第3話
一士が振り向くと・・・
「余計なことを考えないで。今を・・・この現実を受け入れるしかないのかな」
こんなことを考えながら、君江は雅やの手を引き、歩いていた。
「さあ、おいで・・・」
君江は雅やの手を強く引っ張った。
その時、突然、二人の前に・・・
この時より、一時間くらい前、
一士たちがいる所から、北へ行った・・・やはり、破壊された建物の地下に、数人の生き残った大人たちがいた。
「あいつら、馬鹿なことをやりやがって・・・だから、こんなことになったんだ。ふざけるんじゃないぞ、政治家ども」
どうやら、この男・・・怒りが収まらないようだ。歳は、間違いなく三十を超えたりっぱな大人だった。
やはり、ここにも・・・みんなを引っ張ってやろうとする男がいる。
その前田は、叫ぶ。
「おい、みんな、こんな所にいても、何も始まらないぞ。とにかく、ここから出て、生き残っている人間を探し出そう」
これには、みんな、大賛成だった。
この大人たちは何が起こったのか、知っていた。
テレビでニュースを見ていたから。まるで、それが毎日の仕事であるかのように、大人たちは。怒りもし、笑いもし、また、
「俺達には、関係ないけどな」
と、言い、居酒屋やカフェで楽しんでいた。
「馬鹿なことをするな。そんなことをしたら、この星は崩壊してしまうぞ、と叫んだ。だけど、みんな、叫ぶだけだった」
要するに、それだけだったのである。
外の様子は・・・みんな無残で見るに堪えない光景がばかりだった。
「本当に、みんな、死んでしまったのかよ」
こう言ったのは、生き残った大人の中で一番おしゃべりな、まだ三十代なのに頭の半分が禿げ上がっている顔の丸い男だった。
誰も、その立川という男に、
「そうだよな」
と、同調しない。
今まで一人や二人が死んだのは目にしたことはあるけど、こんなにたくさんの人間が死んだ光景は初めて見る。
「これから、どうしたらいいの?」
中年の女は涙を流している。いつもは朗らかに笑っていたが、今はそんな気分ではないらしい。
「とにかく、こうなってしまった以上、何かをやるしかない。この国・・・いや、世界をまた再生しなくてはいけない。そうだよ、私たちの手で・・・」
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