第5話 ラブコメ!?
誰かとぶつかりそうなシチュエーションの俺である。食パンを咥えて走っている前回の続き。
曲がり角があるが、どこかのラブコメのようにjkとぶつかるような展開は来ない。脳内でこんな妄想をしていると、ヤバい!電車に遅れる!!!!うぉー!50m走9秒台の最高速度で走っていると、前方から何やらものすごいスピードで走ってくるものが見える。なんだ?この一瞬の思考が俺の判断を遅らせた。
「どいてどいて〜!止まれないの〜!」
次の瞬間俺の意識はどこかへ消えていった。
※※※
……すか………だい……か……大丈夫ですか!
顔の上から女の子の声が聞こえる。
クンカクンカ。シャンプーの匂いだろうか。とても甘くいい匂いがする。
「ん?」
目を開けると前には知らない女の子の顔が間近にある。俺の頭の下はなんだか柔らかい。もしや、膝枕では…
「よかったー!どこか痛いところはありませんか?本当にすいません私のせいで…」
うむ、この状況は理解した。よくある、美少女とぶつかって始まるベタなイベントだろ?まあ、それにしては俺のダメージはデカすぎる気がするけど。とりあえず意識が戻ったのに膝枕でいるのはまずい。起き上がるとするか。
「大丈夫だよ。気にしないで。俺ももう少し周りに気をつけていればよかったし」
「本当ですか?お優しい方ですね!」
可愛らしい少女だった。声まで可愛らしいが、来ている制服から察するに高校生だろう。朝日が彼女の髪の毛に反射し、きれいな黒色のロングがよく映える。
「そういえばとっても急いでいたけど時間は大丈夫?」
「はい!大丈夫…じゃないですね。遅れちゃいましたけど、まあ、いいです。怪我をさせてしまった相手をほっておくような人にはなりたくありませんしね。そういえば、自己紹介がまだでしたね。私の名前は大山三郷、高山高校一年です!」
なんと!同い年でしたか。高山…って、あの高山高校か?全国偏差値ランキング十年連続最下位の?まあいいや。どんなにバカ学校の人でも、可愛ければなんとかなる。羨ましい。
「俺の名前は滝中葉音、畑高一年です」
「ええっ!?畑高!?あの畑高ですか?全国一の高校のあの?」
「ま、まあ」
「すごい!すごい!じゃあ、すっごく頭が良い方なんですね!」
「そうでもないよ」
本心である。
「謙遜まで!なんだか、有名人にあった気分です!握手してください!」
まさかのばったり美少女との触れ合いイベントだあ〜!
「いいよ」
やわらけ〜!女子の手ってこんなにも触り心地がいいのか!
「きゃ〜!ありがとうございます!」
「こちらこそ」
夢のような時間だったが、それもそろそろ終わりにしなくては。学校には遅刻しても行ったほうがいい。なんせ、まだ入学三日目だし。
「では、そろそろお互い、学校に向かったほうがいいね」
「わかりました。本当にすいませんでした。さようなら〜!」
大山三郷は元気に走り去って行った。
しくった!連絡先聞いておけばよかった。
※※※
時は3時間目の休み時間。
教室に入ると、俺の席の後ろに、優香ではなく、また違う学校の制服を着たお団子ヘアーの女子生徒が座っていた。
まあ、俺はそんなこと気にせず席に着くがな。
一応挨拶をして見る。
「あ、どうもこんにちは〜」
「やっはろー!」
「やっはろー由比ヶ浜…という名の優香」
「さっすが〜!今日のコスプレは俺ガイルの由比ヶ浜結衣でした!」
由比ヶ浜のコスプレはとても似合っている。顔のタイプが原作に近いからだろうか。めちゃくちゃ可愛いです!
「それにしても優香は本当にクラスから浮いてるな。まあ、僕も、優香のこと言えんが」
「グサッとくるセリフをそんなにもさらっと…ぐぬぬ」
ぐぬぬの顔もかわいいです!
「ねえ、今日はヒッキーって呼んでいい?」
「いいわけないだろ!俺ガイル見たことないやつが聞いたら誰だよ!ってなるだろ!」
何を考えているんだ優香は。これでも畑高入試トップ合格なのか?
「ちぇ〜」
「『ちぇ〜』ってほんとに言うやつ初めて見たわ!そういうのはな、本当にかわいい女子が言うから…ごめん、何でもないわ」
すいません。優香、めちゃかわいい女の子でした!
「by the way、なんで今日は遅刻したの?」
唐突に取って付けたような英語を使うと習いたての英語をやたらと使いたがるバカ中学生みたいだぞ!ああ、由比ヶ浜っぽくしたのね。でも、原作にはそんな描写ないよ。
まあいい。
「登校中に不慮の事故に巻き込まれてな」
最高の時間でしたが。
「なになに?不慮の事故ってことはあれかな?犬のサブレを散歩しているお団子ヘアーがトレードマークのJKが犬のリードを離してしまい、道路に出て、リムジンに轢かれそうな犬をヒッキーが助けた。しかし、ヒッキーは代わりに車に轢かれたってことかな?」
セリフ長いよ!俺ガイル知らないやつこれ聞いたらお前の妄想の豊かさにドン引きだよ!てか、お団子ヘアーのやつ、お前だからな!あと俺はヒッキーじゃねー!
「優香、それだと、僕はその後、入院して高校ボッチが確定するぞ」
「確かに!」
心底感心しているようだ。
「反応まで由比ヶ浜か。レベル高いな」
「あっ、もう次の時間始まるよ。え〜っと、確か次は現国だよ」
「おお、そうか。ええっと、たしか机の中に置き勉してて…うわぁぁぁぁああ!」
俺の現国の教科書は茶色い液体まみれ(たぶんコーヒー)になっていた。
朝の出来事ですっかり忘れていたが、思い出した。俺、いじめ受けてたわ。果たし状もらってたわ。
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