うちの学校のコスプレ姫が俺の居場所を取り戻してくれたのだが!?

第17話 手がかり!?

「具体的にはね〜ソイツらの中学時代の友人に協力してもらって、当時の写真を集め、学校中にバラ撒く！」

　とてつもなく手間と時間のかかるが、確実に陽キャでいられなくなる手段を言い出した。これされたら、元陰キャは絶対に死ぬ。

「だがな、優香。どうやって、ソイツらと同じ中学のやつとコンタクトを取るんだ？コミュニケーション能力は僕も優香もゼロだろ？」

「た、確かに！」

　ほんと、アホな子。

「優香には他の高校に行った友達とかはいないのか？もしいたらソイツにクラスの男子の名前を教えて、知っているやつを紹介してもらえばいいし」

「友達、友達ねぇ…」

　うわぁ…気まずいこと聞いちゃった…。そういえば、この子も俺と同じで友達０だったよね…

「す、すまん。悪かった」

「なんでハオがあやまるの！これじゃあまるで私に中学時代の友達がいなかったみたいじゃん！」

「えっ！？いたの？」

「いや、いなかったけどさぁ…」

　うわっ。ホントスイマセン。

「ハオはいたの？」

「僕もいなかった」

「やっぱりぃ〜！」

　やっぱりってなんだよ！

「しかし、困ったね。せっかくいい方法だと思ったのに、まさか、私達の友人網がこんなに死んでいたなんて…」

「いや、待てよ。友達ではないけど、知り合いなら他校にいるぞ。少なくとも同中のやつよりかは話しやすいやつが！」

「誰？」

「大山三郷！」

「ああ！あの人か!」

　例の爆走お騒がせ美少女のことである。

「でも、連絡先は知っているの？」

「あっ…」

「だめじゃん！」

　今となってさらに連絡先を交換しなかったことを後悔している。

「はぁ〜どうしよう」

「よし！ストーキングしよう！」

　優香がまたとんでもないことを言い出した。

「ストーキングはだめだろ…」

「じゃあ、待ち伏せ！」

　どちらにしろだめな気がするが、待ち伏せたほうが確実か。まあ、またいつ走るのが止まれなくなって突っ込んで来てくれるかわからないしな。

「よし、それでいこう。しかし、どこで待ち伏せするんだ？家なんか知らんぞ」

「高山高校だったら知ってるでしょ？だから、朝から校門の前に待機して、大山三郷が帰るタイミングで捕まえるの！」

「朝からといったって、僕達も学校があるだろ」

「そこは心配なく！明日は土曜日。我らの畑高校にはないけど、大抵の高校には土曜授業と呼ばれるものが存在している！！」

「そ、そうか！」

　畑高校の特徴として、授業時間が少ないというものがある。大抵の高校には、七時間目や、土曜授業、夏期講習に冬期講習などと呼ばれるものがあるが、畑高にはない。そんな授業が必要ないほど頭がいいということだ。だから、月曜日から金曜日までで、6×5時間の授業である。

「よし！では、明日の朝6時から高山高校の校門の前にて、ターゲットを待ち伏せる！」

　なんだか、楽しそうだな。

「おう！」

※※※

　その後、俺は春川家に夕食までごちそうしていただき、帰りは例のリムジンで送ってもらった。その間、特にラブコメらしいイベントは起こらなかったし、春川家富豪の秘密もわからなかったが、堪能できたのでよしとしよう。

※※※

　自宅にて

「あの、どちら様でしょうか…」

　家につくと、母さんにそんなことを言われた。

「はっ？なんで？葉音だよ？あなたの愛する息子の葉音だよ？」

「いやいや、ないでしょ。だって、うちの葉音はネクラそうに見える長い前髪がトレードマークだったはずよ！こんなイケメン風な子じゃないもの！」

　おい！

「だから、葉音だって」

「本当ぉ〜？」

　すると、

「うわっ。誰？その人？お母さんの男？」

　し、失礼な！志音のご登場である。

「志音、お前の尊きお兄様だよ」

「いやいやいや。ないでしょ！バカ兄貴はもっと、ボッチな見た目してるし」

　おい！！なんでこうも親子で似たような反応するのかねぇ…。しかも、ボッチな見た目ってなんだよ！

「俺は、帰りに優香の家に寄らせてもらったんだよ。で、優香のお母さんがプロの美容師で、髪を整えてもらったんだ」

「優香？誰？」

　そういえば、志音とは会ってないんだっけ。

「まさかホントに葉音なの？」

　疑り深い母。

「だから何度言ったらわかるんだよ！！」

　疲れてるから早く上がらせてくれ！

「ごめんごめん。最初から気づいてたよ。息子の顔を忘れるわけないじゃない。昔の面影もあるしね。今じゃちょっとアレだけど」

　気づいてたんなら早う入れろや！それに、アレってなんだよ！

　志音は本当に俺がわからなかったらしく、寝るまでずっと睨んできた。いや、いつものことか。

　あーあ。疲れた。

※※※

　次の日

　ただいま朝6時。高山高校の校門前。もう４月だというのに風が冷たい。俺の横に待機しているのは、皆さんご存知、ぼくらのアイドル！春川優香である。ちなみに、今日はコスプレではなく、外出用の私服らしい。分厚いベージュのコートに赤いマフラー。紺色の手袋下はよくわからんが、暖かそうな長ズボン。実に可愛らしい。よく似合っている。

　今日は休日。隣には美少女。俺、リア充じゃね？

「優香、ホントに大丈夫だったのか？せっかくの休日に、しかも朝６時だし」

「全然！だって、ハオと一緒にいるの楽しいもん！むしろ嬉しい！」

　天使かよ！マジでかわいすぎるのだが！

「しかし、朝６時だと、帰るタイミングじゃなくて、登校のタイミングになってしまうんじゃないか？」

「確かに！くっ…一生の不覚…」

　どうした？急な中二病？

　アホな子と中二病の最強タッグの誕生の瞬間であった。

「じゃあ、どうする？どこかでお茶して待ってる？」

　さり気なく誘う。とても勇気いるな、これ。

「そうしよっか！どこにする？ハオに任せたよ！」

　良かった！いい反応！

「任せろ！」

　マジのデートっぽくなったぞ！