第5話

「ご主人様、起きてください、ご主人様、ご主人様」

誰かに体を少し揺さぶられる、その力加減が控えめで逆にこのまま寝てしまいたくなるほどだ。

聞こえるのは、いつもの大人らしさを含ませた声ではなく鈴のような優しい声だ。

その声の持ち主は、リアだ。僕より身長が低くて華奢な感じがとても可愛いい。

ここのメイドの1人として働いている。

桃色の髪に、桃色の瞳を宿している

そして、アイアさんたちと同じメイド服を着ている。


そんなリアだが、見た目で決めつけてはいけないとはこのことで、ケレスさんに匹敵するくらいの魔法の才能の持ち主。知識では、ケレスさんより優っているらしい。

僕が学院で頑張っている時によく、勉学から、魔術のことまで教えてもらったものだ。こんな人がなぜ僕なんかのメイドをしているのか僕が聞いてみたい。



「うんぅぅ……おはようぅ」


「はいっおはようございます」


とても健気で愛嬌があっていつも朝の目覚めが良くて気持ちいいのもこの子のお陰だ。


彼女はお目覚めのご主人様に頭を下げ、上げた。


「お手を貸しましょうか?」


「いや、大丈夫だよ」


「そう……ですか」


目覚めはいいと言ったそばから少し寝ぼけているようだ。そのせいで少し心配された。

リアは出会った頃、ものすごく僕に対する対応が引いてしまうほどすごかった。

会うたびに、跪いたりなんなら土下座もされたことだってある。あらゆることを私がやりますと言ってしてもらっていた。そんな事が多々あったので、違和感しかなかった僕は少しハードルを下げて欲しいとお願いしたら次の日から僕のことが好き好き少女となってしまった。


「そういえば、アイアさんは?」


いつもなら、アイアさんかケレスさんが起こしに来るはず…じゃなくて、本当は、自分で起きないといけないんだけどなぁ

どうしても朝早くに起きられない僕にとって、起こしてくれるメイドさんたちには感謝しなければならない。


「アイアお姉様なら、早朝からお出かけになられていますケレスお姉様は『あんたが家に残ったらご主人様を襲いそうで心配』とのことでアイアお姉様のお出かけのお供になられています。そして私はアイアお姉様にご主人様の朝のお世話という大変光栄な事を託され、ここにいます」


スカートの裾をたくし上げて、一礼された。

そんなに畏まらなくていいのにと思いながら、僕はベットから足を出してそっと起き上がることにした。


「そっか、ありがとうリア」


リアさんと呼んでいたが、『どうか、私のことは呼び捨てでお願いします!』と言われたこともあったなと思い出しながら、リアの頭を優しく撫でてあげる。サラサラな桃色の髪に桃のような甘い香りに撫でてる側が気持ちよくなりそうなほどだ。


「ご、ごしゅじんしゃまぁ」


顔を真っ赤に染めて、俯きながらニヤニヤと頬を緩めている。

そろそろいいかなぁとその手を離すと


「もっとぉ」


手を掴まれて、うるうるとした目の少女にもっとお願いしますと懇願されている状況に僕は色々と耐えられなくなってきた。


「え、えっと、ご飯はできてるかな?」


「は、はいぃ今日の朝食も私が用意させていただきました」


気を逸らしたもののリアに抱きつかれてしまった。

しょうがなく、もう数分だけ頭を撫でてあげることにした。



「どうぞ、ご主人様」


「うんっありがとう」


メイドだからっていうのは少し違うかもしれないけど、ここの屋敷のメイドさんはみんな料理がとてもうまい。そしてもちろんリアのもだ。

アイアさんに押し付けられているのだろうか、毎日僕の大好物ばかりだ。

アイアさんは、メイド長みたいなものだからみんなの教育係もしているのかな?


「はぁあったまるぅぅ」


「ありがとうございますご主人様にそう言われて光栄の極みです」


「あはは、そんなことより一緒に食べない?」

この長いテーブルでは、1人なんてとても寂しい。

そして先程から僕の後ろでずっと立っていたままだったのだ。


「い、いえメイド如きがご主人様とは…」


「もう、そういう慣習はいいからさ、一緒に食べよ?」


「で、ですがぁ」


どうやら、本当は一緒に食べたいようだ。ガードが弱いことに、どんどんと頬が上がっていくのが見える。


「じゃあ、『命令』だから一緒に食べよ?」


「ご主人様のが命令とあらば、失礼して……」


相変わらず、おどおどとしているが心の奥底で嬉しがっているのを隠しきれていない。

僕も1人で食べるなんて寂しすぎるからさ。

アイアさんとケレスさんの時なんて……


「ご主人様!?あーーんしてください全部このアイアに任せてください!」


「いえいえ!このケレスに是非ご命令くださいカズハ様!」


「あはは」


これはこれで困るけど、賑やかな方が楽しいのは当然だ。

えっと……

右前に座ったリアは食事を前にして、ずっと僕のことをじーーと見ていた


「りあ?」


「はっ……えっとご主人様の食べている姿をご主人様と同じ目線で見れて嬉しいなぁって思いまして……」


「うん僕もリアと食べれて嬉しいよ」


「えへへ、ご主人様大好きです」


そうして雑談を交わしながら食事をした























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