ありがとう。

瑞谷 桜

ありがとう。

 出会えた時のことまだ覚えてる。

 お互いさぐり合ってたね。

 あの頃はまだ危なっかしくて、でもそんな所が気になって、気づいたら好きになってた

 楽しかった、一緒に一喜一憂。

 眩しくて素敵な笑い声。

 そんなときに、誰からか投げられたハンマーが硝子の心へ。

 一鎚いれられて砕け散った。

 ずっと守ってあげたいって思ってたのに……。

 顔を合わせられなくて、言葉綴るのも苦しくて、怖くって。

 最後のエンターは押せなかった。

 好きを好きと言えない。嫌い、恐怖、苦しみに飲み込まれる。

 消えてしまおう、そう思っていた。

 でも迎えにきてくれた。破片を抱えてきてくれた。

 視界が歪んで、打って、消して。何度も打ち直した言葉——『ごめんね』



 言ってくれた、『卑下するな』

 これはまだまだ出来そうにないや。

 落ちては引き上げられて、それが変わることなく、気づいたら自分達が変身かわってたね。

 生まれ変わっても、尽くしたい。

 今度こそ守ってあげたい、そう思ってたのが懐かしいや。

 何かがあったらすぐ言って、依存ばかりしていった。

 そっちが無事なら、それだけでいい。

 そのためなら何だって厭わない、どうなったっていいさ。

 だって、そっち>自分。なんだから。

 脅かしたものは、後ろから何回も火を消して回ってたんだ。

 でもどんどん関係も変わっていっちゃったね。

 今じゃ高嶺の花。どうしたって近づけないさ。

 そして、気づいたんだ。

 もう自分は必要ないんだって。

 自分がいなくても、あなたにはもう守ってくれる人が沢山いる。

 支えてくれる人は自分じゃなくてもいいんだよね。

 だから、大好きでも。そろそろ離れなきゃって、思っちゃってる自分がここにいる。

 だからもう伝えるよ。最後の言葉——『ありがとう』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ありがとう。 瑞谷 桜 @mizutani_ou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る