出会い

(主人公、舞台上であおむけに寝ている)

主:「まぶしい…」(起きる)

「どこを見ても真っ白。ここは、どこ?なんで私、こんなところにいるんだろう。…わたし、私?私は、誰?…なんでだろう、何も思い出せない!」

?:「あら?(主人公に近づいて)やっと、目覚めたみたいね。」(隣で主人公を覗きこむ。)

「だっ、誰?」

「そんなに避けなくたっていいじゃない。」

「いや、だって、わたし、あなたのこと知らないですし。…びっくりするじゃないですか、突然、知らない人が隣に来たら」

「そっか〜。」

「そうだと思いますけど…。えっと、ところで、あなたは誰ですか?」

「私はコハル。」

「コハル、さん…」

コ:「コハル、でいいよ。私たち同い年くらいだと思うし。」

「そ、そう。…じゃあ、コハル。あなたは、ここが、どこなのか知っていますか?」

「敬語もなし!ほら、私のことは友達だと思って!対等に話そうよ~。」

「…今知り合ったばかりの人に、そんなに心を許して話すなんて、できないと思いますけど。…ここにいるってことは、あなたが私を、こんな変な場所に連れてきた張本人かもしれないですよね?」

「それなら、私もここがどこなのかあなたに教えてあげないもんね!」

「うっ……じゃあ、コハル、ここはどこ?あなたは何者なの?」

「前者の問いに対して、実はあたしもここがどこなのかよく知らないんだよね。」

「えっ、それならさっきの交換条件は…」

「まあまあ、固いこと言わずに、最後まで聞いてくれない?」

「…わかった。」

「知らないことには知らないけど、ここは、当たり前にある世界とは違う場所で、だけど、なんだか安心できる、安全な世界であることはわかっているわ。ただ、今の私たちみたいに誰かと出会える機会なんて、今までそうそうなかったけどね。」

「そう、なんだ。」

「あと、後者の問い、あたしが何者なのかについては、答える気はありません!」

「えっ、なんで?」

「まだ、答えられない。だけど、あなたがここにいるのは、あたしのせいではないの。どうかそれは信じてほしい。」

「…その、証拠はないの?」

「ない。だから、その分あたしはあなたを助けてあげるつもりでいるわ。」

「…うーん。」

「さっきも言ったけど、今みたいに、誰かと出会えることはあんまりないの。ほら、あたしなら、この世界の道案内とかもできるし。一人より、誰かといたほうがずっと心強いと思うわ。それに、あなたも、しゃべり相手がいないとつまらないでしょ?」

「まあ、たしかに…。」

「はあ、そろそろ、あたしにばっかに話させてないで、あなたのこともおしえてよ。あなたこそ誰なの?」

「私は………誰なんだろう?」

「ええ?あなた自分のこともわかんないの?」

「なんだか、全く思い出せなくて…自分が、誰なのか、どこから来たのか、今まで何をしていたのか…。」

「大変じゃない!」

「…あのさ、私がなんでここで寝ていたかわかる?」

「いいえ…少なくとも、あたしが来た時にはここに倒れていて、助けなきゃと思って駆け付けてみれば、ただ眠っているだけだってわかった感じだったから。」

「そっか…。」

「…まあでも、分からないなら探すだけね。」

「えっ、探すって、何を?」

「決まってるでしょ?あなたの過去よ?」

「私の過去を?」

「そう。あなたの過去さえわかれば、あなたが誰であって、どこから来ていて、今まで何をしていたのか、そういうことがわかるじゃない?」

「でも、そんなことどうやって…。」

「ふふん。実はあたし、心理鑑定の知識を結構持ってるんだよね。だから、あたしがあなたを手伝うことで、あなたの失った記憶を取り戻すことができると思うわ。」

「なるほど。…だけど、少し怖いな。」

「私の鑑定の技術を疑っているなら安心して。これでも、人の心を読むのは得意…」

「それは、もちろん心配なんだけど、そうじゃなくて。」

「やっぱり、心配なんだ…。うん、それで?」

「自分の記憶を取り戻すことが怖いなって思って。」

「どうして?」

「…今、私が記憶喪失になっているのは、過去の私に、それなりに大きなつらい出来事とかがあったからかもしれない。そう気づいたら、進んで過去を取り戻そうと思えなくなっちゃって。」

「たしかに、あなたの過去は、訳ありでしょうね。記憶がないだけじゃなくて、自分のことがわからないんだもの。」

「…。」

「だけど、悪いことばかりじゃないはずよ。楽しかったり、嬉しかったり、あなたにとって大切な思い出がたくさんある。わからないままだったら、きっとどこかで後悔してしまうわ。さあ、わたしも一緒に手伝うから。2人で過去探しを始めましょう?」

「そうだね、ありがとう。やってみる。」

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