第3話 連れ出し!?

「あんた、もしかして、涼宮ハルヒの憂鬱を知っているの?」


「ああ」


「ちちちょっと、ツラ貸しなさい!」


「えっ」


 春川優香は席を突然立ったと思うと、俺の腕を強引に引っ張り、引きずりながら廊下に連れ出した。なんだ?少し焦っていたように見えたが。それと、ダサく見えるから引きずるなよ!


※※※


「本当に知っているのね?」


「そうだが」


 こういうのは、最初が大事だ。カッコつけとこう。


「ああああああああああ〜!」


 んんん!?どうした?


「なんでよ〜!」


 春川優香の顔がみるみる赤くなっていく。


「どうしたんだ?」


「この頭の良い学校なら深夜アニメを知っている人はいないと思ったのに〜!」


 そういうことか。元ネタを知っている人がいなければどんなコスプレをしても恥ずかしくないと。いや、どちらにしろ、奇抜な格好であることには変わりないから、十分恥ずかしいと思うのだが。


「な〜に、恥ずかしがることはない。とても似合っていると思うぞ」


 俺、イケメンかよ。


「ほ、ホントに?」


 少し涙目になっている。可愛すぎません?


「一つアドバイスをさせてもらうと、ハルヒは自己紹介のときはロングヘアーだったな」


「あっ…」


 そう。ハルヒといえばショートカットのイメージが強いが、初期ハルヒはロングヘアーなのだ。


「質問していいか?」


「いいわよ」


「春川優香、お前は何着学校に衣装を持ってきているんだ?」


「今日は着てきたのも含めて3着」


 これで今日の変身は終わりか。


 すると、春川優香は自分の頭に手を伸ばし始めた。


「ふぅ〜しっかし、今日は暑いわね」


 ショートカットはなんとカツラだったのだ。俺は衝撃で言葉が出ない。髪の毛の長さは先程とほとんと変わらない。違いといえば黒髪ではなく、キレイな栗色の髪の毛であることくらいだ。。髪の毛のふさぁ〜っとしたときに来る風に春川優香の匂いを感じる。ああ、いい匂いだ。


「どうしたの?顔が気持ち悪いわよ」


「ああすまん」


 どうやらやばい顔をしていたらしい。


「「……」」


 会話が続かない。


「ね、ねえ、あなたはこのあと私をどうするつもりなの?」


 それは性的な意味でですか?…違うことくらい自分でもわかってる。


「別にどうもするつもりもない。春川優香がアニオタであることをばらしてもこちらになんのメリットもないからな」


「よかった〜。流石に初日から私のイメージがアニオタだと嫌だからね」


「では僕はそろそろ教室に戻るとするから。じゃあな」


「ちょとまったぁ〜!」


 春川優香が俺の袖を引っ張りながら叫んだ。


 なんだこの萌シチュ。


「あなたの名前は?」


 ついさっき自己紹介したろ。話聞いてろよ!


「僕の名前は滝中葉音だ」


「はおとはおと…覚えた!ハオって呼んでいい?」


 いきなりあだ名ですか。距離の詰め方エグいな。


「僕も優香って呼んでいいか?」


 これはチャンスだ。学校一の美少女で入試トップ合格者を入学初日から名前呼びできるかもしれないなんて。どこのラブコメだよ。


「別にいいわよ。これからオタ仲間としてよろしくね!」


 かわいいいいいい!そのセリフをウィンクしながら言うのは反則だろ!!!!というか、口調が変化している。多分さっきまでのツンツンした喋り方はハルヒをイメージしていたのだろう。


「じゃあ戻ろうか」


 さっき俺を教室から連れ出すときとは違い、優しく手を掴んで引いてくれる。女神ですか!


※※※


 教室に戻るとなぜだかクラスメイト(優香を除く)全員から睨まれていた。察した。教室に入るまで優香に手を引かれていたのだ。こんなラブコメ展開、入学初日に見せつけられて気分のいいものではない。しかも、相手がすでに畑高のマドンナとして認定されている優香だ。妬みはひどいものだろう。


※※※


 入学初日最後の鐘の音が鳴った。俺は周りの目が怖かったので速攻で帰ることにした。結局優香に話しかけた、話したやつは俺だけだったので当然のごとく優香はボッチだった。あまりに完璧な美少女も考えものである。俺が教室を出る瞬間、優香の方を向くと、捨てられた子犬のような目でこちらを見てきた。すまん。俺も一緒帰りたいが、みんなの目が怖いんだよ。心を鬼にして俺は教室を後にした。


※※※


 次の日


 昨晩ずっと考えていたのだが、俺は優香と一緒下校したい。みんなに睨まれるのは怖いけど、なんのアクションも起こさないお前らが悪い。そう思ったのだ。


 教室に入ると、俺の席の後ろに栗色の髪の毛をした他校の生徒が座っていた。まあ、優香なんだが。みんなそれぞれ固まって話しているのに、優香は一人ボッチをしていた。


「おはよう」


 俺が自然に背後から挨拶をすると、優香はすごい勢いで後ろに振り向き


「おっはよ〜!」


 と言ってきた。元気な挨拶でよろしい。目には今日のコスプレはなにか聞いてほしいと書いてあるようだ。


「で、今日はなんのコスプレなんだ?」


「シーシーシー!声が大きい!オタクだってバレちゃうよ!」


「すまんすまん。で、なんのキャラなんだ?」


「まあ、当ててみて!」


 なんのキャラだ?制服は見覚えあるな。よく見ると、『桜が丘高校』と書いてある。髪の毛の色は栗色っぽい色で、ヘアピンをしている。それに元気なキャラ。机の隣にギターも置いてある。


 わかった今日のコスプレしたキャラは…


 


 


 







 

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