第14話 春川家!?


 デカい。まずはじめにそれしか出てこない。俺の家の3倍をゆうに超える広さの家だ。しかし、ボディーガードを他人の家の子につけてあげたり、リムジンに乗れるほど度を越した金持ちにも見えない。


「ようこそ!我が家へ!」


 優香は最高の笑顔で俺を家まで引っ張って行った。


※※※


 玄関前までたどり着いた。感想、普通だ。いや、普通の家よりかは少し大きめか。


「本当に僕はおじゃましてもいいんだな?」


「もっちろん!」


 そう元気に言い放った優香は、いつの間にかアスナではなくなっていた。ついさっきまでアスナだったはず…。いつ着替えたんだよ!もう家だし、着替える必要なくね?……まさか、家族にはアニオタであることを隠しているのか?


「何考え事しているの?入るよ!」


「お、おう」


 考え込んでしまっていたようだ。いかんいかん。とりあえず、優香の家族と会ったときのあいさつを考えなければ。


「ただいま〜!」


「お邪魔します」


 俺が優香の家の玄関に入った感想。やはり普通だ。


「やあ。君が滝中葉音くんだね?」


 しかし、普通な玄関に、普通ではない、かっちりとしたスーツを身に纏った二十代に見える背の高い男性が待っていた。顔はイケメンである。目元が優香にどことなく似ている。優香のお兄さんかなにかだろう。


「はじめまして。優香のお兄さん。僕が滝中葉音です」


 俺が、言い切った瞬間、優香と優香兄(仮)が大きく目を見開いた。


「あ、あのね、ハオ、お兄さんじゃなくて、お父さんなんだけど…」


「……」


 はっ?なんだって?お兄さんじゃなくて、お父さん?いやいやいや、絶対違うって!こんなに若く見えるんだよ?二十代だよね?


「すまない、滝中くん。私はこの子、優香の父だ。名前は春川直斗。ちなみに、歳は今年で48だ」


 嘘だッ!


 ついひぐらしのなく頃にのレナ化しそうになってしまった。


 が、とても四十代後半には見えない。これは世に言うロリババア的なやつか?いや、ババアじゃないな。


「失礼しました。てっきり二十代そこそこだと…」


「かまわないよ。私としても若く見られるのは嬉しいからね」


 『〜ね』といいながら笑顔になる仕草は優香に通ずるものがある。やはり親子なのか。


「お兄ちゃーん!」


 突然、優香が叫ぶと。


「優香、おかえり」


 二階から、本当のお兄ちゃんが降りてきたようだ。


「お邪魔してます」


 優香兄(真)は、これまたイケメンだった。背が高く、スラッとしていて、イケボ。顔は父親によく似ている。もはや兄弟まである。


「葉音くん、でよかったかな?僕の名前は春川優斗。現役大学生の21歳だよ。よろしく」


 ってことは、俺や優香と5、6歳差か。それにしてイケメンだな〜


「よろしくおねがいします」


「玄関で立ち話もなんだ。上がってくれ」


 どうやら、俺は春川家に気に入ってもらえたようだ。


※※※


「滝中くん、君は何歳だったかな?」


「今年で十六歳です」


「葉音くんも畑高の生徒さんなんだよね?優香と同じクラスで」


「はい。そうですが…」


「そうかそうか!いや〜これからもよろしく頼むよ葉音くん!」


 作戦会議をするはずだったのだが、今は春川家リビングの食卓に拘束され、質問攻めにされている。リビングも一般的だ。家の大きさにともなって、少しばかり広い気もするが、家具などにお金は使っていなそうだ。人の家に来て、家具の査定するなんて、俺、相当嫌なヤツな気がする。


「ねえお父さん、お兄ちゃん、そろそろいいでしょ?ハオを返してよ!作戦会議しなきゃいけないの!」


「すまない。つい嬉しくなってしまってな。この子が友人を家に連れてくるなんて初めてだったもので…」


「もう〜恥ずかしいことハオにバラさないでよお父さん!」


「あはは…」


 反応に困るな。ってか、やっぱり友達ゼロだったのか。俺でも家に一人くらい連れて……いや、俺もなかったわ。


「ほら!ハオついてきて!私の部屋に案内するから」


 俺は優香に連れられ、人生初の女子の部屋に訪れようとしていた。(妹の部屋は除く)


※※※


 今、優香の部屋の前に立っている。ここまでは極めて一般的な一軒家といった内装だったが、優香の部屋だけ異なっていた。優香の部屋のドア以外は木製のものであったが、ここは金属製だった。しかも、家の中のドアなのに、除き穴のようなものまでついている。必要あるか?


「ちょっと待っててね」


 そういうと、優香は除き穴らしきものに少し離れたところから熱い視線を送り始めた。


 カチャッ


「えっ?なにそれ!」


「顔認証だけど?」


 どうやら、除き穴らしきものは顔認証用のカメラだったらしい。そこまでいる?


「ハイテクだな〜」


 そう思った矢先、ドアが開くと、その中にもドアがあった。


「二重!?」


「そうだよ?あっ、カギ、カギ!」


 2つ目のドアは顔認証ではなく、一般的な鍵が必要なドアだった。室内のドアで、玄関並に掛かる鍵があるだけでも十分異常だけどな。


「さあさあ!入って!」


「お、おじゃましま~す」


 入るまでに、色々あって、薄れていたが、人生初の女子部屋。緊張する!


 一歩足を踏み入れると、そこには俺からしても異常な光景が広がっていた。






 

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