第19話 山田香織!?
「葉音さ〜ん!」
俺の名前を呼びながら駆け寄ってくる美少女。うむ。実に絵になる。
「やあ。久しぶり」
「久しぶりって言っても、2日ぶりくらいですけどね。あれ?お隣にいらっしゃる可愛らしい女性は?葉音さんの彼女さんですか?」
「彼女というわけでは…」
「って、葉音さん!?髪型変えました?めっちゃワイルドな感じになってますけど!!」
確かに、オールバックにはしたままにしているけど、一体、君は俺の存在を何で判断したんだい?
「あの…自己紹介してもいい?」
「ああ。すまん」
優香が申し訳無さそうに許可を求めてくる。
「私は滝中葉音さんの彼女です!」
「ええ!!」
優香が自己紹介で大ホラ吹きやがった!あと、名乗れよ!
「そうですか。お似合いですねぇ〜」
立ち話をしていると、だんだんギャラリーが増えてきた。しかも、睨まれている気がする。特に男子から。そりゃそうか。高山高校のマドンナと呼んでもおかしくない大山三郷と、絶世の美少女優香と仲良くトークしてるからな。
「それで、何で葉音さんと、彼女さんが高山高校に?」
「それはな、大山三郷、お前にしかお願いできないことかあるんだ。このあと、付き合ってもらえないか?」
噛むことなく、カッコつけて言えた。
「別にいいですよ。そのお願いって、立ち話では長くなりすぎるような案件ですよね?しかも、他の人に聞かれてまずいような」
別に、そんな大層な内容ではないが、そう答えておこう。
「ありがとな。じゃあ、どこか話せそうな場所にでも行くか」
「葉音さんと彼女さん。私、この辺のおすすめのお店知ってますよ。そこにしますか?」
それはありがたい。
「頼む」
俺と優香と大山三郷の3人は学校中から注目を浴びながらその場をあとにした。
※※※
「「……………」」
大山三郷の案内した場所は、俺と優香が5時間ほど待機していたあの小洒落た喫茶店だった。この辺のおすすめスポットって言ったら、ここくらいしかないわな。
「ここが私のおすすめのお店です!どうです?いいお店でしょう?」
「あ、ああ…」
「とってもいいお店…」
反応にこまる。
「早速中に入りましょう!」
俺と優香、本日2回目の来店
※※※
『いらっしゃいませ!……(チッ)』
お出迎えしてくれたのは、朝、俺たちを接客してくれた人だった。俺らを見た途端、露骨に嫌な顔しやがった。『チッ』とか言うなよ!聞こえてるよ!
とりあえず、俺たち3人は席に着き、本題に入ることにした。
「で、なんです?私にお願いって」
「大山三郷さんの友達にこの名簿にある名前のやつと同じ中学だった人がいるか聞いてほしいんだ」
大山三郷に渡したのは畑高の男子生徒名簿だ。
「そんなことですか?別にいいですけど。この名簿って、LINEで共有しちゃってもいいですか?そっちのほうが手っ取り速いので」
「頼んだ」
大山三郷は名簿を受け取ると、目にも留まらぬ早業でフリック入力を始める。なんだその速さは。これがコミュ力MAX女子のスマホテクなのか。
「す、すごい…」
優香もあまりの速さに驚いている。そういえば、優香がスマホ使っているところを見たことがない。連絡取る相手すらいないってことか。かわいそうに………いや、俺も家族以外に登録している人いないわ。
「あっ。返信来た。ふぅ〜ん、なになに?おおっ!かおりんに知っている人いたって!」
いや、かおりんって言われても知らんのだが。だが、さっきの名簿の中にそのかおりんとやらの知り合いがいることは確かのようだ。
「どうします?呼んだら来てくれそうですけど、かおりん、あっ、山田香織って子なんですけど、よびます?」
香織だからかおりんね。普通だな。
「頼んだ」
またカタカタとスマホを操作し始める。
「あと3分で来るそうです!」
「「さ、3分!?」」
「いや、近くにいるそうなので」
「なんだ、そういうことか。てっきりコッチのためにわざわざ急かさしちゃったのかと思ったよ」
実にきっかり3分後、俺の三次元であまり関わったことのない人種の子が息を切らしてやってきた。
うちの学校のコスプレ姫が俺の居場所を取り戻してくれたのだが!? 古都 @k104362m
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