第2話

外は眩しく、一士は目を何度もこすった。

 眩しい以上に・・・

 何よりも驚いたのは、

 「何だ・・・これ・・・!」

 たくさんの人が倒れていた。

 「雅や、眩しくないか?」

 一士は、こう言うしかなかった。

 「う、うん」

 やはり、目をこすっている。

 「たくさんの人の死体など見たくない・・・」

 三人とも、まだ子供だった。

 「ねえ、何処へ、行く?」

 君代の言葉は、はっきりとしている。

 「分からない。ここが、何処かさえも、俺には分からない」

 一士の頭の中はぐしゃぐしゃに混乱している。

 「だって、少し前まで・・・」

 と、言い掛けて、君代は黙ってしまった。

 その時、三人は、愛宕山町にいた。三人が住んでいた町である。

 君代の家と一士の家は、真向いにあり、顔見知りだったが、互いに気にも留めていなかった。

 そして、七歳の雅やの家は、前の大通りを西に三百メートルばかり行った、この辺りでは一番大きな家に住んでいた。

 君代は、その雅やの家に遊びに行ったことがある。彼女と同級生のまり江がいるから。

 二人は仲が良かった。

 

 三人は一士を先頭に歩き、君代は雅やの手を握っていた。


 「お・・・い」

 一士は叫んだ。

 三人は自分たちの家に行って見ることにした。

 だが、こんなに崩壊してしまった町を目にし、

 「誰もいないのか・・・みんな・・・死んで」

 と、不安にならざるを得ない。


 この時、

 「キャッ!」

 と、女の悲鳴がきこぇた。

 一士の身体はギクリと震えた。

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