第6話
巨大な建物は三つあった。
大きな鳥のような形をした白い建物が向かい合っている。けっこう高い建物で、真ん中辺りで互いの建物を橋で行き来できるようになっていた。そして、その真ん中には、もう一つの建物はそれ程大きくなくて、古臭い感じの建物で、どうやら木でできているように見えた。今にも押し潰されそうに建ててあった。
(何なんだろう?)
一士は考えたが分かるはずもなかった。
「俺たちが生まれたこの星に、こんなもの・・・あったのかな?」
一士はただ驚くばかりである。
「おい、こっちだ」
兵士が銃を一士たちに向けた。銃を向けた方に行け、ということなんだろう。
一士たち三人は大きな白い建物ではなく、その真ん中の建物の中に入って行った。
ところで、あの五人の大人たちはどうしたんだろう?
辺りは暗闇で、自分たちがどう進んでいるのかわからない。でも、一処でじっとして、何か・・・誰かがやって来るのを待っているわけにはいかない。みんなの意見はバラバラだったが、前に進むことだけは一致していた。
「どっちにいけばいいんだ?」
この五人はどうやらこの辺りのことは不案内のようだった。それでも、いつまでもその場所にとどまっているわけにはいかなかった。その点でも、みんなの一致した意見だった。
「とにかく、行きましょ」
田中可南子が迷いなく言った。多分に不安とか恐怖があるのだろう、こんな時の女は意外と度胸が据わっている。
ほとんど明かりはなかったが、それでも星の明かりで、何があるのか、どの道がどう続いているのか判別することが出来た。
やがて、大きな鳥の形をした白い建物が二つと、その真ん中にも木造で出来たらしい薄気味悪い建物が見えて来た。
「何、あれ・・・?」
素っ頓狂な声を上げたのは、やはり田中可南子であった。男どもはただその建物を見て、半ば恐怖心に襲われていた。そのためか、誰も立ち止まった場所から動こうとはしなかった。
見ていると、何台かの車が止まっていたし、しばらくすると別の車が来て車から降りた兵士らしき男たちに、やはりその車に乗っていた何人かの人間が降ろされていた。そして、その人間たちは兵士に命令されるがままに、薄気味悪い木造の建物の中に連れて行かれた。
「いるんだ。生き残っている者がいるんだ」
前田リーダーが嬉しそうに叫んだ。もう前田自身は自分が、この仲間にリーダーだと自認していた。前田の半ばえらそうな態度に見えるその素振りに敵愾心を抱くものは誰ひとりいなかった。ただ、可南子だけが、そんな前田を不機嫌な眼で睨んでいた。
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