第16話 イケメン化!?


「じゃじゃーん!ここが我が家、自慢のお風呂場でーす!」


 俺は春川母、優那さんに連行され、何故かお風呂場に来ている。


 おっ、忘れてた。お風呂場の感想。普通だ。極めて一般的な大きさのバスタブに、シャワーヘッド、床である。うちの風呂場との違いは、キレイさ、くらいだ。すべてがピカピカに磨かれている。


 ※決して俺の家の風呂場が洗われていないわけではありません。


「あの〜、なぜ僕はここまで連れて来られたのでしょうか…」


「なぜって、そりゃ〜葉音くんをイケメンに転生させるためよ!」


 て、転生!?俺、死ぬの?


「ウソウソ、変身よ!」


 ハオこと、滝中葉音は、筋金入りのアニメオタクだ。だが、世に言う『キモオタ』のような見た目はしていない。頭にハチマキをつけて、メガネをかけ、大きなリュックを背負い、いつも脂汗をかいているデブ。そんなではない(あくまで個人の感想です)。自分で言うのもなんだが、それなりに顔は整っている方だと思う。だが、どうもパッとしない。そう、それは髪型のせいなのだ。


「実はね、私はプロの美容師なのよ!そこそこ有名なね!今日は特別料金で切ってア・ゲ・ル!」


 えっ!?美容師なの?しかも、金取るの!?


「ジョーダンよ!お金なんて取らないわ!娘の初めて連れてきたカレシさんだもの!」


「い、いや、別に彼氏では…」


「さあさあさあ!とりあえず、ここで全裸になってちょうだい!」


 はっ?えっ!?なぜに全裸?もしかして、誘われてる?


「あの、僕、まだ童貞なんですけど…」


「違う違う!髪切るから服を脱いでって言っているの!初めては優香にあげてね」


 そういうことですか。失敬失敬。…って、えええ!?お母さん公認!?確約ですか!


「ほら〜、早く早くぅ〜!」


「す、すみません」


 俺は急いで服を脱ぐ。



「あ、あの〜、さっきのは半分冗談だったのだけれど…」


「あっ…」


 やらかした。俺は確約の嬉しさのあまり、羞恥心を忘れていたのだ。つまり、俺のムスコは隠されていなかった。


「イヤンっ!」


 つい、女々しい声を出してしまった。


「随分と立派なものをモノをお持ちで…」


「わ、忘れてください!」


「私は何も見なかった。見なかった…。よし!なにも見ていない!大丈夫!葉音くんの立派なイ○モツは見てなかった。OK?」


 しっかり覚えてんじゃん!あと、イ○モツとか普通に言うなよ!


「優香には黙ってておいてくださいよ」


「わかってるって!さあ、ちょっと待っててね道具持ってくるから」


「はい…」


 優那さんは俺の視界から退場した。


 あわあわあわ…やらかしたー!まさかムスコを出会って間もないクラスメートの母親に見せつけてしまうとは…


 優那さんのいなかった5分間、恥ずかしさのあまり、もだえ苦しんでいた。


※※※


「鏡を見てちょうだい!」


 いきなり時間はとんで、すでに散髪が終わっている。


 なんということでしょう~!長く、半分目にかかり、とても鬱陶しかった前髪が、このとおり!男らしいオールバックに!………いや、駄目だから!!!校則的にオールバックはアウトだから!!


「あの…校則でオールバックは…」


「うん!会心の出来!優香呼んでくるから待っててね!」


「え…」


 いや、待ってくれよ!今、俺、パンイチだから!!話聞けよ!


 服に切った髪の毛がつくからという理由で、俺はパンイチ姿で散髪されていた。


※※※


 30秒後


「えっ……誰?」


 優香の感想第一声。


「カッコよくなったでしょ葉音くん」


「あの、あまりジロジロ見ないでください。パンツしかはいてないので」


 流石の俺でも30秒では為す術もなく、先程と同じ姿で優香に見られている。


「ホントにハオなの?このイケメンの子が?」


「一応そうなんだが…」


 言ったろ?元は良いって。


「ふぅ〜!お母さんの目に狂いはなかったわ!」


 そろそろ服着ていいっすかね?


「ハオ!」


「はい葉音です」


「似合ってるよ!」


 言っていることは単純。一言だが、満面の笑みで俺を褒めてくれる彼女は天使だった。


※※※


 また時は進み、再び優香の部屋


「さて!作戦会議を再開しよう!」


「そうだな」


 目的を忘れるところだった。優香の家に来てから、優香以外の春川家の人々に拘束され続けていたためである。


「えっと、なんだっけ?」


 お前が忘れてるんか〜い!


「クラスの陽キャどもの化けの皮が剥がれた件についてだったんじゃないか?」


「そうそう、それ!名付けて『お前の黒歴史、公開しちゃうぞ!』作戦!」


 こ、怖え〜。黒歴史公開されるとか、絶対死にたくなる。


「ど、どんなことを具体的にはするんだ?」


「ふっふっふ〜!それはね…」



 優香の語りだした作戦は世にも恐ろしいものだった。





 


 



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