第4話 ラブレター!?

 前の話のヒントで優香は何にコスプレをしているのか、わかっただろうか。正解は…


「けいおん!の平沢唯だろ」


「正解!と言いたいところだけど…」


 えっ、違うのか?隣に置いてあるのはギターのギー太だろ?


「真の正解はアニメ第一期、文化祭前に風邪をひいた唯の影武者として軽音部に来た妹、憂のコスプレでした!」


 なんてマニアックな!いや、たしかにその回は良かったよ。憂の唯のモノマネのレベル高すぎて一周目のときは本当に唯が風邪を治して部室に来たと思ったけどさ〜。普通わからんから!


「流石だな」


「大したことないよ〜!えへへ〜」


 喋り方までキャラになりきるとは。 


 俺が登校して5分とたっていないが、すでにクラスには不穏な空気が漂ってきた。内容は大方予想がつく。いつも奇抜な格好をしているが、学校のマドンナと高校入学二日目にして、仲良く話をしているからである。アニメなんかでは、美人過ぎると逆に近寄りづらいなんてシチュエーションがあるが、まさか、現実で起こるとは。みんなもっと声かけろよ!


 

 …キーンコーンカーンコーン…


「はーい皆さん席について下さい!出席確認始めますよ〜!」


 不穏な空気を断ち切るかのように教室に入ってきたのは南出先生だ。


 今日の出席確認は特に問題もなく終了した。


※※※


 ここで、時間は半日飛ぶ。朝のホームルーム以降、優香や他のクラスメートと関わることもなかったしな。


※※※


 して放課後。下駄箱にて。


「さて、帰るか」


 独り言をつぶやく。下駄箱を開くと、中から一枚の封筒が落ちてきた。


 この、ラブコメにありがちなシチュエーションに動揺しそうになるが、ひとまず何事もなかったかのように振る舞う……なんてことは不可能だ。なんてこったー!絶対ラブレターやんけー!ここここここでラブレターを開けるのは、まずいな。よし。家に帰ってから開けよう。楽しみは取っておく主義なんだ。


 このあと、俺は浮ついた足取りで帰宅した。


※※※


「たっだいま〜!」


 柄にもなく元気な帰宅挨拶をしてしまった。


「あらおかえり葉音」


「おっ、母さん!」


「どうしたの?今日はやたら元気ね。まるで、下校前に下駄箱を開けたらラブレターが入っていて、家までスキップしながら帰って来たみたいに。でも、今、志音が気持ちよさそうにリビングで寝てるからあんまりうるさくしないでね!」


 鋭すぎるよ母さん!ちなみに、志音は俺の妹。中学2年生で反抗期真っ盛り。あっ、今年から中3か。


「静かにしておくよ」


 俺は自分の部屋でラブレターを開けることにした。


※※※


「ふぅ〜緊張するな〜。開けようかな〜でもでもやっぱりやめようかな〜」


 部屋で一人こんな独り言を言っているやつ、客観的にみたら相当キモいよな。わかっているがやらせてくれ。


「よし!開けるぞ!」


 封筒を破かないよう丁寧に開けていく。中から割れ物でも出すかのようにゆっくり中身を取り出す。


「わかってた。わかっていたはずなんだ」


 中身を見た瞬間俺の気分は天から地に落ちた。


 ___________________

|                   |

|       果たし状        |

|                   |

|       葉音○ね        |          

|                   |

|     全クラスの男子より     |

|                   |

|___________________|


 中身は上の図のようなものだった。これ書いたやつ果たし状の使い方間違ってるだろ!果たし状は誰かを呼び出してケリをつけるときに書くだろ普通。何が『葉音○ね』だ。ただのいじめじゃないか。しかも全クラスの男子よりって。大体理由は想像出来る。どうせ俺が優香と仲良さそうに話しているのが気に食わないんだろ!


 はあ〜俺も馬鹿だ。何浮かれていたんだ。そもそも、入学二日目でラブレターなんて書かないだろ。それに、アニメでも下駄箱でお手紙のシチュエーションはラブレターだけじゃなく、果たし状みたいなシチュエーションもあることを俺は知っていたはずだ。こんなことで動揺するなんて、童貞ばれちゃう。


「葉音〜ごはんよ〜!」


 この萎えていたタイミングで母さん「ごはんですよ」の合図。ナイスです。


「今行く!」


 引きずっていても仕方ないので降りることにした。


※※※


「葉音、座って待っててね。お茶注ぐから」


「はい」


「あれ?元気ないね。さっきまでの元気はどこいったのかな?もしかして情緒不安定?病院行く?電話しようか?」


 ウゼー!煽ってくんなよ!しかも煽り方、中学生かよ!


「元気はなくない」


「ほんと?まるで、下校前に下駄箱を開けたらラブレターが入っていて、家までスキップしながら帰って来たらドキドキしながら中身を見てみると、実は果たし状だったみたいな顔してるよ?」


 どこまで鋭いんだよ!


「なんでもないよ。なんか体調悪いみたいだから飯食ったらすぐ寝る」


「あら、そう。わかったわ。お風呂だけは入ってね!」


「オッケーです」


 このあとも母さんは煽ってきたり、志音は起きてきたりしたが、とりあえず俺は風呂に入り、すぐに寝た。すべて忘れよう。


※※※


 今日も、いい朝だ。朝日を浴びながら起きるこの瞬間ほど清々しいものはない。まあ、春と秋限定なんだけど。昨日のことなんか、もう忘れた。ラブレターだと思ってたのが果たし状と言う名のいじめ案件だったことなんて…いや、忘れてないじゃん!


 準備しながらそんなことを考えていると、もう登校の時間になっていた。


「葉音!行く時間よ!」


「おけ、わかった!」


 急いで一階に降りる。


「あれ?志音は?」


「もう行ったわよ。葉音も遅れちゃうわよ。これでもくわえて行ってきな!」


「はうっ!」


 くわえさせられたのは焼いただけの食パンだった。


「いってらっしゃ~い!」


「はうぅぅ!」


 強引に家から追い出された。でも、事実、時間はやばかったので走ることにした。こんな絵面、かわいいjc,jkとかじゃないと萌えないんだよな〜




 


 


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