第1話_結『危機開会の塔:願いしもの』

梯子を大急ぎで登るとそこにあったのは

大量の青い水晶の塊だった。周りは人工物に覆われているというのに、

下から水晶が生えているその光景はとても幻想的だった。

中でも中央のとてつもない大きな水晶に俺たちは目を奪われる。

天井は今まで以上に高く、一番大きな水晶が生えている床は

虹色に輝き、今までの虹色の毛細血管らしき謎の模様が集まっていた。


「綺麗・・・」

ニッちゃんがあまりに幻想的な光景に思わず声を漏らす。

「・・・ああ、あのチラシの内容、本当だったんだな。

・・・って見とれてる場合じゃないぞ!!

ニッちゃん早くしないと塔が爆破されるんだよ!!!」


「そうでした!どこかに下に通じる階段はないんでしょうか?」

「探せ探せ!!」


 それから俺たちは床を重点的に壁、天井。

いろんなところを探した。

壁を叩き、床ドンをし、水晶にうつつを抜かしニッちゃんに殴られては抜け道を探した。



そして10分後



「サイムさん、こっちにはありませんでした!!」

「こっちもねぇよ!!クッソがあああ、もしかして無いのか?」

「うわああああんやっぱり私たちは死んじゃうんだ!!」

「ニッちゃん!!諦めるんじゃねぇよ!!まだ終わってない!!」

「うぅ、でも・・・」

「でも、じゃねぇよ・・・まだ何かあるはずだ。」

そうは言うが、なかなか発見できない。くそが!

あーあ、もしも順調に行っていたら、

この大きな水晶も俺の物になったかもしれなかったのに・・・

ここが俺の死に場所なのか・・・せめてあの水晶だけでも・・・。


・・・


あれ?なんだあれ?


・・・


「ニッちゃん・・・あれ、何だろうか?」

「どれですか?」


「あの大きな水晶の『中に入っている』あの緑色のあれ。」

「あれですか?なんでしょうね、あれ?」


・・・うーむ、反射でよく見えねぇな。

もっと近くに寄ってみなきゃわからんな。


そういって大きな水晶の中に入っている『あれ』を近くで見るために、

大きな水晶に手が触れる。


・・・何だろうあれ?


緑色のちょいでかめのぬいぐるみくらいの大きさ、

緑色の物体の下部には、灰色で赤色の部分の縦長の何かが張り付いており。

緑色の部分に00っていう模様のようなものも書いてあるな。

仮に緑色の何かが本体だとして左右にはニョロっと細長い物が生えている。

うまく表現できなさ過ぎてマジで意味不明の物体がそこにはあった。


だが


「・・・俺を起こすのは誰だ?」


明らかに聞いたことのない男の声が部屋に響き渡る。

まるで寝起きのような声で。


「え、ニッちゃんなんか言った?」

「サイムさんこそ、何か言いました?」

「え、俺何も言ってねーよ。」

「私も何も言ってませんよ。」


「俺を起こすのはお前らか?」


若干寝起きのいらだちと期待感の混じった声だ。


「ッ!?サイムさん!あれ!」

そう言ってニッちゃんが指さすほうを見やると。

緑の物体の赤い部分から涙とかによくあある雫のマークを

逆にしたのような亀裂が走り何かがこちらを『見ていた』。


「あー眠い。まぁいいや、そろそろ起きますか。」


すると俺の水晶に触れているほうの手からピシピシっと、

音が立っていき。

水晶が謎の物体・・・いや『存在』を中心にして揺れだし

次々と水晶を覆うように、亀裂が走る。


そして水晶全体にまんべんなく、


亀裂が走ったところで水晶が突如


パリーンと砕け散り中緑色の存在が出てくる。


緑色の存在は空中を制止したのち


緑色の物体は高速で回転をしはじめ。

ある一定でピタッと止まり姿が変わり始める。

下部にあった赤と灰色の部分が顔になり左が赤色、右が灰色の顔で。

その外見は、よく子供番組にいるようなコミカルな感じで。

そこから生えた白と黄色の体は一見すると

白い幽霊みたいで足がなく、左手が異様に長く、

左手の指は3本、右手に至って指は一切ない。

まるでコートのような服?を揺らし

空中をふよふよと浮いていた。

そして緑色の帽子で仮面のような顔で左半分の異様な三日月のように笑っていた。


「にゃひひひ、おいっスー!俺を起こしたのはお前らか。」


「え、あ、はい。」

ニッちゃんは突然のことで完全に思考を放棄していらっしゃる。

「まったくもって遅いんだよお前ら!何千年、またせりゃ気が済むんだ!」

「え、っとあなたは?」

「なーんだそんなことも知らねぇのか。

俺はなこの世界の、正確にはこの星の創造主、

『オヨン・アルゴニック・ルプルドゥ・フィクショナライズドラマチスト』

ってもんだ。気軽にアルゴニックって呼んでくれ。」

細長い左腕でサムズアップをする。


「は、はぁ?」

なんだこいつ・・・。明らかに人間ではない。

だが会話をするモンスターって聞いたことがない。

聞いたことがあってもフィクションだけだろ。

なんだこいつは・・・。

「さてと、起こしてくれたご褒美に、さっそく願いをかなえたい

・・・ところなんだがあいにく今俺の手元に、『歯車』がねぇんだよな

・・・あいつら一体どこに行ったんだか・・・?」


その時だ・・・

下のほうでドーン!!という音が鳴り響く。

塔は大きく揺れだしていく。

「きゃああああああーーー!!」

「まずい、塔の崩壊が始まる!」

「えーなになに?何が起こってんの?

俺が起きたから祭り?祭りでもやってんの?

俺、綿あめ好きだから祭りがあると必ず買いに行くんだよ。

早速行こう!」


「ッちげぇよ!!この塔が爆破して崩れそうになってんの!!」

なぜこいつはこんなにノーテンキなんだよ!!まさに命の危機だぞ!!

「なーんだそんなことか!大したことないじゃん。

通勤快速の下痢や腹痛の方が緊急性を要するね。」

「あなた、よく平気でいられますね!?」

「だったら脱出すればいいだけじゃないか。何をそんなに慌ててんの?」

「その脱出口が見当たらねぇんだよ!!」


ゴゴゴっと

その時塔が大きく傾く!!

「このままだと死んじゃいますよ!!サイムさん!!」

いよいよもたないか・・・

こーなったら!!


「おい、お前!アルゴニック・・・だっけ?そこまで言うんなら脱出口を教えろよ!!」


「ん?本当にいいんだな?」

「あーもういいよそれで!!だから何とかしろよ!!」


「ふむふむ、わかった。それなら五秒あればできるぞ。

強引な手段だがな。


・・・まぁ~~ちょっと面白いかも、

しれないことにはなるが」

「え、助けてくれるんですか?」

「当たり前だろ。起こしてくれた奴が死ぬなんて文字通り寝覚めが悪い。


あーただし一つ言っておくことがある。

注意事項なショッキングな光景が広がるから


『五秒後覚悟しろ』。」


1秒後


「00-ヌル・メイキング-Idアビリティ!クリエイト!ラスチ!」

そういうとアルゴニックの背中から、巨大でとげが大量に生えた鉄でできた手が出てくる。


2秒後


「壁を破壊!!っと!!」

そしてアルゴニックは手身近な壁を殴りつけ壁に大きな穴が開く。


3秒後


「ごめんあそばせー」

俺とニッちゃんを巨大な手で握る


4秒後


「どっこいしょ。」

手を壁に空いた穴の外に向かって狙いを定めて。


5秒後


「『読者の皆さん』はポイ捨てはダメだぞー!特に人間の不法投棄はなー!


イッセーのせっ!!


ソオぉォイッッ!!」


・・・俺らを壁の穴に向かってぶん投げる!


・・・


この間ちょうど5秒間、

思考をするための文章量から察してほしい。

この間俺たちはほとんど何も考えてなどいなかった。


だが、足の感覚から一気に状況を把握し始める。


まず目の前には雲があった。


うん。なんとなくわかる。


つまり空があるということだ。目の前にな。


足の下には何もなく下には重力がある。


そしてそのまま落下をするということが予測経つ




ってちょっと待て、あそこ8階、つまりここは空中・・・

待て待て待て待て




「うわああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあぁ!!!!」

「きゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあぁ!!!!」

何やっちゃってくれてんの!?あいつぅうううううう!?

はぁああああああああああああああああああああ!!!?ばかばかばかばか!!!!

あほだろあいつうううううううううううううううう!!!


「ニッちゃんん!!」

「サイムさああああああああああああああんん!!!」



その間にも真横の塔は崩壊していった。

こええええええええええええええええええ!!!!!!

目の前を通り過ぎる落石よりも正直、地面の方が怖い!!


ここで俺たちは手をつないでスカイダイビングでよくみるポーズをとる

外は夕暮れ、太陽が遠くに輝きを増していき、月が出ていた。

近くに俺たちの住むショーワ町がよく見えた。


その光景は人生最後の眺めにしては、とても上出来と言えたかもしれないと思った。

ああ、これが俺の人生か短かった・・・


生きたかったなぁ・・・はっはっは・・・




そんなことを思っている間に地面がすぐそばまで、迫っていった。




地面に鼻先が当たるすれすれのところでぴたりと止まった。

よく見てみると服をアルゴニックの大きな手が二人ともつまんでいる。


真っ青な顔をしてるであろう俺の目の前をアリが通り過ぎていった。

死ぬと思った俺の前を小さな生き物は食物連鎖の中、懸命に生きていた。


アルゴニックは俺たちを地面におろす。

直立不動になりながら俺たちは今生きていることを実感した。


「な、面白かっただろ!どーよ俺のサプライズ!

バンジージャンプなんて人生でそう簡単にできる経験じゃあないぞ!

その短い生涯と同じく『命綱の紐』はないけどな!にゃひひひ!ふひひひ!!

今の傑作!!」

アルゴニックが満面の笑みでこちらを笑う。

「「こ、殺す気かー!!」」

「ふははははははっははははっっははっほげっっほほっっほげッ・・・

!!?

ム、

む、

ムせたっッ

ッッ!は・・・ははは、ははははーー!!!!」

締まらない・・・


締まらない自称創造主が笑いまくる。


だが俺たちは一斉に肩の荷を下ろしいつもの夕暮れに安堵する。

腹が減った・・・そういえば、すき焼き・・・食べたいなぁ・・・


俺たちはまだ知らなかった。

この時のこの出来事が、まさかとんでもない大冒険の始まりになるんだんて、

心をめぐる冒険の始まりだなんて、

 

この時はまだ何も知らなかったのだった。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

×××××××××【アクセスポイントを検出しました。】××××××××××

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

×××××××××××【正常に接続を確認しました。】×××××××××××

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××

こことは違う時空、半裸で白髪のロングヘアー男がただ一人座っている。

どこかサイムと似た男はつぶやく。

「そうか、やはり我の考えた通りの男だった。」


男は誰かと話しており、その『誰か』はわからない。

「00Id《-NullParadox-》と01Id《-TheOne-》との邂逅、

これも貴殿の考えた計画通りか?」

「・・・!」


「自然継承と誕生のId00と

可能性による特殊可変処理変数Id01との邂逅、

これも貴殿の考えた計画通りか?」


「・・・!」


「そうか、やはりこれも貴殿の考え通りか、どこまでも思慮深いのう、超極なるものよ。」


男は一瞬ためらうようにして考える。


「・・・!」


「そうだな、全てはここより始まらんとす。

Id01武山才無。始まりの

解答権限保有者-ἀλήθεια Απαντητής-

プロタゴラスやプラトン、ハイデッガーなどの多くの真理や哲学を超え

なぜ何もないではなく、何かがあるのかへの可能性を秘めしもの

論理変数の光明を出し、進むかの者の道は、

完全をも超える解答をし、いずれここまで、たどり着くであろう。

我らともいずれは合うであろう。」


「・・・!」


「貴殿をなめてなどいないぞ。超極。貴殿の定義はこれにより揺らぐやもしれぬぞ。

サイムだけではない。『この言語情報を視認している、そこのものたち』もいる。

ゆえに貴殿が最も恐れていることを、サイムはやり遂げるやもしれん。

全ての空想フィクションと全ての現実リアルさえも超えた

貴殿の論理変数がいよいよもって変わるのだ。

今なお、全ての世界のものが成し遂げられんだ、偉業しんじつを超えるのだ。」


「・・・!」


「まぁよい。貴殿はそういうものであることは理解している。貴殿が信じぬのが常よ。」


「・・・!」


「貴殿の戯言は、この世を『ただの言語情報ものがたり』としか認識しておらぬ、

そこが貴殿の虚弱性を立証するに足りる。高々その程度のことで貴殿は揺らぐのだよ、

ある世で約2000年前に背負ったかの男のように世界は変わる。

人の世は人が築きし想像の二重螺旋おもいのつみかさねだ。」


「・・・!」




「そうだな・・・。

さて・・・それでは始めるとしよう。

サイム

・・・そして『観測をしている貴殿ら-現実を信じてやまぬもの-』よ。

貴殿らの心と真の意味を問う物語を。

扉の奥。『現実-創造されし世界-』をも凌駕する、

真理の先にあるこの場所で待っておるぞ。」


願わくば貴殿かんそくしているどくしゃらとかんそくされているそんざいらが


螺旋デュナミスとなり

エンテレケイアが未来へ続くため。

貴殿らも見守っておくれ。


我もできるだけのことを、サイムへしようぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る