や、今後のことを考え得策とはいいがたい。

モンブ自身のためにも、詮索はかわいそうだ。


「あとは超越の歯車っていうのを僕らが回収して、それでこの成長現象も止まるね。」

「ああ、そうだな。実はさっきから歯車がどこにあるのかは目星ついてんだ。」

「え、サイムさんどこにあるのかわかるんですか?」


俺は大樹の下を指さす、そこには祠らしきものと紫の光が輝いていた。


「あそこさっきから紫の輝きがあるだろ、たぶんあれだ、」

「まぁもっともらしいものといえば、あれくらいなものですしね。」

「さぁさっさと回収して、こんな森とはおさらばしようぜ。」

「はぁやっと終わりますね。お風呂入りたい。」

その時だ。


 ズドドドドドドドドドドッッ!!!


という音が鳴り響く、同時に地面が揺れ動く。


「なんだ!?地震か!?」

「サイムさんあれ!」


ニッちゃんが指をさす

その方向にあった大樹がすさまじい速度で上へ伸びていってる。

同時に根が地面を張っていく。

そしてその根が地面に這う衝撃で

周りに生えていたパープルメルトが消化液を吐き出し

消化液が俺たちの地面まで達しようとしていた。


「まずい!消化液に取り囲まれるぞ!」

「それだけじゃないよ!根っこが成長していって、あの祠を覆いきってしまう!」


ソライの一言でわかった、

このままいけばあの祠にあるであろう超越の歯車も、

回収できなくなってしまうじゃないか!


「急いで大樹のほうへ走り出せ!大樹の下まで行けば安全だ!」

走り出す俺たち三人

次々と繰り出される消化液の嵐を潜り抜ける俺たち。

必死こいて走っていく。


「きゃーーーー!!!」

「うおおおおおおおお!!」

何とか大樹の根本までやってきた俺ら。

なおも成長する大樹により祠は大きすぎる根っこで埋まっており

倒れているモンブのすぐ近くまで、消化液はやってきている。

「サイム!手を伸ばせ!」

「くそ!あとちょっとなんだが手が届かない!」


太い根っこが邪魔になっておりなかなか祠まで手が届かない。

突然だが皆さんは天空の城ラピュ〇は知っているだろうか?

そうシ〇タとパ〇ーが飛行〇を木の幹越しに渡すシーン。

ちょうどあんな感じだ。あんな感じに俺は腕を伸ばし祠へと手を伸ばしていた。


「サイムさん!変わってください!私の手なら入ります!

あと、ソライさん。ガジェットとギア貸してください。」


俺に代わって、ニッちゃんがソライのギアを半挿しした

ガジェット片手に木の根っこに手を入れ始める。

「ガジェットギア!セット!」

そして木の根っこから変形してきた刀が飛び出る。


「そうか!ガジェットの変形する力を利用して、

根っこが成長するよりも先に破壊したのか!やるなニッちゃん!」

俺は素直に感心した。ニッちゃんはこういう時、面白いことを思いつく。


「あともうちょいぃぃぃいいぃ!!!」

ソライの刀を掴みニッちゃんの怪力で


 バキッ

という音を立てて強引に木の根っこが剥がれ落ちる。

「やった!やりましたよ!」

「よくやったニッちゃん!」

「根っこが伸びてこない今のうちに歯車を取り出せ!!!」

「はい!」


ニッちゃんは紫の祠を開ける。

するとどうだろうか

まばゆい紫の光が辺りを満たす。


「これが・・・超越の歯車?」

そこにあったのは俺らの使っているギアよりも大きな歯車で、

紫でできており、よくわからない幾何学模様が浮かび上がっている歯車だった。

それが祠の奥のほうにある、木の根っこに食い込んでおり。

急いで抜かないと、すぐにでも木が成長して取り込んでしまいそうだった。


「急いで抜け!早く!」

「はい!」

ニッちゃんは歯車に触れ抜こうとする。

「うぐぐぐ!」

ソライと俺はニッちゃんの腰を持って一緒に引っ張り上げる。

木との綱引きをしていると突然、



 スコン!


っといった具合に超越の歯車が抜ける。

「やったぞ!」

俺たちの手元に超越の歯車が手に入る。




「これで何とかなるんでしょうか?」

「さぁな・・・」

「頼むから止まってくれよぉ」

「・・・おい、あれを見てみろ」



俺はあることに気づくそれは

いつの間にか、成長の止まっていた大樹は突然のごとく生気を失っていき

葉っぱが茶色に染まっていく。パープルメルトも枯れていき、

この場所の命という命が閑散としていく。


「あ、枯れていく」

その光景は生命の悲しい終わりのようで。

「どうやら植物たちも無理してたみたいだね。」

どこか幻想的とも思える死を見ているようだった。

「なんだか、儚いものですね。」


儚いか・・・なんだかあんまりいいことをした気分ではない。

だが成長していった先に待つものは、いつだって死という終わりなのかもな。

そう思い俺達は森を後にした

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「これ・・・どうしましょうか?」

ニッちゃんは手元に持っている超越の歯車を見る。

「さぁね?事務所に帰ってから考えるべ。」

「そだな。」

三人とも疲れ切った、少し休みたい。

「もう私くたくたですよ~シャワー貸してください。」

「シャワーシーン来たー!覗きフラグですか!?」

ソライがおちゃらけた調子で言う。

「そんなわけないでしょうが!!!」

ニッちゃんがソライの顔面をクリティカルヒットさせる。

ちなみにソライはニッちゃんくらいの子あたりの年齢は好みの範囲ギリギリらしく、

正直、タイプじゃないってのを昔聞いた。ニッちゃんもその気がないことも知ってる。

が、気の置けない仲というか、単にソライが馬鹿なので、殴っているらしい。

「やれやれ・・・ニッちゃん飯食べてくか?」

「はい!」

「冷蔵庫的にロールキャベツだね。」

「いいですね。お手伝いしますよ。」

「「せんきゅー。」」


俺たちは家路を急ぐ。

今回の一件もいつかやってくる

あの大樹のように死の前では俺たちのあがきや成長は

無為な時間なのかもしれないが、

でもいつか楽しかったといえるような、


そんな日々にしていきたい。

そう思った。

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