第1話_転『危機開会の塔:アックスギアの少女』

7階

「こんなにも罠があるってことはさ。」

「いよいよ、お宝が近いってことじゃないですか?」

「ああ、ロマンを感じるよな。

そして金の匂いが近づいてきたよな。ぐへへ」

「いや、ロマンどこ行ってんですか!」

「金ってロマンだろ?」

「いやですよ、そんな現実的なロマン。

もっとこう未知に敬意を表するもの。

それがロマンでしょっ!」

「えーそんなもんかな?命の危険がある分、金が手に入るだから金がロマン!」

「そういうもんです!冒険ってそういう道中を楽しむものでしょう!」

「まぁ一理あるけど・・・でも金がなくちゃあ生活できない!

ロマンで生きていけんなら冒険職は日常も冒険もすべてがロマンだ。

そっちの方が楽しーじゃん。」

「・・・なんだかうまいこと返されてちょっとだけ不服です。」

「せいぜい、不服とそー思えばいいさ。

だって面白いことが日常ロマンの積み重ねだろ。」

受け売りだが俺はこの言葉が割と好きだ。

「まぁそうですね・・・って!サイムさん前!」

「前?」

なんて話してると非常に開けた場所に出てきた。

大きさからして今まで見たこの塔で一番大きい部屋だろう。

虹色の毛細血管のような線が取り囲むように

部屋の天井に向かって伸びており。今までよりもやや明るい。



ん?部屋に誰かいるぞ?

そこにいたのは腰まで伸びた水色のロングヘアーの10歳くらいの子供だった。

いや、身長が低い種族ってこともあるから年齢はわからねぇが、

だが体躯からして女性であることはわかった。後ろ姿だけなので服装はいまいちわからない。

「おーい、そこの君、一体何をしているのかな?」

「・・・解析中」

「えっと、あなたは何をしているんですか?」

「・・・解析中」

「解析中?何のことだ?」

少女は周りを見渡しながらひたすらに解析中と言っていた。

「解析完了。音声パスコード『私の最初と最後の絶望と希望をここへ封印する。

日のもとに、照らさんとする心のままに。

廻りし太陽が来るとき、開く。』」

そういうと、天井が自動的に、ごごっと音を立てて開いていく。


「おおお、すげぇ」

「あの子、何をしたんでしょうか?」

「知らねぇな。」

「あのーもしかして先行隊の人ですか?」


ニッちゃんがそういうと、子供は振り向いた。


「お前らは誰だ?」

まるで無機質な声でこちらに問いかけた、

その少女は薄水色のセーラー服を着ており、紫色の長いネクタイ。

そして手と足が大きな金属で覆われていた。指の数は三本大きさからしてかなり重そうだ。

腕と足に魚のひれのような紫のこうしつそうな物体をつけて

鉄でできた仮面もつけておりさながら深海魚を髣髴とする見た目で、目が瞬きしていた。


少なくとも、ダンジョンに住んでいる浮浪者のたぐいではなさそうだ。

指の感じ的に俺の知る限り【ナックル】と呼ばれる武器がこれに該当することを俺は知っている。

殴るために空気圧のジェットを内蔵している武器だ。本来子供が使うような武器・・・

いや、子供の武器所持は法律上認められていないはずだ。

こいつはなんだ?あの仮面は何だ?なぜ顔を隠す?鉄の仮面なのに瞬きをするのはおかしい・・・。


「俺たちはあんたの後にこのダンジョンに入ったものだ。」

「そうか」

「なぁお嬢ちゃん、こういっちゃ悪いんだが提案だ。

このダンジョンを踏破するまで、協力関係を結ばないか?

このダンジョンの宝の6対4で山分けで、

もちろん6割はそちらさんでいい。だから一緒に攻略しないか?」

「・・・」

「悪くない提案だろ?」

「・・・」


「サイムさん、いきなり出会って、何話てんですか?

こんな小さい子相手に胡散臭すぎますよ。」


「だってよ、もう残り階層も少ないことだし、

ここは手を組んだほうがいいだろ。」


だが、実際に相手が胡散臭いって思っている以上に

俺も胡散臭いと思っていることがある。

 

なぜこのダンジョンに子供がいるんだ?

まず第1の罠で大人の俺と鬼で元卓球部の瞬発力を

持つニッちゃんが全力疾走して、

ようやくあのハンマーを潜り抜けることができる。

それに対してなぜ子供がいるんだ?


俺の直感が告げる。

この子供はこのダンジョンを踏破できる実力の持ち主であると

運良ければお宝にあやかれてその4割が俺のものに!


これで当分の間は、楽していける。

うっひゃっひゃっひゃ!!


「それをしたところで、僕に何の利益があるというの?」

だから6割の利益になるんだって。」

「僕は自分より格下の相手と付き合って、

利益を減らすような馬鹿じゃない。」

「そうとも限りませんよ、私たちだって

あの罠を潜り抜けてきましたし!」

「お前たちはこの塔に、いや、

この『塔で待ち構えるもの』に『何を願う?』」

「願い?」

「そんなことも知らずにやってきたのか馬鹿が。」

「んだゴラァ!?さっきから聞いてみりゃ人を

馬鹿にするようなことばかりいいやがって!

何様だ!てめぇ!?」


「今は、名乗らないでおくよ。」

「てめぇふざけやがって・・・」

「まぁまぁサイムさん、落ち着いて」

俺たちがお嬢ちゃんより下とはいいがたいだろ?

もしも利益を独占しようってんなら。

こっちもそこまで言われると引き下がれんぜ。」

「サイムさん・・・」

「・・・わかってる。ニッちゃん、少し下がってろ。」


俺が『下がってろ』というのは危険という合図だ。

こいつはちょっとやばい雰囲気・・・。

このダンジョンで、疲弊や期待どころか・・・『無機質』な『少女』なんて

不気味すぎる。気を引き締めよう。


「こっちも引き下がるつもりはない」

「あーもうわかったよ。じゃあ早い者勝ちな。」

「早い者勝ち?」

「そうだ冒険職、暗黙のルールにのっとり、

早い者勝ちでどっちが先にお宝を手に入れるのか、

公平にフェアにプレイしようぜ。」

基本的にこういえば相手とあとくされなく、

ダンジョンでライバルや友好など今後の関係を気づく足掛かりになる。


「・・・」

「・・・あのーどうしましたか?」

「対象を妨害者と認定。」

「は?」

「プロセスB-5を実行、アルゴニック確保に邪魔と判断、


ただいまより対象を


『排除します』」


そういうと少女はいつの間にか手に持っていた

『ギア』を空中に放り出す。

ギアの名前は


【-斧-アックスギア】


「ガジェットギア・セット」


そしてそのままギアは少女の鉄の手のくぼみにぴったりとはまり、

『ギア』が回りだす、手の形がみるみる変わっていき、

右手首先が両手斧のような形へと変貌を遂げる。


「げっ!?」

まずいまずいまずい!ギア出しやがった!!

さっきニッちゃんと話していた、出会った冒険職が善人ではなく、

悪人でしかも敵意ガンガンにむき出して殺しに来るっていうパターンじゃないかよ!!ラノベじゃねーんだから!!


「落ち着こう、冷静に・・・」

「お前は敵対者だ。問答無用。」


ドシュっ!!っと

そういうと少女は俺たちに向けて武器のない左手をかざし、『射出』する。

ようは少年時代よく見たロボットアニメでよく見るロケットパンチというやつだ。

ただアニメと違うのは射出する腕には頑丈なワイヤーでつながっており。


「ニッちゃん!!危ない!!」

「きゃッ!」


迫りくる左手に対してニッちゃんをなんとか、

押し出してかばい回避する。

そしてそのまま手は壁にめり込む。

「あぶねーな!オイ!聞く耳くらいモテよガキ!!

フェアで行こうとしている人に武器を向けるなよ!!」

「僕はガキじゃない。『ロボット』だ。」

ロボット~?マジかよ。だがこれで納得がいった。

あの射出される手を使い、罠を突破してきたんだな?

ハンマーならタイミング的に一瞬を見切って手で壁をつかんでリールを巻き取れば向こう岸まで行ける。

岩なんて壁を伝っていけばそもそも起動しない!


「ニッちゃん!俺の後ろへ下がって、

こうなったらやむえない!戦うしかねぇ。」

「サイムさん!」

「・・・大丈夫、俺が誰か知ってんだろ。」

「・・・」

ニッちゃんが心配した瞳で俺を見つめる。俺は優しく微笑みサムズアップをする。

ロボットが腕をリールで巻き取りながらこう言う。

「人間が僕に敵うとでも、思っているのか?笑止千万だな。」

俺は大胆不敵に笑いだしながらこう反論する。

「ああ。敵うね。久々の喧嘩、腕が鳴るねぇ。」


そう言って、俺はポケットから取り出した『ギア』を空中に放り投げ、

腰に着いたぽジェットから武器『ガジェット』を取る。

『ガジェット』に『ギア』をはめ込めば、特殊な分子とエネルギーがガジェットから

噴出し変形してギア通りの武器になる。通信機にもなるし、

かさむ武器の重さ軽減を考慮したアイテムの一つだ。


俺のギアは


【-槍-スピアー】


「ガジェットギア!セット!」

ガジェットにギアを押し込む、ギアがガジェットの中でくるくると回りだす。

そうするとガジェットは、見る見るうちに変形していき槍の形へと姿を変える。

俺は槍をくるくると回し、ガシッと握る。

左手で、槍を持ち穂先を下へ向け絶妙に揺らしつつ右手をフリーにして

足さばきを独特に動かし体を揺らし呼吸を整え体制へ変える。

体全体がうごきながら相手をほんろうする

それはさながら動きとしてはヨガに近いとよく言われる。

これが俺の戦闘態勢だ。

ニッちゃんを守るためだ。ダンジョン内だし子供であれ容赦は難しそうだ。


「さぁかかってこいよ。この武山才無たけしやまさいむ様が相手だ。」


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


まず、ロボットがもう一度先ほどと同じように、

手を高速で射出しロケットパンチを放つ。

「おっと!ニッちゃんよけるぞ!」

「了解!」

その技は見切った。

はっきり言ってパンチが来ることが分かっていれば二人の運動神経的によけられないわけじゃあない。

炎が出てないことからおそらくガスか空気を圧縮したジェット噴射だ。

そしてさっき見た感じ発射するときに一瞬だが

腕にある一定の指を開き狙いを定める予備動作モーションが必要だ。


これを二人とも難なくよけるが、

「甘いな。」


後ろを振り返れば、手が壁を『掴んでいる。』

ロボットは手のワイヤーを戻す要領で、

手を壁に固定し体を高速でこちら側に引っ張られていく。

速いな。

ロボットは高速でこちらへ近づいてくる。


「食らえ!戦斧一線。」

斧を俺に向かい切り倒そうとする

つまりは斧の斬撃の技ってわけだ。


それなら!!

「よいしょっと!」

俺の槍とロボットの斧がつばぜり合いをする。

「おぉ!??」

威力のあまり思わず後ずさりをし、ギギギっという音がする。


まずいな。相手のほうが力が強い。

リールの巻き取る力が強すぎる。

壁に固定して巻き取られる分この直線じゃあまず不利だ!

なおかつ少女の見かけによらず、こいつとんでもない重量で馬鹿みたいに重い!!

きっっつい!!!


「サイムさん!!」

ニッちゃんが俺を支えてくれている。こりゃ頼もしい。

さすが鬼、力が強い。

たとえ女子高生でも鍛えている人間の成人男性の筋力があるニッちゃんと一緒なら押し切れる!

おかげで余裕が出てきた。


「どっせい!」

俺が何とかロボットを上方へ蹴って、つばぜり合いを押し返す。


今だ!この俺相手に隙を作っちまったな!

教えてやろう!ロボットさんよ!

俺・・・正確には俺達たけしやまぼうけんしゃの戦闘及び喧嘩で最も得意な戦術は!


『ピンチからの大逆転ジャイアントキリング』だ!


「奥義!武山流槍術タケシヤマリュウソウジュツ!」

そういうと俺は、足に力を思いっきり込めて、

地面を力いっぱい思いっきり蹴り上げジャンプをし

天井に届きそうなくらいのギリギリの高さまで飛んだ後に

ジェットコースターなんて目じゃない速さで落下していく直前に

体の態勢を整えて、

重力に身を任せつつ手に力を込め槍の刃先を下にして相手に向け。


陸合目ろくごうめ 六甲ろっこう!」


相手を撃ち破る!!


そうこの技の特徴はジャンプをし俺の全体重をのっけて放つという技だ。

体重+筋力という普段では固くて貫けないような鉄のように固い物も貫けるという俺の奥義だ。

ちなみにだが俺はバスケをやっているので、ジャンプ力にはかなりの自信がある。


さてと、

「どうだ!?」

そういって、俺は奴をみる。致命傷だったはずだ。

六甲は威力は高いが隙はでかい。

相手が『鉄』でできているロボットなら、隙は必ず作らないと攻撃ろっこうはできない。

はっきり言って、他で使えそうな奥義を使ってもいいが、

多分そんな時間はない。ダンジョン内で長期戦になった場合、

次元式の何らかの罠とか仕掛けが作動して、ろくでもない目にあう可能性だってある。

それはごめんだ。

正直、短期決戦ぱっぱとたおしたいをしたい。


ロボットはまだ倒れているように見る。

武器ガジェットにある『ギア』を少し止め

槍の形状空元の形状に戻し、ロボットの安否を確かめる。





だが・・・



「だからお前は甘い。」

ロボットはこちらに左手を向け、そしてそのまま

大きな手を俺に向けて射出ロケットパンチする。

「ッ!?」

瞬間、壁まで押し付けられて激しい力が俺の首と背中を伝わる。

「かっ、は・・・」

・・・肋骨は折れたりはないとは思うが、けっこう深刻なダメージだ。

呼吸がしづらいし。



「切り倒してやる。」

「サイムさんを離せ!!」

俺は壁に押し当てられながらニッちゃんが、俺のもとへと向かうのが見える。

このロボットの左腕が俺の体・・・正確には首の付け根から肩と壁をがっちりホールドしているせいで、

逃げられねぇ。『俺が油断してどーすんだよ!』とツッコミたいがそれどころではない

まずいな、久々にピンチだ。

ロボットが俺のもとへリールを巻き取り向かってくる。

どうする?


ん?

あ、運がいい。


まず真っ先に俺を倒すことを優先している。

だから気づこうともしない。

人間だってそうだ。

戦闘や逃走ってのは脳に過剰にアドレナリンが出て興奮状態になり周りを見ようとしなくなる。

時に自身に怒ってることに無頓着になる。

ロボットがどうかは知らないが、あいつのこの突進してくる感じから

見てなりふりは構っていない。


だって。

自身がさっきの六甲で足の関節に穴が開きうごかなくなっていることに気づかないからな。


そしてあいつは槍の行方に気づいていない。


残念だが俺の勝ちだ。



俺は不敵に笑いながら、こう言う

「ガジェッ・・・ト、ギア・セッ・・・ト!」

ガジェットをもう一度槍に変化させる。

「今更、なんの悪あがきを!」

ガジェットは特殊な分子で構成され『押し出すように武器を形成する。』

そういう性質がある。だからガジェットギアの掛け声を安全のため言うようにする。

つまり押し出すように形成される物質と今目の前に向かってくるロボットがいる。


「ッ!?」

「武・・・山、流、槍術」

そしてロボットが目の前に来た瞬間

ありったけの力を持って、押し出された槍の柄でロボットの目をぶん殴る!


「何!?」

さすがの不意打ちに動揺を覚醒内容だが!

こんなんじゃあ終わらねぇよ!!


この一瞬、ロボットがひるみ、首の締め付けが緩むのを俺は見逃さなかった。

首の締め付けが緩むと同時に一歩前へ出て、

俺の槍を六甲で開けたロボットの足の穴にさらに押し込みロボットを固定する!!

そしてそのまま槍を支点として壁を蹴り上げ、自分の体を大きく持ち上げる。

大きく体をねじりながら回転を加え、


勢いと体重を乗せ、力を放出したインパクトを加えた!


必殺のキックをロボットの頭に放つ!!!


漆合目ななごうめェ 伊吹いぶきィッ!!」

「グぁッ!?」


そのまま、ロボットは二回転ほど空中で回ったと思うと、頭から着地した。



「いよっしゃ!」

「サイムさん!やりましたね!」

「見た?俺の必殺キック?」

「見ましたよ!」

「いやー割とピンチだったわ。さすがにこのダンジョンを、

踏破したことあるだけの猛者って言ったところか。

だが喧嘩の筋は素人のそれだったな。」

いくらロボットと言えど、『きゅうしょ』に一撃を入れてやったんだ。

当分は立ち上がらねぇだろ!


「さすがに元この地区最強の不良だった、

サイムさんなだけはありますね。」


こういうのを言わるのは中学の頃は

いろんな奴らから喧嘩吹っ掛けられて片っ端から

喧嘩を買いまくって仲間たちとともに暴れまわった結果だ。


俺の槍術、『武山流槍術』は仲間とともに考案した

中学生のころのよくある

『おれのかんがえたさいきょうのわざ』ってやつだ。

特徴として『一点の鋭い一撃』だけを赴きに置いた技だ。

はっきり言って命中率は低いが、急所に当たれば戦闘不能は強い。

ただ狙わなければならないから『時間がかかる』のと

『外れたら意味がない』つまり野球に例えると『ホームラン以外すべて三振』

状況を逆転する以外をすべてかなぐり捨てる

ジャイアントキリング『のみ』が強みである非常に危うい戦闘術だ。

ぶっちゃけ一人だと危険極まりないが、仲間と組み合わせると、

威力ぶっ壊れでめちゃくちゃ使いやすいんだよなぁ・・・。


「おうよ!ま、たぶん死んじゃあいないだろうから、

ほっといて俺たちは行こうぜ。」


そんな風に言っていると

「逃がす、か。」

ロボットは倒れながらこちらをにらむ。

頑丈だな・・・こいつ。ここまでタフな奴は久々だ。


「あのさ、いい加減しつけーよ。お宝は早いもん勝ちだろ。」

「お前たちは、あれの重要性を『理解していない』。」

「あ、あの。この先にはいったい何があるんですか?」

「アルゴニック。」

何言ってんだこいつ・・・

「それはいったい何ですか?」

「超越そのもの。それ以外は聞かされていない。

僕はただ回収してくるように命令されただけ。命令は絶対だ。

だからお前らにはいかせるわけにはいかない。」


そういってロボットは立ち上がる。


「こうなったらプランGを実行する。」

「プランG?」

「この建物の下にはな、もうすでに時限爆弾が設置してある。」

・・・一瞬考えが止まる。

まておい。

「時限爆弾!?」


まて・・・ここは老朽化でもうそろそろぶっ壊れそうだし・・・

ダンジョンと言えどそんな建物にそんなことをやったら!!


「それの起爆スイッチを入れる。

そのスイッチを押してからきっかり15分後に爆破される。」

「なんですって!?」

攻略最速(RTA)記録が24分だったはずだ!!

「あれが手に入らないんじゃ、

破壊してしまってもいいと命令されている。」


正気か!?

俺は手を伸ばし叫ぶ!!

「待て早まるなああああああああああぁーーー!!」




ぽちッ。



という音がロボットの手から聞こえる。

「ごめん。もう押しちゃった。」



あ、これやばい。

「それじゃさようなら。せいぜい頑張ってあがいてね。」

ロボットはそういうと入口へ先ほどのロケットパンチをして足早に去っていった。


・・・

「ど、どうします?」

「あ、うん。・・・・たぶんだが、

あのロボットのロケットパンチで

ギリギリ脱出できる時間なんだろう・・・つまりだ。

俺たちがあのハンマーやら迷路やらを、

攻略していると確実に生き埋めで死ぬわけで・・・

壁を壊して脱出しようにもここは7階、転落死が確実。」




「・・・それって『詰み』じゃないですか?」

「・・・そだね。」


・・・


・・・



「うわああああああああああああん!!!

死にたくない!!!」

沈黙に耐え切れなくなったニッちゃんが叫ぶ

「ちくしょおおおおおおおおおおおお!!!

生き埋めなんて嫌だあああああああ!!!」

当然おれだって死ぬなんて嫌だあああああああ!!!


一気に理性より恐怖が増して騒ぎだす。





ちくしょうちくしょう、


どうすればいい?考えろ考えろ。


ダンジョンから脱出する方法なんて・・・


・・・ダンジョンから・・・


・・・ん?いや、もうこれにかけるしかない!!


「ニッちゃん!!!」

「はいい!!?何ですか!?」

「慌てふためいても仕方がない!

こうなったらこれにかけるしかない!

実はこのダンジョンには1階と

最上階をつなぐ階段がある・・・ということにしておこう。

もうこれにかけるしかない!!」


ゼル〇の伝説でよくある奴だ。あるダンジョンとかだと、

モンスターを倒すとよく見たらエレベーターがあって乗ると入口に通じていて

最初からそれに乗ればよかったと後悔した奴らもいるらしい。

よくあることだ。幸いここは人造のダンジョン!

作ったやつらがわざわざ、この大きさで

1階からわざわざ攻略しながら作ったとも考えづらい。

住宅地みたいに骨組みを作って建造しようにも、大きさ的に塔の内部も通らないと、

少し不自然にも感じる。世の中大体のものにどっかに抜け道はあるはずだ!!


「不確定すぎませんか!?」

「不確定上等!!」

「うぅう・・・。」


ニッちゃんが涙目で訴える。

わかっているが・・・

そんな風に迷っていて死ぬのと、


迷わずに動いて生きることができるなら!!!


「だってもうこれしか、生き残る道ないだろ、

うだうだいうより何とかして、生き残る道を模索するべきだろ!!

模索せず後悔をするな!!」

「りょ、了解です!登りましょう!登ればいいんでしょう!!」


俺たちは梯子へと向かい登り始める。

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