第10話 ボディーガード!?
プップー…プップー…
ただいま朝の6時半、普段なら俺のドリームタイムである。が、しかし、そんなドリームタイムはプップーの騒音によって妨げられた。近所迷惑だろ!誰だよ!多分車のクラクションだな。
どんな野郎かとカーテンを開けると、音源と思われる車、それもリムジンが俺の家の真ん前に停まっていた。
はっ?どちら様?いまだ状況が理解できていないのだが!?
すると、車から人が降りてきた。それも、真っ黒なスーツを身に纏ったガッチリとした大男。真っ黒なサングラスをかけ、まるでヤクザだな。…ん?なぜうちに?どうせ人違いならぬ家違いだな。うん。きっと。
ピーンポーン
グラサン男が家のインターフォンを鳴らした。
は〜い
妹のそこそこ元気な声が聞こえた。早起きですね〜。
ガチャリ
ドアを開ける音がしてから10秒もしないうちにドタドタと階段をかけ上がる音が鳴り響く。
「おおおおおい!バカ兄貴!何やらかしたんだよ!」
足音の主も志音だったらしい。
「朝から騒がしいやつだな」
「バカ兄貴、外のリムジン見なかったのか!しかも、インターフォン鳴らした人怖すぎんだけど!低い声で『滝中様のお宅でよろしいでしょうか?葉音様はいらいっしゃいますか?お迎えに上がりました』って言ったんだよ!なに?追われてるの?」
はっ!?俺のこと迎えに来ただ?冗談はよしてくれよ〜。
「俺は別に…」
俺の思考回路がこれまでにないほどフル回転した。(入試当日のほうが使いました)
「わかった!志音悪い!すぐに着替えるから出ていってくれ」
「は、はぁ〜?って、ちょっとー!」
強引に志音を部屋の外に追い出し、即着替えると学校の準備を済ませ、一階におりた。
「おはようございます。僕が滝中葉音です」
グラサン男にあいさつする。
「バカ兄貴?なんで『僕』?いつも『俺』じゃん!」
くっ、痛いところを…
言えない、優香にカッコつけたくて、最近のラノベラブコメの主人公にありがちな一人称が『僕』で、語尾が『〜だ』みたいな喋り方しているなんて!!
「えっ?なんだって?」
ここは『はがない』の羽瀬川小鷹ばりに難聴主人公に徹しよう。使う場面が微妙に違う気がするが。
※『はがない』は『僕は友達が少ない』の略称で
す。
「聞こえてんだろバカ兄貴!」
「悪いな志音もう行くから、帰ってから話を聞こう」
「はぁ〜?」
「すいません。うちの妹、ガラが悪いんです。反抗期なので。おまたせしました。行きましょう」
「はい。ではこちらに」
志音の不満気な表情をあとにドアをくぐった。
※※※
「うわ!デカ!クロ!ナガ!」
初めて生で見るリムジンに対する素直な感想である。
「お嬢様が中でお待ちです」
「ああ、すいません」
リムジンに見とれていたらしい。グラサン男に急かされてしまった。
「どうぞ」
グラサン男が俺のためにドアを開けてくれる。ちょっとした成金気分だ。
「ありがとうございます」
リムジンの中は予想以上に広かったが、先客がいたようだ。
「おはようアスナ」
「おはようキリトくん」
血盟騎士団副団長の結城明日奈…のコスプレをした春川優香が待っていた。どうやら今日の俺の役は桐ヶ谷和人、キリトらしい。(二人とも『ソードアート・オンライン』のキャラクターです)
「今日のコスプレもレベル高いな。レイピアまで装備してくるとか、絶対学校行く気ないだろ!」
「今日のは気合い入ってるんだ!レイピア持ってみる?相当な重量だよ!」
最後の無視かよ。
「どらっと…重っ!想像より重い」
「でっしょ〜!」
プラスチック製かと思ったら、普通に金属製だった。これ、危なくない!?
「銃刀法違反にならないか?これ」
「大丈夫!何も切れないから!」
鈍器にはなるがな。
「あっ、これプレゼント!ほいっ!」
プレゼントと言われ、優香が投げてきたのは長いものだった。
「重っ!いったい、これは…って、えええ!?エリュシデータじゃん!」
優香が投げてきたのはキリトがアインクラッド編で愛用していた片手剣、エリュシデータだった。
「さっすが〜!ひと目見ただけでキリトの剣でも、名前まで当ててくるなんて!」
昔、キリトに憧れて、エリュシデータやダークリパルサーを作ろうとしたり(ダンボールで)、絵に描いたりしたからな。
「エリュシデータの刃まで金属製かよ!危なくないか?」
さっきのレイピアより重いのだが。
「これで自分でも戦えるでしょ!」
そういうことか。理解した。防衛手段として渡されたんだな。せめて木刀とかにしてよ!
「まあ、ありがたく受け取っておくよ。値段はどのくらいだ?ただでもらうわけにはいかないしな」
「別にいいよ。私の自作だし」
ふぅ〜んそうなんだ。自作、自作…ええっ!?これ、優香が作ったのか?
「これ、売ったらめちゃ儲かるぞ。公式のやつより再現度高いまである」
「売るのはいいかな〜。お金がほしいわけじゃないし。趣味だから」
そりゃ〜リムジン乗れるくらいお金に余裕があれば必要ないわな。
「あっ、ごめん紹介が遅れたね。インターフォンを鳴らしたサングラスの人が黒井さんで、今、運転席にいる人が白井さん。二人とも今日からハオのボディーガードだよ!」
「今日から葉音様の身辺警護を担当する黒井と」
「白井です。よろしくおねがいします」
マジですか。冗談だと思ったのに、意外とマジなボディーガードがついてしまった。
「こちらこそ、どうぞよろしくおねがいします」
こうして、俺の日常に二人のボディーガードが加わった。
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